第6章 公安の維持と災害対策

第3節 公安情勢と諸対策

1 オウム真理教の動向と対策

(1)オウム真理教の動向

オウム真理教(以下「教団」という。)は、現在、「Aleph(アレフ)」をはじめとする主流派と、「ひかりの輪」を名のる上祐派が活動している。麻原彰晃こと松本智津夫が確立した教義は、依然として教団の基盤となっており、その中には、殺人さえも教団のいう救済活動として善行となる場合があるとする反社会的なものもある。教団は、こうした教義に基づいて、松本サリン事件、地下鉄サリン事件等の数々の凶悪事件を引き起こし、多くの犠牲者を出した。

このため、平成12年(2000年)2月以降、教団に対し、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があるなどとして、団体規制法(注)に基づき、公安調査庁長官の観察に付する処分が行われており、平成30年1月には、6回目となる処分の期間更新決定(令和3年(2021年)1月末まで)がなされた。

また、警察では、一連の凶悪事件に対する捜査を徹底し、平成7年5月に松本を逮捕したほか、平成8年末までに400人以上を逮捕するとともに、17年に及ぶ捜査の末、平成24年には、逃亡を続けていた被疑者を相次いで逮捕したことにより、一連の凶悪事件の被疑者全員の検挙に至った。さらに、平成30年7月には、松本をはじめとする13人の死刑確定者全員の刑が執行された。

しかし、主流派は依然として、地下鉄サリン事件等の凶悪事件の首謀者であった松本を、死刑執行後も教祖として絶対的帰依の対象とし、反社会的な内容を含む教義に沿った活動を続けている。一方、上祐派は、かつて松本が上祐史浩(現「ひかりの輪」代表)に対し教団を維持するために別の宗教団体を作るよう指示したことや、新たな団体の設立については主に当時教団の幹部であった同人に任されていたことが判明しているにもかかわらず、外形上、松本の影響から脱した危険性のない団体であるかのように装い活動している。

注:無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律

(2)オウム真理教対策の推進

教団は、15都道府県に32か所の拠点施設を有しているが、拠点施設が所在する地域においては、教団の活動に対する不安感が強く、教団の進出に反対する地域住民が対策組織を結成している地域もある。警察では、教団施設周辺における警戒警備活動を行うとともに、教団の現状や警察の取組について、地域住民や地方公共団体に向けた広報活動を行うことにより、安心感の醸成を図っている。

また、教団は、一連の凶悪事件を知らない若い世代を主な対象として、教団名を隠した勧誘活動を行っている。警察では、こうした勧誘活動に伴う違法行為に対する積極的な取締りを実施しており、令和元年12月には、ヨーガ教室の運営に使用するための預金口座であるにもかかわらず、利用目的を偽って口座を開設し、預金通帳の交付を受けたとして、主流派在家信者ら2人を詐欺罪で逮捕した(京都)。警察では、巧妙な勧誘活動の手口について、各種機会を通じ、学校等に対して広報している。

 
図表6-6 オウム真理教の拠点施設等(令和元年末現在)
図表6-6 オウム真理教の拠点施設等(令和元年末現在)


前の項目に戻る     次の項目に進む