第6章 公安の維持と災害対策

2 大量破壊兵器関連物資等の不正輸出等の取締り

(1)大量破壊兵器関連物資等の不拡散についての国際的な取組

警察では、大量破壊兵器関連物資等の拡散が国際社会における安全保障上の重大な脅威となっている情勢を踏まえ、PSI(注)に平成15年(2003年)の発足当初から参画しており、令和元年7月には、韓国が主催した訓練「Eastern Endeavor 19」に職員を派遣するなど、国際的な取組にも積極的に参加している。

注:Proliferation Security Initiative(拡散に対する安全保障構想)の略。国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器関連物資等の拡散を阻止するために、国際法及び各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとり得る移転及び輸送の阻止のための措置を検討・実践する取組のことで、107か国(平成31年2月末現在)がPSIの基本原則や目的に対する支持を表明している。

(2)技術情報等の流出防止

我が国は、世界中で利用されている先端技術に関する情報や最先端の高性能製品を数多く有しており、これらの技術情報等の中には、使用方法によっては軍事用途に転用可能なものも含まれる。警察では、官民連携等による技術情報等の流出防止に向けた取組を積極的に行っているほか、令和元年12月までに、36件の大量破壊兵器関連物資等の不正輸出事件を検挙しており、その中には、軍用の化学兵器の製造や核・ミサイルの開発に用いられるおそれがある物質の不正輸出事件等も含まれている。これらの事件においては、第三国を経由した迂回輸出の実態や摘発逃れを目的とした輸出名義人の偽装等の悪質・巧妙な手口が確認されており、警察では、国内外の関係機関との緊密な連携等を通じて、違法行為に対する取締りを更に徹底することとしている。

(3)対北朝鮮措置に関係する違法行為の取締り

我が国は、北朝鮮による拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するため、国際連合安全保障理事会決議に基づく対北朝鮮措置(武器等の輸出入の禁止、人的往来の禁止等)のほか、我が国としての措置(北朝鮮籍船舶の入港禁止措置、北朝鮮との間の全ての品目の輸出入禁止等)を実施している。警察では、対北朝鮮措置の実効性を確保するため、対北朝鮮措置に関係する違法行為に対し、徹底した取締りを行っており、令和元年12月までに40件の事件を検挙している。

CASE

無職の少年(19)は、平成18年10月14日から北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入禁止措置がとられていたにもかかわらず、平成30年10月、経済産業大臣の承認を受けないで、北朝鮮を原産地とするビールを中国から輸入した。令和元年7月、同少年を外為法違反(無承認輸入)で検挙した(福岡、富山)。

CASE

元貿易会社経営者の男(61)は、平成21年6月18日から北朝鮮を仕向地とした全ての貨物の輸出禁止措置がとられていたにもかかわらず、平成29年1月、経済産業大臣の承認を受けないで、家具等を中国・香港及び大連を経由して北朝鮮に輸出した。令和元年8月、同男を外為法違反(無承認輸出)で検挙した(大阪、沖縄)。



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