第2節 薬物銃器対策
1 薬物情勢
平成30年(2018年)中の薬物事犯の検挙人員は1万3,862人と、引き続き高い水準にあり、覚醒剤の大量密輸入事犯が相次いで検挙されたほか、大麻事犯の検挙人員が警察庁が保有する昭和33年(1958年)以降の統計で最多となるなど、我が国の薬物情勢は依然として厳しい状況にある。

(1)各種薬物事犯の状況
① 覚醒剤事犯
最近5年間の覚醒剤事犯の検挙人員及び粉末押収量は図表4-8のとおりである。平成30年中、検挙人員は前年より減少したが、全薬物事犯の検挙人員の71.2%を占めている。近年の覚醒剤事犯の特徴としては、検挙人員のうち半数程度を暴力団構成員等が占めていることのほか、30歳代以上の検挙人員が多いことや、他の薬物事犯と比べて再犯者の占める割合が高いことが挙げられる。
② 大麻事犯
最近5年間の大麻事犯の検挙人員及び押収量は図表4-8のとおりである。検挙人員は5年連続で増加しており、覚醒剤事犯に次いで検挙人員の多い薬物事犯となっている。近年の大麻事犯の特徴としては、他の薬物事犯と比べて、全検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が高いことが挙げられる。
③ その他の薬物事犯
最近5年間のMDMA(注)等合成麻薬事犯、あへん事犯等の各種薬物事犯の検挙人員及び押収量は、図表4-8のとおりである。
注:化学名「3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(3,4-Methylenedioxymethamphetamine)」の略名。本来は白色粉末であるが、様々な着色がなされ、文字や絵柄の刻印が入った錠剤の形で密売されることが多い。

(2)薬物密輸入事犯の状況
平成30年中の薬物密輸入事犯の検挙件数は324件と、前年より22件(7.3%)増加し、検挙人員は312人と、前年より23人(8.0%)増加した。
覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移は、図表4-9のとおりである。平成30年中は、密輸入事犯における覚醒剤の押収量が前年より減少したものの、暴力団や来日外国人(注)による覚醒剤の大量密輸入事犯を相次いで検挙したほか、航空機を利用した覚醒剤密輸入事犯も多数検挙した。
これらの背景には、我が国に覚醒剤に対する根強い需要が存在していることのほか、国際的なネットワークを有する薬物犯罪組織がアジア・太平洋地域において覚醒剤の取引を活発化させていることがあるものと考えられる。
注:我が国に存在する外国人のうち、定着居住者(永住者、永住者の配偶者等及び特別永住者)、在日米軍関係者及び在留資格不明者を除いた外国人

CASE
ブラジル人の男(38)らは、平成30年1月、工作機械に覚醒剤を隠匿し、香港から海上コンテナで密輸入した。同年4月までに、同男らブラジル人4人を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入等)で逮捕し、覚醒剤約247.1キログラムを押収した(警視庁、群馬)。

押収された覚醒剤
(3)薬物犯罪組織の動向
① 薬物事犯への暴力団の関与
平成30年中の暴力団構成員等による覚醒剤事犯の検挙人員は4,645人と、前年より106人(2.2%)減少したものの、覚醒剤事犯の全検挙人員の47.1%を占めていることから、依然として覚醒剤事犯に暴力団が深く関与していることがうかがわれる。また、暴力団構成員等による大麻事犯の検挙人員は762人と、全検挙人員の21.3%を占めており、暴力団構成員及び準構成員等の総数が減少している(注)にもかかわらず、前年より20人(2.7%)増加していることなどから、暴力団が大麻事犯への関与を強めていることがうかがわれる。
注:158頁参照
② 来日外国人による薬物事犯
平成30年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は608人と、前年より9人(1.5%)減少した。このうち、覚醒剤の営利目的輸入事犯の検挙人員は82人であり、国籍・地域別でみると、マレーシア、メキシコ、米国の比率が高く、合わせて全体の50.0%を占めている。また、平成30年中の来日外国人による覚醒剤の密売関連事犯(注)の検挙人員は23人と、前年より6人(20.7%)減少した。国籍・地域別でみると、依然としてイランの比率が最も高く、全体の47.8%を占めており、イラン人による覚醒剤の密売ルートが根強く存在していることがうかがわれる。
注:営利目的所持、営利目的譲渡し及び営利目的譲受け