第4章 組織犯罪対策

2 マネー・ローンダリング関連事犯の検挙状況

マネー・ローンダリングとは、一般に犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関による収益の発見や検挙を逃れようとする行為である。我が国では、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法において、マネー・ローンダリングが罪として規定されている。

マネー・ローンダリング事犯の検挙事件数は、図表4-21のとおりであり、令和元年中は528件(前年比24件(4.8%)増加)であった。前提犯罪(注)別にみると、主要なものとしては窃盗に係るものが206件、詐欺に係るものが167件、電子計算機使用詐欺に係るものが30件、ヤミ金融事犯に係るものが28件となっている。

令和元年中におけるマネー・ローンダリング事犯の検挙事件数のうち、暴力団構成員等が関与したものは51件で、全体の9.7%を占めている。前提犯罪別にみると、主要なものとしては詐欺に係るものが16件、ヤミ金融事犯に係るものが10件、賭博事犯に係るものが7件、窃盗及び恐喝に係るものがそれぞれ6件あり、暴力団構成員等が多様な犯罪に関与し、マネー・ローンダリング事犯を敢行している実態がうかがわれる。

また、令和元年中における来日外国人が関与したマネー・ローンダリング事犯は71件で、全体の13.4%を占めている。前提犯罪別にみると、主要なものとしては詐欺に係るものが28件、窃盗に係るものが14件、入管法違反に係るものが13件、電子計算機使用詐欺に係るものが11件あり、日本国内に開設された他人名義の口座を利用したり、偽名で盗品等を売却するなど、様々な手口を使ってマネー・ローンダリング事犯を行っている実態がうかがわれる。

注:不法な収益を生み出す犯罪であって、その収益がマネー・ローンダリングの対象となるもの

 
図表4-21 マネー・ローンダリング事犯の検挙状況の推移(平成22~令和元年)
図表4-21 マネー・ローンダリング事犯の検挙状況の推移(平成22~令和元年)
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CASE

自称グラフィックデザイナーの女(41)は、平成29年12月、同女らが同年10月から同年11月にかけて、複数回にわたり、他人からだまし取るなどしたキャッシュカードを使用して現金自動預払機から引き出した窃取金等の現金約3,700万円を、運搬役を利用して日本国内の空港からタイ王国に向かう航空機に荷物として積み込み、国外に持ち出そうとした。平成31年2月、同女を組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿未遂罪)で検挙した。また、持ち出そうとした現金に対して、同法の規定に基づく起訴前の没収保全命令が発出された(山形)。



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