第5章 安全かつ快適な交通の確保

4 高速道路における交通警察活動

(1)高速道路ネットワークと交通事故の状況

令和元年末現在、高速道路は209路線であり、その総延長距離は1万3,000キロメートルを超えている。令和元年中の高速道路における死者数は163人と、前年より10人(5.8%)減少した。

 
図表5-35 高速道路における交通事故発生件数・死者数の推移(平成22~令和元年)
図表5-35 高速道路における交通事故発生件数・死者数の推移(平成22~令和元年)
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(2)高速道路における交通の安全と円滑の確保

① 道路管理者と連携した交通安全対策

警察では、交通事故の発生状況を詳細に分析し、死亡事故等の発生地点や交通事故の多発地点等における現場点検を道路管理者と共同して実施し、必要な対策を協議・検討するとともに、パトロール等を強化している。特に、逆走が原因となる交通事故や、中央帯がなく、往復の方向別に分離されていない区間における対向車線へのはみ出しによる交通事故が後を絶たないことから、道路管理者と連携し、誤進入防止のための道路交通環境の改善や、対向車線へのはみ出しを防止するための道路の中央部へのワイヤロープの設置等を推進している。また、渋滞発生時には、的確な臨時交通規制を実施するほか、迅速に道路管理者と情報共有を行い、道路情報板や後尾警戒車の活用等による渋滞区間における追突事故の防止を図っている。

② 安全利用のための広報啓発及び交通安全教育

警察では、高速道路の安全利用のため、関係機関・団体等と連携して、交通事故の発生状況や逆走の危険性等に関する広報啓発活動を行うとともに、車両故障や交通事故等により運転が困難となった場合の措置等に関する参加・体験・実践型の交通安全教育を行っている。

③ 交通事故抑止に資する交通指導取締り

警察では、著しい速度超過や飲酒運転、車間距離不保持、通行帯違反等の悪質性・危険性の高い違反に重点を置いた取締りを推進している。また、全ての座席でのシートベルトの着用及びチャイルドシートの使用の徹底を図るため、サービスエリア等における貸切バスの乗客等へのシートベルト着用を促す声掛けや、関係機関・団体等と連携した普及啓発活動を推進するとともに、令和元年中はシートベルト装着義務違反を15万2,673件取り締まった。

④ 高規格の高速道路における規制速度の引上げ

平成28年3月に学識経験者等から構成される調査研究委員会において取りまとめられた「高規格の高速道路における速度規制の見直しに関する提言」では、構造適合速度(注)が120キロメートル毎時の高規格の高速道路のうち、交通事故の発生状況や車両の走行速度等に関する一定の条件を満たす区間については、規制速度を100キロメートル毎時を超える速度に引き上げることが可能であるとされた。これを踏まえ、平成29年11月には新東名高速道路の新静岡インターチェンジから森掛川インターチェンジまでの区間において、同年12月には東北自動車道の花巻南インターチェンジから盛岡南インターチェンジまでの区間において、それぞれ規制速度を110キロメートル毎時へ引き上げる試行を実施した後、平成31年3月には両区間の規制速度を120キロメートル毎時へ引き上げる試行を開始した。今後は、交通事故実態、車両の走行速度の変化等について検証した上、他の路線又は区間の規制速度の引上げについても検討を行う予定である。

注:道路の構造等を基に、数キロメートル単位の区間ごとに算出した道路の設計速度に相当する値



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