トピックス

トピックスII 科学捜査を支える取組~サイバー空間における捜査力強化のための取組

(2)サイバーセキュリティ対策研究・研修センターにおける取組

① 犯罪取締りのための情報技術解析に関する研究

サイバーセキュリティ対策研究・研修センター解析研究室では、ハードウェア及びソフトウェアに関する知識や技術を駆使して、サイバー犯罪等に悪用され得る最先端の情報通信技術に関する研究、各種電子機器に記録されたデータの抽出・可視化に関する研究を行っている。

 
電子機器の解析に関する研究状況
電子機器の解析に関する研究状況
ア 暗号資産に関する研究

暗号資産は、利用者の匿名性が高く、取引の追跡を困難にさせる技術が開発されており、マネー・ローンダリング等の犯罪への悪用が指摘されていることから、平成29年(2017年)度から暗号資産に関する研究を開始した。令和元年度は、ブロックチェーン等の暗号資産に係る要素技術等について研究を行った。

イ 自動運転システムの解析に関する研究

SAEレベル3(注)の自動運転システムを備えた自動車の市場化が目前に迫っている。交通事故等が発生した場合、同システムに事故原因の究明等に必要な情報が記録されている可能性があることから、令和元年度から自動運転システムの解析に関する研究を開始し、車載ネットワーク及び自動運転ソフトウェアからのデータの抽出・可視化に関する研究を中心に行った。

注:159頁参照

 
自動運転システムの解析に関する研究状況
自動運転システムの解析に関する研究状況
② サイバーレンジ(注)を活用した実践的な研修

サイバーセキュリティ対策研究・研修センター捜査研修室では、都道府県警察の捜査員や解析担当者を対象とした高度な実践的研修を実施している。平成30年度からは、新たにサイバーレンジを導入し、仮想環境下において実際の犯行手口や被害状況を再現することにより、最新の手口により行われるサイバー犯罪に対する実践的な捜査演習や大規模なサイバー攻撃の被害事案を想定した訓練等を実施している。

注:サイバー攻撃等に対する実践的な訓練を行うためのサイバー演習環境

 
サイバーレンジを活用した研修状況
サイバーレンジを活用した研修状況

(3)情報通信技術の知識及び技能をいかして活躍するサイバー犯罪捜査官等

都道府県警察では、情報工学を専攻した者、情報通信技術に関する高度な資格や民間企業のシステム開発部門での勤務経験を有する者等が、サイバー犯罪捜査官等として採用されており、その知識及び技能をいかして、事件捜査、捜査支援ツールの作成等に従事し、捜査の第一線で活躍している。

採用に当たっては、大学生、専門学校生等を対象としたインターンシップを開催し、サイバー犯罪捜査を模擬体験する機会を設けたり、サイバー犯罪捜査に従事する職員との交流会を実施したりして、人材の確保に努めている。

 
インターンシップにおけるサイバー犯罪捜査模擬体験
インターンシップにおけるサイバー犯罪捜査模擬体験

サイバー犯罪捜査官の声①

-民間企業出身のサイバー犯罪捜査官として-

警視庁生活安全部サイバー犯罪対策課
警部 秋吉 祐司

私は、エンジニアとして民間企業で金融機関のシステム開発に従事していましたが、この技術を犯罪捜査に役立て、困っている人々を助けたいと思い、警視庁のサイバー犯罪捜査官という未知の世界へと飛び込みました。

暴力団事務所等に対する捜索差押えでは、押収したパソコンの解析作業で、自分の経験をいかして事件検挙に貢献でき、その達成感を今でも忘れられません。また、一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(JC3(注))では、民間の方々と仕事をし、フィッシングサイト対策等で成果を上げることができました。

現在は、海外の捜査機関と協力しながら捜査しているほか、被害防止に役立つ情報を民間企業等に提供するなどしています。「被害を未然防止できました。ありがとうございます」との反響も寄せられ、仕事のやりがいを感じています。サイバー犯罪捜査官としての誇りを胸に、安全で安心なサイバー空間の実現に向け貢献してまいりたいと思います。

(注)117頁参照

 
サイバー犯罪捜査官の声①

サイバー犯罪捜査官の声②

-任期付き警察官として-

埼玉県警察本部
生活安全部サイバー犯罪対策課指導係
警部補 爲我井 大

私は民間の大手IT企業でシステム開発を担当していましたが、自分のITに関する知識や技術を治安維持に役立ててみたいという思いがあり、埼玉県警察のサイバー犯罪捜査官(任期付き採用)の採用試験を受験しました。

県民等を対象とした被害防止セミナーでは、サイバー攻撃被害を体験するための環境の整備や講師等を担当し、捜査では、押収物の解析、捜索差押え現場での検証、捜査を効率化するツールの作成等を担当しました。

犯罪被害に遭う人が一人でも少なくなるようにという私の想いをセミナーで伝えることができたときや、解析したデータの中から犯罪の痕跡を発見して犯人検挙の一翼を担うことができたときは、警察官であることを実感し、とてもやりがいを感じました。

任期付き採用制度は、限られた期間ではありますが、安全で安心な社会の実現のために自身のITに関する知識や技術を役立てたり、民間企業では得られない経験をすることができますので、興味を持たれたIT技術者の方は受験してみてはいかがでしょうか。

 
サイバー犯罪捜査官の声②


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