第6章 公安の維持と災害対策

3 右翼等の動向と対策

(1)右翼の動向と対策

右翼は、近年、領土問題、歴史認識問題等に関し、関係国や日本政府等を批判している。

令和元年中、韓国をめぐっては、同年2月の韓国国会議長による天皇陛下に関わる発言、竹島の不法占拠及び旧朝鮮半島出身労働者問題を捉えた抗議活動を行った。ロシアをめぐっては、メドヴェージェフ首相(当時)による択捉島訪問や日露首脳会談で北方領土問題の進展がみられなかったことを捉えた抗議活動を行った。中国をめぐっては、中国公船が尖閣諸島周辺領海に繰り返し侵入していることを捉え、北朝鮮をめぐっては、弾道ミサイル等が繰り返し発射されたことを捉え、それぞれ抗議活動を行った。

右翼が上記の街頭宣伝活動等に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、図表6-7のとおりである。

 
右翼の街頭宣伝活動(8月、東京)
右翼の街頭宣伝活動(8月、東京)
 
図表6-7 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(令和元年)
図表6-7 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(令和元年)
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CASE

右翼団体構成員の男(29)は、平成31年3月、韓国大使館に抗議する目的で、抗議文を同大使館の郵便受けに投函後、同郵便受けを殴打して損壊させたことから、同男を器物損壊罪で現行犯逮捕した(警視庁)。

警察では、右翼による悪質な違法行為に対し、様々な法令を適用した取締りを行っており、令和元年中、右翼運動に伴う事件(注)の検挙件数は94件、検挙人員は112人であった。

右翼団体の中には、幹部の多くが暴力団員又は元暴力団員であるものや、暴力団が右翼団体を標榜しているものなど、反社会的勢力と密接な関係を有するものが数多くあり、資金獲得を目的とした恐喝事件や詐欺事件等の違法行為を引き起こしているが、このような恐喝事件や詐欺事件等の検挙件数は89件、検挙人員は104人であった。

また、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質な街頭宣伝活動に対しては、その内容や形態に応じた取締りを行っており、令和元年中は、暴行罪等で20件20人を検挙した。

さらに、警察では、右翼及びその周辺者からの銃器摘発に努めた結果、令和元年中、拳銃3丁(前年同期:8丁)を押収した。

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件

 
街頭宣伝活動に対する取締り状況(8月、滋賀)
街頭宣伝活動に対する取締り状況(8月、滋賀)

CASE

右翼団体代表(54)らは、資金獲得目的で、交通事故による保険金収入を得たにもかかわらず、これを福祉事務所に届け出ず、生活保護法に基づく生活扶助等の名目で現金をだまし取った。また、同代表らは、交通事故に遭ったことを利用して、同代表が実質的に経営する会社から給与の支払を受けていないにもかかわらず、同事故により休業したため給与の支払を受けられなかった旨の虚偽の内容が記載された休業損害証明書等を保険会社に提出し、休業損害金をだまし取った。令和元年6月末までに、関係事件を含め、同代表ら4人を詐欺罪等で逮捕した(愛知)。

CASE

右翼団体代表の男(44)は、平成31年2月、埼玉県内において、街頭宣伝車を停車して街頭宣伝活動を行っていた際、音量を下げるよう申し入れた男性の足等に同車前部を衝突させるなどの暴行を加えたことから、同年5月、同男を暴行罪で逮捕した(埼玉)。

(2)右派系市民グループをめぐる情勢と警察の対応

令和元年中、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右派系市民グループは、韓国や北朝鮮との問題等を捉えたデモや街頭宣伝活動等に各地で取り組み、全国におけるデモは約20件に及んだ。

また、右派系市民グループの活動に対して抗議する勢力が、参加者による過激な言動について、「ヘイトスピーチ」であると批判するなどして、抗議行動を行った。

警察では、平成28年に施行された本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律を踏まえ、引き続き、右派系市民グループとその活動に対して抗議する勢力とのトラブルに起因する違法行為の未然防止の観点から、厳正公平な立場で必要な警備措置を講じ、違法行為を認知した場合には、法と証拠に基づき厳正に対処するとともに、警察職員に対する必要な教育を推進することとしている。

 
右派系市民グループのデモ(5月、東京)
右派系市民グループのデモ(5月、東京)

CASE

右派系市民グループ関係者の男(54)は、平成30年8月、神奈川県内において、演説会の開催に抗議していた男性の首を絞めるなどした。平成31年1月、同男を傷害罪で逮捕した(神奈川)。



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