第6章 公安の維持

2 極左暴力集団の動向と対策

(1)極左暴力集団の動向

暴力革命による共産主義社会の実現を目指す極左暴力集団は、依然として「テロ、ゲリラ」の実行部隊である非公然組織を擁するとともに、組織の維持・拡大をもくろみ、暴力性・党派性を隠して大衆運動や労働運動に取り組んでいる。

平成30年中、極左暴力集団は、その暴力性・党派性を隠しながら、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案の成立をめぐり、同法律案が労働者の権利を奪うとして反対運動に取り組んだほか、「政権打倒」を掲げて憲法改正への反対を訴えた。また、同様に、沖縄県における普天間飛行場の名護市辺野古移設に対する反対運動をはじめとした反戦・反基地運動に加え、原子力発電所の建設や再稼働を捉えた反原発運動にも取り組み、これらを通じて同調者や支持者の獲得を図った。

革マル派(注1)は、同派創始者である故黒田寛一前議長の講演記録を集成した書籍を刊行し、同書を活用した学習を呼び掛けるなど、黒田前議長が提唱した理論の継承に引き続き取り組んだ。また、革マル派が相当浸透しているとみられる全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)及び東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)は、JR東労組から3万人を超える組合員が脱退した事態を受け、定期大会において、同派設立時の副議長であった故松嵜明元JR東労組会長が提唱した労働運動理論を基に組織再建に取り組む方針を決定した。

中核派(注2)は、労働運動を通じて組織拡大を図る「階級的労働運動路線」を堅持し、労働争議や大衆運動に介入する中で勧誘活動にも取り組んだ。また、中核派系の全日本学生自治会総連合(全学連)を中心に若者の獲得に力を入れ、活動家の在籍の有無を問わず各地の大学で勧誘活動に取り組んだほか、勧誘活動においては、SNSや動画共有サイトを積極的に活用した。このほか、全学連は、東京大学の現役学生を委員長とする新執行部を確立した。

革労協主流派(注3)及び革労協反主流派(注4)は、平成30年の年頭の機関紙において、非公然組織「革命軍」のアピール文をそれぞれ発し、武装闘争の飛躍や発展を主張した。

注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。

注2:正式名称を革命的共産主義者同盟全国委員会という。

注3:正式名称を革命的労働者協会(社会党社青同解放派)という。

注4:正式名称を革命的労働者協会(解放派)という。

 
「国際反戦デー闘争」(10月、東京)
「国際反戦デー闘争」(10月、東京)

(2)極左暴力集団対策の推進

警察では、極左暴力集団による「テロ、ゲリラ」を未然に防止するための諸対策を推進しており、その過程で明らかになった違法行為は、厳正に取り締まっている。平成30年8月には、偽名でホテルに宿泊した中核派非公然活動家1人を有印私文書偽造・同行使罪等で逮捕した(警視庁)。また、同年11月には、京都大学の構内に無断で侵入し、機関紙やビラを配布した中核派系全学連活動家3人を建造物侵入罪で逮捕した(京都)。



前の項目に戻る     次の項目に進む