第6章 公安の維持と災害対策

2 極左暴力集団の動向と対策

(1)極左暴力集団の動向

暴力革命による共産主義社会の実現を目指す極左暴力集団は、依然として「テロ、ゲリラ」の実行部隊である非公然組織を擁するとともに、組織の維持・拡大をもくろみ、暴力性・党派性を隠して大衆運動や労働運動に取り組んでいる。

令和元年中、極左暴力集団は、天皇陛下の御即位に伴う儀式等のほか、トランプ・米国大統領の来日やG20大阪サミットへの抗議活動を行った。また、その暴力性・党派性を隠しながら、憲法改正への反対運動、反戦・反基地運動や反原発運動に取り組み、これらを通じて同調者や支持者の獲得を図った。

革マル派(注1)は、同派創始者である故黒田寛一前議長の思想等を学ぶための「格好の入門書」と位置付ける書籍を刊行し、同書を活用した学習を機関紙で呼び掛けるなど、黒田前議長が提唱した理論の継承に引き続き取り組んだ。また、同派が相当浸透しているとみられる全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)及び東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)は、定期大会において、引き続き、同派設立時の副議長であった故松嵜明元JR東労組会長が提唱した労働運動理論に基づき組合活動を進めていく方針を決定した。

中核派(注2)は、昭和46年(1971年)に発生した警察官殺害事件(渋谷暴動事件)により殺人罪等で無期懲役が確定した同派活動家が令和元年5月に死亡したことを受け、「獄中44年、不屈・非転向」を貫いた同活動家の遺志の継承を訴えた。また、同年9月、平成27年以降の指導に誤りがあったとして、新たな執行部を選出したものの、労働運動を通じて組織拡大を図る「階級的労働運動路線」を堅持し、引き続き労働運動や大衆運動に介入する中で勧誘活動に取り組んだ。このほか、平成31年4月の東京都杉並区議会議員選挙に女性活動家を擁立し、同活動家は、「若者と女性で社会を変えよう」などと訴えて初当選した。

革労協主流派(注3)及び革労協反主流派(注4)は、同年の年頭の機関紙において、非公然組織「革命軍」のアピール文をそれぞれ発し、武装闘争の飛躍や発展を主張した。

注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。

注2:正式名称を革命的共産主義者同盟全国委員会という。

注3:正式名称を革命的労働者協会(社会党社青同解放派)という。

注4:正式名称を革命的労働者協会(解放派)という。

 
米国大統領の来日に対する抗議活動(5月、東京)
米国大統領の来日に対する抗議活動(5月、東京)

(2)極左暴力集団対策の推進

警察では、極左暴力集団による「テロ、ゲリラ」を未然に防止するための諸対策を推進しており、その過程で明らかになった違法行為は、厳正に取り締まっている。平成31年2月には、爆発物を製造及び使用した犯人をかくまった革労協反主流派非公然幹部活動家1人を爆発物取締罰則違反(犯人蔵匿)で逮捕するとともに、同派の非公然アジトを摘発した(警視庁、埼玉、神奈川)。また、同年5月には、ビラを配布する目的で京都大学の構内に無断で侵入した中核派活動家1人を建造物侵入罪で逮捕した(京都)。



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