第6章 公安の維持

3 右翼等の動向と対策

(1)右翼の動向と対策

右翼は、近年、領土問題、歴史認識問題等に関し、関係国や日本政府等を批判している。

平成30年中、韓国をめぐっては、韓国の国会議員による竹島上陸、慰安婦問題及び旧朝鮮半島出身労働者問題を捉えた抗議活動を活発化させた。

北朝鮮をめぐっては、北朝鮮が核実験及びICBM級の弾道ミサイルの試験発射の中止を決定したことに伴い、それらを捉えた抗議活動の動員数は減少したものの、平成30年2月には、「北朝鮮のミサイル発射が許せなかった」などとして、右翼活動家ら(2人)が朝鮮総聯中央本部の正門門扉に拳銃5発を発砲し、同門扉を損壊する事件が発生し、同活動家らを建造物損壊罪で現行犯逮捕した(警視庁)。

また、警察では、右翼及びその周辺者からの銃器摘発に努めた結果、平成30年中、拳銃8丁(平成29年中:0丁)を押収した。

右翼が上記の街頭宣伝活動等に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、図表6-2のとおりである。

 
右翼の街頭宣伝活動(5月、東京)
右翼の街頭宣伝活動(5月、東京)
 
図表6-2 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(平成30年)
図表6-2 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(平成30年)
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CASE

右翼活動家の男(66)は、平成30年4月、高速道路のサービスエリアに駐車中の乗用自動車内において、正当な理由なく、刃体の長さ約22センチメートルのなた1丁を携帯していたことから、同男を銃刀法違反(刃物携帯)で逮捕した(神奈川)。同男は、北朝鮮の拉致問題に関する安倍首相宛ての抗議文を所持しており、また、過去には、拉致問題に抗議する目的で、国会議事堂周辺等でなたを使用し自らの手首を切り付けるなどしていた。

CASE

右翼団体幹部の男(46)は、平成30年5月、ロシア大使館に抗議する目的で、同大使館通用門脇に設置されたフェンスを乗り越えて敷地内に侵入しようとしたものの、警察官に阻止され、その際、同フェンスを損壊した。同月、同男を建造物侵入未遂罪及び器物損壊罪で逮捕した(警視庁)。

警察では、右翼による悪質な違法行為に対し、様々な法令を適用した取締りを行っており、平成30年中、右翼による違法行為の検挙件数は1,242件、検挙人員は1,315人であった。

右翼団体の中には、幹部の多くが暴力団員又は元暴力団員であるものや、暴力団が右翼団体を標榜しているものなど、反社会的勢力と密接な関係を有するものが数多くあり、資金獲得を目的とした恐喝事件や詐欺事件等の違法行為を引き起こしているが、このような恐喝事件や詐欺事件等の検挙件数は171件、検挙人員は209人に上り、当該検挙件数は、道路交通法違反を除く全右翼関係事件検挙件数(534件)の約32%を占めている。

また、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質な街頭宣伝活動に対しては、その内容や形態に応じた取締りを行っており、平成30年中は、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反等で15件24人を検挙した。

 
街頭宣伝活動に対する取締り状況(8月、東京)
街頭宣伝活動に対する取締り状況(8月、東京)

CASE

右翼団体代表(49)ら2人は、平成30年8月、外国公館等周辺地域を走行中の街頭宣伝車内において、高音を発して静穏を害するような方法で同車に備え付けた拡声機を使用したため、警察官らから、拡声機の使用をやめるよう是正措置命令を受けたにもかかわらず、引き続き同様の方法で拡声機を使用し、同命令に違反したことから、同代表らを静穏保持法(注)違反で現行犯逮捕した(警視庁)。

注:国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律

(2)右派系市民グループをめぐる情勢と警察の対応

平成30年中、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右派系市民グループは、韓国や北朝鮮との問題等を捉えたデモや街頭宣伝活動等に各地で取り組み、全国におけるデモは約30件に及んだ。

また、右派系市民グループの活動に対して抗議する勢力が、参加者による過激な言動について、「ヘイトスピーチ」であると批判するなどして、抗議行動に取り組んだ。

警察では、平成28年に施行された本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律を踏まえ、引き続き、右派系市民グループとその活動に対して抗議する勢力とのトラブルに起因する違法行為の未然防止の観点から、厳正公平な立場で必要な警備措置を講じ、違法行為を認知した場合には、法と証拠に基づき厳正に対処するとともに、警察職員に対する必要な教育を推進することとしている。

 
右派系市民グループのデモ(3月、東京)
右派系市民グループのデモ(3月、東京)

CASE

右派系市民グループ関係者の男(19)は、平成30年6月、東京都内において、デモ行進中、デモに抗議していた男性を突き飛ばすなどの暴行を加えたことから、同関係者の男を暴行罪で現行犯逮捕した(警視庁)。



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