トピックス

トピックスI 新型コロナウイルス感染症に対する警察の取組

(1)新型コロナウイルス感染症への対処体制

① 政府の対処体制

令和元年(2019年)12月31日、世界保健機関(以下この項において「WHO」という。)から、中国湖北省武漢市において原因不明の肺炎が発生している旨の発表がなされ、その後、当該肺炎が新型コロナウイルス感染症によるものである旨の発表がなされた。令和2年(2020年)1月31日(日本時間)には、感染拡大を受け、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC(注1))」を宣言した。

我が国においては、同月15日に初の感染者が確認され、同月29日からは、政府が派遣したチャーター機により中国湖北省に在留する邦人等が帰国した。また、感染が拡大している状況に鑑み、政府としての対策を総合的かつ強力に推進するため、同月30日に内閣総理大臣を本部長とし、全ての国務大臣を構成員とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」が設置された。

同年2月1日には、政府において、入国拒否対象地域の指定等の水際対策が実施されたほか、新型コロナウイルス感染症が感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第6条第8項の指定感染症として定められた。同月25日には、「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」が決定され、また、同年3月13日には、新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下この項において「特措法」という。)に規定する新型インフルエンザ等とみなすことなどを内容とする新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律が成立・公布された(同月14日施行)。

さらに、同年4月19日に予定されていた立皇嗣の礼や、同年7月24日から開催が予定されていた2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(注2)については、それぞれ延期されることが発表された。

 
図表I-1 特措法に基づく措置の状況
図表I-1 特措法に基づく措置の状況

注1:Public Health Emergency of International Concernの略

注2:令和2年(2020年)3月30日、国際オリンピック委員会において、東京オリンピック競技大会は令和3年7月23日から同年8月8日にかけて、東京パラリンピック競技大会は同年8月24日から同年9月5日にかけて開催されることが決定された。

注3:埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫及び福岡

注4:北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪及び兵庫

② 警察庁の対処体制

警察庁では、令和2年1月26日、警備局長を長とする「新型コロナウイルスに関連した感染症に関する対策本部」を設置し、同月30日、次長を長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」に改組した。同年3月26日には、政府に特措法に基づく「新型コロナウイルス感染症対策本部」が設置されたことを受け、警察庁長官を長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置した。警察では、「国家公安委員会・警察庁新型インフルエンザ等対策行動計画」(平成25年(2013年)10月作成、平成31年4月改正)に基づき、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期すこととしている。

(2)新型コロナウイルス感染症をめぐる警察の取組

① 空港、医療機関等における警戒警備

警察では、令和2年1月29日以降、政府チャーター機により中国から帰国した在外邦人等の入国に伴う混乱の防止を図るため、空港、医療機関等における警戒警備を実施したほか、同年2月3日以降、神奈川県横浜市の横浜港に到着したクルーズ船における大規模な検疫の実施に伴い、同港周辺等における警戒活動や患者等の搬送支援を実施した。

また、新型コロナウイルス感染症に係る検疫の強化により、空港において検疫法に基づく検査の対象となる帰国者等が増加することとなったことから、警察庁では、厚生労働省をはじめとする関係機関との情報共有や協力を緊密に行うとともに、関係都府県警察では、検疫所長や空港管理者との連携を強化し、円滑な検疫の実施に協力しつつ、トラブルや不測の事態の防止を図るため、空港その他の検疫所長が指定した施設等(検査を受けた者が結果が判明するまで待機する場所)における警戒警備等を実施した。

 
空港における警戒状況
空港における警戒状況

MEMO 横浜港に到着したクルーズ船における検疫の実施に伴う警戒警備等

令和2年2月3日に横浜港に到着したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では、延べ4,000人を超える乗員・乗客に対して新型コロナウイルスに関する検査が実施され、このうち約700人について陽性が確認された。警察では、これら感染者の医療機関への搬送等に際し、警察車両による先導等の警戒を実施するなど、混乱の防止を図るための警戒警備等を実施した。

 
警察車両による警戒状況
警察車両による警戒状況
② 関連する犯罪の取締り・防犯情報の提供

警察では、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」等に基づき、関係機関との連携を図るなどして、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う混乱等に乗じた犯罪に関する情報の入手に努めるとともに、取締りを徹底している。

また、こうした犯罪を防止するため、地域の犯罪の発生状況等に応じてウェブサイト、電子メール、SNS、チラシ等の各種広報媒体や巡回車両によるスピーカー広報等を通じて防犯情報の提供や注意喚起に努めるとともに、各種犯罪の発生状況を踏まえたパトロール等の警戒活動を強化している。

 
愛知県警察による注意喚起
愛知県警察による注意喚起

CASE

アルバイトの男(49)は、ドラッグストアにおいて、従業員に対し、「俺コロナなんだけど」、「俺陽性」などと言って咳をするなどし、店内の消毒作業を余儀なくさせ、正常な業務の遂行を妨げた。令和2年3月、同男を威力業務妨害罪で逮捕した(愛知)。

CASE

職業不詳の男(25)らは、令和2年4月、県庁職員等を名のり、70歳代男性に対し、電話で、「コロナ対策の給付金として10万円が支給される。給付金については、口座に振り込む。通帳等を準備して封筒に入れておいてほしい」などと告げた。その後、同男が同男性の自宅を訪問し、通帳等の交付を受けようとしたことから、同男性の通報により同男性の自宅付近を警戒していた警察署員が、同男を詐欺未遂罪で逮捕した(栃木)。

③ 都道府県知事による住民に対する外出・移動の自粛要請に伴う警察の対応

警察では、都道府県知事による住民に対する外出の自粛要請に伴い、繁華街でのトラブル等の発生を防止するため、地域警察官によるパトロールを強化するなどの所要の措置を講じている。

また、都道府県知事からの要請等を踏まえ、こうした活動を通じて、状況に応じ、国民に対し、外出の自粛要請が行われている旨の一般的な声掛けを行うなどの協力を行っているほか、道路管理者等と連携し、交通情報板等を活用して移動の自粛要請が行われている旨を周知するなどの協力を行っている。

 
繁華街における警戒活動
繁華街における警戒活動
④ 警察関係行政手続の臨時措置等

警察では、新型コロナウイルス感染症への感染防止の観点から、運転免許証の有効期間の末日までに更新できない可能性がある者について、運転免許センター及び警察署等に対する事前の申出があれば、運転免許証の裏面備考欄への記載により運転及び更新可能期間を延長する措置を講じた。当該申出については、全ての都道府県警察において、代理人や郵送によるものも可能とした。

また、特措法に基づく緊急事態宣言が発出される中、自動車教習所や運転免許センター等の業務が休止されたことを受け、事前に定められた教習期間を弾力的に運用することを可能にするとともに、事前の申出があれば、卒業証明書等により運転免許試験の技能試験が免除される期間を延長することなどにより、運転免許保有者等が被る不利益を可能な限り減らす措置を講じた。

このほか、警察では、新型コロナウイルス感染症への感染やそのおそれを理由に、警察関係法令に基づく許可手続等ができない方について、とり得る措置を教示するなどして、国民の権利利益の保全を図っており、都道府県警察本部(注)及び警察署において、許可手続等に係る相談に対応している。

注:東京都においては警視庁

 
図表I-2 運転免許証裏面にシールを貼付した場合の例
図表I-2 運転免許証裏面にシールを貼付した場合の例
⑤ 感染拡大防止のための取組

警察では、警察職員の新型コロナウイルス感染症への感染防止の観点から、全職員に対し、手洗い、アルコール消毒液による手指消毒のほか、「咳エチケット」の励行を徹底させるとともに、職員間の感染拡大により警察業務の継続に支障が生じないよう、集団感染のリスクを高めるとされる3つの条件(換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、間近で会話や発声をする密接場面)を可能な限り避けるための勤務環境の改善にも取り組んでいる。

また、警察職員と接する一般の方等にも感染を拡大させないという観点から、例えば、窓口業務等において対面でのやり取りが必要な場面では、透明ビニールカーテン等の遮蔽物を設置するなどの取組を行っている。

 
職員同士の密集・密接を避けるため大会議室に設置した執務室
職員同士の密集・密接を避けるため大会議室に設置した執務室

CASE

埼玉県警察は、来庁者の飛沫感染防止のため、警察署や交番の窓口に透明ビニールカーテンを設置するなどの取組を行っている。

 
警察署交通課窓口
警察署交通課窓口
 
交番のカウンター
交番のカウンター


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