第3節 外国治安機関等との連携
(1)国際的な犯罪に対する外国治安機関等との連携
① ASEAN加盟国、G7各国等との連携
警察庁では、国際テロ対策、サイバーセキュリティ対策等の分野において、ASEAN加盟国等の外国治安機関等との協力関係の強化に取り組んでいる。
平成30年(2018年)9月にはブルネイにおいて、ASEAN警察長官会合(ASEANAPOL)(注1)の第38回会合が開催されたほか、同年11月にはミャンマーにおいて、ASEAN+3国際犯罪閣僚会議(注2)の第9回会議及び日・ASEAN国際犯罪閣僚会議の第4回会議が開催され、我が国からはそれぞれ警察庁幹部が出席した。また、同年10月にはカナダにおいて、平成31年(2019年)3月にはフランスにおいて、G7ローマ/リヨン・グループ会合が開催され、我が国からは警察庁幹部等が出席し、国際組織犯罪対策やテロ対策について積極的に議論に参加した。また、同年4月にはフランスにおいて、G7内務大臣会合が開催され、我が国からは警察庁次長が出席した。 さらに、平成30年(2018年)12月にはオランダにおいて、警察庁とEUROPOL(注3)との間において協力関係構築に関する実務取決めを策定した。この実務取決めにより、EUROPOLへの連絡担当官の派遣が可能となり、EUROPOLに加え、EU加盟国や連絡担当官を派遣している他の国との二国間協力の深化が期待される。
注1:東南アジア地域の警察機関相互の交流促進を目的として昭和56年(1981年)に結成されたもので、我が国は、中国、韓国等と共に議決権のない参加資格である「ダイアログ・パートナー」として参加している。
注2:ASEAN加盟国に日本、中国及び韓国を加えた治安機関の閣僚が参加する会議
注3:European Union Agency for Law Enforcement Cooperationの略。欧州連合(EU)の法執行機関であるが、捜査権限はなく、加盟国間の情報交換の促進や収集した情報の分析等が主な任務である。

G7安全担当大臣会合の様子
② 二国間等の連携
警察では、国際的な犯罪対策において我が国と関わりの深い国の治安機関との間で協議を行うなどして協力関係を深めている。平成30年12月には、中国・昆明において、中国公安部との間で第11回日中警察協議を、中国公安部及び韓国警察庁との間で第4回日中韓警察局長級会議を、それぞれ開催した。また、同年6月には東京において、国家公安委員会委員長が、ベトナム公安大臣と会談を行ったほか、同年12月には東京において、ベトナム公安省との間で第6回日越治安当局次官級協議を開催した。さらに、平成31年1月には、国家公安委員会委員長が、トルコ駐日大使と会談を行うなど、外国治安機関等との協力関係を強化した。

第4回日中韓警察局長級会議の様子

国家公安委員会委員長とベトナム公安大臣による会談の様子
(2)治安に関係する国際約束の締結
刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期すとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまでに米国、韓国、中国、香港、EU及びロシアとの間で締結している。また、犯罪人引渡条約は、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付けるものであり、これまでに米国及び韓国との間で締結している。
このほか、平成26年2月、PCSC協定(注)が日米両政府間において署名され、平成31年1月に発効した。これにより、日米両国国民の円滑な渡航が実現するとともに、テロを含む重大な犯罪の防止等における日米間の協力が一層推進されることが期待される。
注:重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(Agreement between the Government of Japan and the Government of the United States of America on Enhancing Cooperation in Preventing and Combating Serious Crime)の略称。日米査証免除措置の下で安全な国際的渡航を一層容易にしつつ、日米両国国民の安全を強化するために、重大な犯罪を防止し、及び捜査することを目的として、相互に必要な指紋情報等を交換するための枠組みを定めたもの
(3)国際協力の推進
① 海外の警察に対する支援
警察庁では、我が国の警察の知見や特質をいかせる分野において、外務省やJICAと協力し、専門家の派遣や研修員の受入れを通じた海外の警察に対する支援を行っている。平成30年中には、4人の専門家を新たに派遣した。
ア インドネシア国家警察改革支援プログラム
平成13年以降、インドネシア国家警察改革支援プログラムを実施しており、国家警察長官アドバイザー兼プログラム・マネージャーを含む専門家を派遣している。平成24年以降、市民警察活動を全国展開させるため、交番制度、現場鑑識活動等に関するこれまでの協力の成果の一層の定着・展開を支援している。
イ 研修員の受入れ
警察では、知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。平成30年中には、15回の研修でインドネシア、ベトナム、東ティモール、ミャンマー等各国の警察幹部を含む178人の研修員を受け入れた。

愛知県警察でのインドネシア警察官への研修の様子
② 国際緊急援助活動
我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察も国際緊急援助隊の救助チームの一員として国際緊急援助活動を行っている。警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律が施行された昭和62年以降、延べ290人の隊員を延べ16の国・地域に派遣し、被災者の捜索・救助等を行った。

台湾での国際緊急援助活動の様子(写真提供:JICA)