第4章 組織犯罪対策

4 暴力団排除活動の推進

(1)国及び地方公共団体における暴力団排除活動

国及び地方公共団体は、犯罪対策閣僚会議の下に設置された暴力団取締り等総合対策ワーキングチーム(以下「ワーキングチーム」という。)における申合せ等に基づき、警察と連携して、受注業者の指名基準や契約書に暴力団排除条項(注)(下請契約、再委託契約等に係るものを含む。)を盛り込むほか、受注業者に対して、暴力団等に不当に介入された場合の警察への通報等を義務付けるなどの取組を推進している。また、民間工事等に関係する業界及び独立行政法人に対しても同様の取組が推進されるよう所要の指導・要請を行っている。

注:法令、規約及び契約書等に設けられている条項であって、許可を取得する者、事務の委託の相手方、契約等の取引の相手方等から暴力団員等の暴力団関係者又は暴力団関係企業を排除する旨を規定する条項

CASE

建設会社の代表者の男(76)らを恐喝罪で逮捕したところ、同男と工藤會傘下組織の組長とが社会的に非難されるべき関係を有していたことが判明した。そこで、警察から福岡県、福岡市等へ通報するなどし、平成30年5月、同県等が公共工事の下請契約からの排除の措置を講じるなどした(福岡)。

(2)各種事業・取引等からの暴力団排除

① 各種事業からの暴力団排除

近年、各種事業から暴力団関係企業等を排除するため、法令等において暴力団排除条項の整備が進んでおり、警察では、暴力団の資金源を遮断するため、関係機関・団体と連携して、貸金業、建設業等の各種事業からの暴力団排除を推進している。

② 各種取引からの暴力団排除

近年、暴力団の資金獲得活動が巧妙化・不透明化していることから、企業が、取引先が暴力団関係企業等であると気付かずに経済取引を行ってしまうことを防ぐため、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(注)及びワーキングチームにおける申合せに基づき、警察では、関係機関・団体と連携を強化し、各種取引からの暴力団排除を推進している。

注:平成19年の犯罪対策閣僚会議幹事会における申合せ。企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応について取りまとめたもの

CASE

知事部局からの照会に基づき、建設業の許可申請書の記載事項の変更を届け出た建設業者の営業所長を調査したところ、同営業所長が暴力団関係者であることが判明した。平成30年7月、警察からの回答を受けた知事部局が、同建設業者の建設業許可を取り消した(和歌山)。

(3)地域住民等による暴力団排除活動

警察では、暴追センター及び弁護士会と緊密に連携し、適格暴追センター制度(注)も活用しながら、事務所撤去訴訟等に対する支援を実施するなどして、地域住民等による暴力団排除活動を支援している。

また、暴力団対策法における指定暴力団の代表者等の損害賠償責任に関する規定も効果的に活用しながら、暴力団犯罪に係る損害賠償請求訴訟に対する支援を実施するなどして、暴力団の不当要求による被害の防止、暴力団からの被害の救済等に努めている。

注:国家公安委員会から適格暴追センターとして認定を受けた暴追センターが、指定暴力団等の事務所の付近住民から委託を受けて、自己の名をもって事務所使用差止請求を行うことができる制度

 
暴力団追放パレードの状況
暴力団追放パレードの状況

CASE

購入したビルを暴力団事務所として使用していた神戸山口組傘下組織の組長らに対し、平成29年4月、同ビルの売却者が提起した明渡し等請求訴訟について、警察では、公益財団法人宮城県暴力団追放推進センター、仙台弁護士会等と連携して、情報提供等の支援を実施するなどした。平成30年3月、売買契約を解除する旨の和解が成立し、事務所が撤去された(宮城)。

CASE

共政会傘下組織の組長らにより、みかじめ料名目で恐喝を受けるなどしたとして、元風俗店経営者らが共政会の代表者らに対して損害賠償を求めた民事訴訟において、平成30年5月、広島地方裁判所は、同代表者らに対し、合計約1,800万円の支払いを命じた。警察では、同訴訟に関し、共政会に関する暴力団情報の提供や暴力団対策法の規定に基づく請求妨害防止命令の発出等を行った(広島)。

(4)地方公共団体における暴力団排除に関する条例の運用

各都道府県は、地方公共団体、住民、事業者等が連携・協力して暴力団排除に取り組む旨を定め、暴力団排除に関する基本的な施策、青少年に対する暴力団からの悪影響排除のための措置、暴力団の利益になるような行為の禁止等を主な内容とする暴力団排除に関する条例の運用に努めている。

各都道府県では、条例に基づき、暴力団の威力を利用する目的で財産上の利益の供与をしてはならない旨の勧告等を実施している。平成30年中における実施件数は、事業者が正月用飾り物の購入名目等で暴力団員に現金を供与したなどとして勧告した事例が43件、暴力団員が正当な理由なく少年を事務所に立ち入らせたなどとして中止命令を発出した事例が14件、暴力団員が立入禁止標章(注)の掲示店舗に立ち入ったことにつき、更に反復して行うおそれがあるなどとして再発防止命令を発出した事例が9件、暴力団員が暴力団排除特別強化地域等の飲食店等から用心棒の役務を提供することの対償として現金を受け取ったなどとして検挙した事例が13件となっている。

注:暴力団員の立入りが禁止された特定の営業所に掲示される標章

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六代目山口組傘下組織の組長の男(45)らは、平成30年1月から同年2月にかけて、愛知県暴力団排除条例に定める暴力団排除特別区域の風俗営業者から、用心棒の役務の提供をすることの対償として、現金合計200万円を受け取った。同年7月、同男ら2人を同条例違反(特別区域における暴力団員の禁止行為)で逮捕した(愛知)。

(5)暴力団員の社会復帰対策の推進

暴力団を壊滅するためには、構成員を一人でも多く暴力団から離脱させ、その社会復帰を促すことが重要である。警察庁では、平成29年に閣議決定された「再犯防止推進計画」等に基づき、関係機関・団体と連携して、暴力団関係者に対する暴力団からの離脱に向けた働き掛けの充実を図るとともに、構成員の離脱・就労、社会復帰等に必要な社会環境及びフォローアップ体制の充実に関する効果的な施策を推進している。

CASE

六代目山口組傘下組織の組員から警察に対し、「組織を脱退して自由に生活したい。地元には組織の者がおり生活しづらいため、できれば地元以外で就職をしたい」旨の相談がなされたことから、警察では、離脱支援を行って同人を同傘下組織から脱退させた。また、警察、暴追センター、関係機関・団体等から構成される社会復帰対策協議会において就労支援を行った結果、令和元年5月、同人はその居住地ではない都道府県で就労するに至った。



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