第4章 組織犯罪対策

第4章 組織犯罪対策

第1節 暴力団対策

暴力団は、繁華街や住宅街における拳銃を使用した凶悪な犯罪や、自らの意に沿わない事業者を対象とする、報復・見せしめ目的の襲撃等事件を敢行したり、組織の継承等をめぐって銃器を用いた対立抗争事件を引き起こしたりするなど、自己の目的を遂げるためには手段を選ばない凶悪性がみられ、依然として社会にとって大きな脅威となっている。

また、暴力団は覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及びノミ行為等(注)(以下「伝統的資金獲得犯罪」という。)に加え、近年では、特殊詐欺をはじめ、暴力団の威力を必ずしも必要としない詐欺を多数敢行するなど、多種多様な資金獲得活動を行っている。

警察では、社会経済情勢の変化にも留意しつつ、暴力団犯罪の取締り、暴力団対策法の効果的な運用及び暴力団排除活動を推進している。

注:公営競技をめぐって施行者以外の第三者が行う勝馬投票等類似行為等の競馬法、自転車競技法、小型自動車競走法及びモーターボート競走法違反

1 暴力団情勢

(1)暴力団構成員及び準構成員等(注1)の推移

暴力団構成員及び準構成員等の推移は、図表4-1のとおりであり、その総数は、平成17年(2005年)から減少している。

また、平成30年末現在、暴力団構成員及び準構成員等の総数のうち主要団体等(注2)の占める割合は約7割に及んでいる。このうち、六代目山口組については、平成27年8月の分裂以降、その暴力団構成員及び準構成員等の数が総数の半数弱を占めていた一極集中の状態から後退し、同年末から総数の3割程度で推移している。

注1:暴力団構成員以外の暴力団と関係を有する者であって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがあるもの、又は暴力団若しくは暴力団構成員に対し資金、武器等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運営に協力し、若しくは関与するもの

注2:平成26年までは、六代目山口組、稲川会及び住吉会を「主要3団体」と、平成27年以降は、神戸山口組を含む4団体を「主要団体」と、平成30年以降は、任侠山口組を含む5団体を「主要団体等」という。

 
図表4-1 暴力団構成員及び準構成員等の推移(平成21~30年)
図表4-1 暴力団構成員及び準構成員等の推移(平成21~30年)
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(2)暴力団の解散・壊滅

平成30年中に解散・壊滅した暴力団の数は106組織であり、これらに所属していた暴力団構成員の数は344人である。このうち主要団体等の傘下組織の数は75組織(70.8%)であり、これらに所属していた暴力団構成員の数は260人(75.6%)である。

(3)暴力団の指定

令和元年(2019年)6月1日現在、暴力団対策法の規定に基づき24団体が指定暴力団として指定されている。平成30年中は、松葉会が9回目、三代目福博会が7回目の指定を受けたほか、同年3月に任侠山口組が、同年4月に関東関根組がそれぞれ新たに指定を受けた。また、平成31年4月には、神戸山口組が2回目の指定を受けた。

 
図表4-2 指定暴力団一覧表(24団体)
図表4-2 指定暴力団一覧表(24団体)

MEMO 準暴力団等に関する実態解明及び取締りの強化

近年、暴走族の元構成員等を中心とする集団に属する者が、繁華街・歓楽街等において、集団的又は常習的に暴行、傷害等の暴力的不法行為等を敢行している例がみられるほか、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動を活発化させている。こうした集団は、暴力団と同程度の明確な組織性は有しないが、暴力団等の犯罪組織との密接な関係がうかがわれるものも存在する。警察では、こうした集団を準暴力団と定義し、準暴力団及びこれに準ずる集団について、部門・所属の垣根を越えた実態解明の徹底に加え、あらゆる法令を駆使した取締りの強化に努めている。

CASE

チャイニーズドラゴンの関係者の男(34)らは、平成29年12月、7回にわたり、航空貨物に金地金を隠匿して香港から密輸入しようとするなどした。平成30年9月までに、同男ら9人を関税法違反(無許可輸入未遂)等で逮捕した(警視庁)。



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