第4章 組織犯罪対策

第2節 薬物銃器対策

1 薬物情勢

令和元年(2019年)中の薬物事犯の検挙人員は1万3,364人と、引き続き高い水準にあり、覚醒剤の大量密輸入事犯が相次いで検挙されたほか、大麻事犯の検挙人員が警察庁が保有する昭和33年(1958年)以降の統計で最多となるなど、我が国の薬物情勢は依然として厳しい状況にある。

 
図表4-7 薬物事犯の検挙人員(令和元年)
図表4-7 薬物事犯の検挙人員(令和元年)
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(1)各種薬物事犯の状況

① 覚醒剤事犯

令和元年中、覚醒剤事犯の検挙人員は前年より減少したが、全薬物事犯の検挙人員の64.2%を占めている。また、押収量は2,293.1キログラムと、前年より1,154.5キログラム増加し、警察庁が保有する昭和31年以降の統計で最多となった。覚醒剤事犯の特徴としては、検挙人員のうち約4割を暴力団構成員等が占めていることのほか、30歳代以上の検挙人員が多いことや、他の薬物事犯と比べて再犯者の占める割合が高いことが挙げられる。

② 大麻事犯

大麻事犯の検挙人員は6年連続で増加しており、覚醒剤事犯に次いで検挙人員の多い薬物事犯である。大麻事犯の特徴としては、他の薬物事犯と比べて、検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が高いことが挙げられる。

 
図表4-8 各種薬物事犯の検挙状況の推移(平成27年(2015年)~令和元年)
図表4-8 各種薬物事犯の検挙状況の推移(平成27年(2015年)~令和元年)
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(2)薬物密輸入事犯の状況

令和元年中の薬物密輸入事犯の検挙件数は463件と、前年より139件(42.9%)増加し、検挙人員は498人と、前年より186人(59.6%)増加した。

覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移は、図表4-9のとおりである。令和元年中は、洋上取引による覚醒剤の大量密輸入事犯を検挙したほか、航空機を利用した覚醒剤密輸入事犯も多数検挙した。

これらの背景には、我が国に覚醒剤に対する根強い需要が存在していることのほか、国際的なネットワークを有する薬物犯罪組織が、アジア・太平洋地域において覚醒剤の取引を活発化させていることがあるものと考えられる。

 
図表4-9 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移(平成22~令和元年)
図表4-9 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移(平成22~令和元年)
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CASE

中国(香港等)人の男(33)らは、令和元年6月、小型船で覚醒剤を密輸入した。同月、同男らを覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で逮捕し、覚醒剤約1,018キログラムを押収した(警視庁、静岡、福岡)。

 
押収された覚醒剤
押収された覚醒剤

(3)薬物犯罪組織の動向

① 薬物事犯への暴力団の関与

令和元年中の暴力団構成員等による覚醒剤事犯の検挙人員は3,738人と、前年より907人(19.5%)減少したものの、覚醒剤事犯の総検挙人員の43.5%を占めていることから、依然として覚醒剤事犯に暴力団が深く関与していることがうかがわれる。また、暴力団構成員等による大麻事犯の検挙人員は780人と、総検挙人員の18.1%を占めており、前年より18人(2.4%)増加したこと及び大麻栽培事犯の検挙事犯の検挙人員も42人と前年より17人(68.0%)増加していることなどから、暴力団が大麻事犯への関与を強めていることがうかがわれる。

② 来日外国人による薬物事犯

令和元年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は749人と、前年より141人(23.2%)増加した。このうち、覚醒剤の営利目的輸入事犯の検挙人員は223人であり、国籍・地域別でみると、タイ、マレーシアの比率が高く、合わせて全体の40.4%を占めている。また、令和元年中の来日外国人による覚醒剤の密売関連事犯(注)の検挙人員は33人と、前年より10人(43.5%)増加した。国籍・地域別でみると、イラン、香港の比率が高く、合わせて全体の48.5%を占めている。

注:営利目的所持、営利目的譲渡し及び営利目的譲受け



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