第4章 組織犯罪対策

2 国際犯罪組織の動向

(1)来日外国人犯罪の組織化の状況

令和元年中の来日外国人による刑法犯の検挙件数に占める共犯事件の割合は31.5%と、日本人(10.3%)の約3.1倍に上り(注)、極めて高い割合となっている。罪種別にみると、住宅を対象とした侵入窃盗で78.0%と、日本人(16.4%)の約4.8倍に上る。

このように、来日外国人による犯罪は、日本人によるものと比べて組織的に敢行される傾向がうかがわれる。

注:来日外国人と日本人の共犯事件については、主たる被疑者の国籍・地域により、来日外国人による共犯事件であるか、日本人による共犯事件であるかを分類して計上している。

 
図表4-17 来日外国人と日本人の刑法犯における共犯率の違い(令和元年)
図表4-17 来日外国人と日本人の刑法犯における共犯率の違い(令和元年)
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(2)日本で活動する国際犯罪組織の特徴

国際犯罪組織のうち、来日外国人で構成される犯罪組織についてみると、出身国や地域別に組織化されているものがある一方で、より巧妙かつ効率的に犯罪を敢行するため、様々な国籍の構成員が役割を分担するなど、構成員が多国籍化しているものもある。このほか、面識のない外国人同士がSNSを通じて連絡を取り合いながら犯行に及んだ例や、暴力団と連携した例もみられる。

また、犯罪行為や被害の発生場所等の犯行関連場所についても、日本国内にとどまらず複数の国に及ぶものがある。特に近年は、他国で敢行された詐欺事件による詐取金の入金先口座として日本国内の銀行口座を利用し、詐取金入金後にこれを日本国内で引き出してマネー・ローンダリングを敢行するといった事例があるなど、世界的な展開がみられる。

さらに、これらの犯罪組織の中には、短期滞在の在留資格により来日し、犯行後は本国に逃げ帰る形態(ヒット・アンド・アウェイ型)の犯罪を敢行するものもある。

(3)国際犯罪組織に利用される犯罪インフラ(注1)の実態

国際犯罪組織は、犯罪インフラを利用して各種犯罪を効率的に敢行している。国際犯罪組織が関与する犯罪インフラ事犯には、地下銀行(注2)による不正な送金、偽装結婚、偽装認知、不法就労助長(注3)、旅券・在留カード等偽造(注4)等がある。

注1:82頁参照

注2:地下銀行は、不法滞在者等が犯罪収益等を海外に送金するために利用されており、近年は、送金依頼を受けた資金で日本国内で流通している商品を購入し、正規の貿易を装って輸出して現地で換金するなど手口が巧妙化している。

注3:偽装結婚、偽装認知、不法就労助長は、不法滞在者等に在留資格を不正取得させたり、就労の機会を提供することで不法滞在等の犯罪を助長しており、これを仲介して利益を得るブローカーや、暴力団が関与するものがみられる。また近年では、在留資格の不正取得や不法就労を目的とした難民認定制度の悪用が疑われる例も発生している。

注4:偽造された旅券・在留カード等は、身分偽装手段として利用されるほか、違法に資金を得るために国際犯罪組織が偽造に関与し、不法滞在者等に販売されることもある。

CASE

ベトナム人の男(28)は、平成30年9月、SNS上で知り合った不法残留者に偽造在留カードを販売した。平成31年2月までに、同男を入管法違反(偽造在留カード提供)で、偽造在留カードを購入するなどしていたベトナム人の男(30)ら4人を入管法違反(偽造在留カード所持等)で逮捕した(沖縄)。



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