特集 高齢化の進展と警察活動

第1部 特集·トピックス
高齢化の進展と警察活動

特集に当たって

本年の警察白書の特集テーマは、「高齢化の進展と警察活動」です。

我が国の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は、令和元年(2019年)10月1日現在で28.4%と過去最高となり、他の先進諸国と比較しても最も高い水準にあります。今後、総人口が減少する中で65歳以上人口が増加することにより、我が国の高齢化は更に進展していくものと推定されています。この特集では、このような状況を踏まえ、「高齢者を犯罪・事故から守るための警察の取組」と「高齢者による犯罪・事故への対応と防止に向けた取組」という二つのテーマに沿って近年の治安情勢と警察活動の状況を取りまとめました。

令和元年の刑法犯認知件数の総数は74万8,559件と、前年に引き続き戦後最小を更新したものの、刑法犯認知件数に占める高齢者の被害件数の割合は、平成21年(2009年)以降一貫して増加しています。特に、特殊詐欺の被害者は、高齢者が約8割を占め、今後更に高齢化が進展していく中で、その被害防止は喫緊の課題となっています。

警察では、犯罪・事故から高齢者を守るため、高齢者を狙った特殊詐欺や悪質商法の被害防止のための取組のほか、高齢歩行者の交通事故防止、行方不明となった認知症高齢者の発見活動等の各種取組を推進しています。

その一方で、刑法犯検挙人員に占める高齢者の割合は近年増加傾向にあり、高齢者の犯罪防止のための取組や高齢被留置者への適切な処遇が大きな課題となっています。

また、高齢運転者による交通事故防止対策の推進も急務となっています。警察では、自動車等の運転に不安を有する高齢者等が運転免許証を自主返納等しやすい環境の整備に向けた取組を進めているほか、高齢運転者による痛ましい交通事故の発生等を受け、今後の高齢運転者の運転免許制度の在り方に関する検討を進めています。

高齢社会に対応した警察活動の必要性・重要性は今後もますます高まっていきます。この特集が、高齢社会における警察の取組についての国民の理解を深めるとともに、社会全体の治安確保に向けた対策の在り方について考えていただく一助となれば幸いです。



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