第4章 組織犯罪対策

2 薬物対策

(1)供給の遮断

我が国で乱用されている薬物の大半が海外から流入していることから、警察では、これを水際で阻止するため、税関、海上保安庁等の関係機関との連携を強化するとともに、国際捜査共助等の積極的な実施や国際会議への参加を通じた情報交換等による国際捜査協力を推進している。令和2年2月には、警察庁のODA事業として、27の国及び2国際機関の参加を得て、第25回アジア・太平洋薬物取締会議(ADEC)を東京都で開催し、薬物情勢、捜査手法及び国際協力に関する討議を行った。

また、薬物犯罪組織の壊滅を図るため、通信傍受等の組織犯罪の取締りに有効な捜査手法を積極的に活用し、組織の中枢に迫る捜査を推進している。さらに、薬物犯罪組織に資金面から打撃を与えるため、麻薬特例法(注1)の規定に基づき、業として行う密輸・密売等(注2)やマネー・ローンダリング事犯の検挙、薬物犯罪収益の没収(注3)・追徴(注4)等の対策を推進している。

このほか、インターネットを利用した薬物密売事犯対策として、サイバーパトロールやインターネット・ホットラインセンター(IHC)(注5)からの通報等により薬物密売情報の収集を強化し、密売人の取締りを推進している。

注1:国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律

注2:通常の密輸・密売等より重く処罰することができ、また、一連の行為を集合犯としてとらえ、その間の薬物犯罪収益総体が没収・追徴の対象となる。

注3:財産を剥奪して国庫に帰属させる処分を内容とする財産刑

注4:財産の全部又は一部を没収することができない場合に、その価額の納付を強制する処分

注5:111頁参照

(2)需要の根絶

薬物乱用は、乱用者自身の精神や身体をむしばむばかりでなく、幻覚、妄想等により、乱用者が凶悪な事件や重大な交通事故等を引き起こすこともあるほか、薬物の密売が暴力団等の犯罪組織の資金源となることから、社会の安全を脅かす重大な問題である。

警察では、薬物乱用者を厳しく取り締まるとともに、広報啓発活動を行い、社会全体から薬物乱用を排除する気運の醸成を図っている。

また、薬物事犯で検挙された者やその家族等の希望に応じて、薬物乱用防止のための相談先等を記載した資料を配付するなど、薬物再乱用防止に向けた相談活動の充実を図っている。

(3)危険ドラッグ(注)対策

ハーブ、アロマ等と称して販売される危険ドラッグは、平成26年頃には、乱用者本人の健康被害やその影響とみられる事件・事故が相次いで発生するなど深刻な社会問題となっていた。こうした状況を受け、政府一丸となって徹底的な対策を講じた結果、平成26年3月時点で215店舗存在した危険ドラッグ販売店舗を平成27年7月に全滅させた。また、危険ドラッグ事犯の検挙人員は平成27年にピークを迎えた後、令和元年には182人と、4年連続で減少した。警察では、引き続き医薬品医療機器等法をはじめとする各種法令を駆使して危険ドラッグ事犯の取締りを徹底するとともに、国内外の関係機関との情報共有や乱用防止に向けた広報啓発活動を行っている。

注:規制薬物(覚醒剤、大麻、麻薬、向精神薬、あへん及びけしがらをいう。)又は指定薬物(医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物をいう。)に化学構造を似せて作られ、これらと同様の薬理作用を有する物品をいい、規制薬物及び指定薬物を含有しない物品であることを標ぼうしながら規制薬物又は指定薬物を含有する物品を含む。

 
図表4-10 危険ドラッグ事犯の検挙人員の推移(平成27~令和元年)
図表4-10 危険ドラッグ事犯の検挙人員の推移(平成27~令和元年)
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