第6章 公安の維持

5 大衆運動への警察の対応

警察は、公共の安全と秩序の維持に当たるという警察の責務を遂行するため、大衆運動に伴う違法行為や事故を未然に防止するために必要な警備措置を講じるとともに、違法行為が発生した際には、捜査等の必要な措置を講じることとしている。

(1)近年の大衆運動

近年の大衆運動は、平成23年の福島第一原子力発電所事故を契機に、反原発運動が幅広い年齢層の多数の市民が参加する運動へと発展したり、平成27年以降、平和安全法制等に反対する運動に諸団体が連携して取り組み、国会議事堂周辺等において繰り返し大規模な抗議行動が展開されたりするなど一定の拡大がみられたが、最近ではその勢いに陰りが生じている。

平成30年中も、各地で様々な課題を捉えた集会、デモ等が行われており、例えば、毎週金曜日には、首相官邸前で反原発を訴える抗議行動が、毎月19日には、国会議事堂周辺でその時々の政治課題等を捉えた抗議行動が行われているが、図表6-4及び図表6-5のとおり、これらの抗議行動の平均参加者数はそれぞれのピークの年の数を大幅に下回った。

 
図表6-4 毎週金曜日の首相官邸前における抗議行動(平成24~30年)
図表6-4 毎週金曜日の首相官邸前における抗議行動(平成24~30年)
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図表6-5 毎月19日の国会議事堂周辺における抗議行動(平成27~30年)
図表6-5 毎月19日の国会議事堂周辺における抗議行動(平成27~30年)
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(2)沖縄県内の反基地運動

沖縄県では、普天間飛行場の危険の除去と返還に向けて名護市辺野古への移設工事が進められているが、これを新たな米軍基地の押し付けと捉える地域住民らが、移設先であるキャンプ・シュワブや埋立用の資材を搬出する港の周辺において、工事関係車両への立ち塞がり、道路での座込みといった危険な妨害活動を繰り返している。

警察では、平成30年中、同県内の反基地運動に伴って発生した違法行為に関連して、道路交通法違反(道路上の禁止行為)、公務執行妨害罪、暴行罪等で20件、延べ22人を検挙した。

(3)反グローバリズム運動

近年、経済のグローバル化が貧富の差の拡大や環境破壊といった社会問題を発生させているなどとする考え方に基づき、国際会議等の開催を捉えて抗議行動を行う反グローバリズム運動が国際的に展開されており、平成30年(2018年)11月にアルゼンチンで開催されたG20ブエノスアイレス・サミットにおいては、数万人規模のデモが行われ、ハンマーや火炎瓶等を所持していたなどとして、当該デモの参加者十数人が身柄拘束されるなどした。

国内の反グローバリズムを掲げる勢力についても、令和元年のG20大阪サミットや令和2年の2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、集会の開催や関係者の海外派遣等を通じ、国内外の諸勢力との連携を図るなどの活動が確認されている。



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