第3章 サイバー空間の安全の確保

警察活動の最前線

サイバー犯罪対策~IGCIに出向して~


埼玉県警察本部刑事部刑事総務課通訳運用係

椎名 美雪(しいな みゆき) 警部

 
ポッポくん・ポポ美ちゃん

IGCI(INTERPOL Global Complex for Innovation)とは、ICPO(国際刑事警察機構)が2015年にシンガポールに開局したサイバー犯罪の国際協力を目的とした総局で、サイバー犯罪対策、サイバーセキュリティ及びICPO職員や加盟国警察官の能力開発・訓練を担当する部局から構成されます。私は、2016年1月より2年半にわたり、警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課からIGCIに派遣されました。

IGCIでは、サイバー犯罪局(Cybercrime Directorate)におけるデジタル捜査支援課(Digital Investigative Support)において、サイバー犯罪対策の国際協力における官民連携業務に従事しました。IGCIの同僚らは世界各国の法執行機関から派遣されており、上司もブラジル国家警察から派遣された警察官であるなど国際的な職場でありました。外国での勤務スタイルは日本とは異なる面も多くあり、そこにこれまでの自身の働き方を合わせていく中で成果を出すことは容易ではありませんでした。

具体的な業務の中で最も印象に残っているのは、民間企業等との協定の締結です。サイバー犯罪の多様化、巧妙化は著しく、サイバー犯罪捜査における国際協力においても官民連携を進める必要があり、加盟国を対象としたサイバー犯罪対処のトレーニングや加盟国の捜査に資する情報提供などに民間企業等との協定締結は必須でした。協定締結に当たっては、「ICPOとして何が必要なのか」を考える一方で「民間企業は何を提供できるのか」等をコストの観点からも分析し、その必要性を事務総局に訴える必要がありました。さらに、ICPOの存在意義のひとつである「加盟国の捜査支援」の観点からは、加盟国の捜査機関と情報共有を行う意義は大きく、サイバー犯罪局にあるサイバーフュージョンセンター(Cyber Fusion Center)と連携のうえ、民間企業から提供されるサイバー空間の脅威に関する情報を捜査に使える形に分析し、加盟国に提供するため、関係する民間企業との間でのデータ共有協定の締結を推進しました。

 
警察活動の最前線 サイバー犯罪対策 写真2

また、世界各国の金融機関が集中するシンガポールにおいては、金融機関が狙われる事案も多く、サイバー犯罪への対処は国家施策でもあることから、新たな事象に迅速に対応するシンガポールの姿勢はスマート国家と呼ぶにふさわしく、非常に学ぶべき点が多いと感じました。例えば、センサーやカメラが各所に設置されていたほか、各種手続のデジタル化、キャッシュレス化がとても進んでいました。

今後、技術革新が進む中で新たなサービスが次々に生まれ、我々の生活が豊かになる一方、従来は考えもしなかった事故や事件が立て続けに起こることになるかもしれません。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が目前に迫り、警察の国際化の必要性は言うまでもありませんが、引き続き、自身の国際対応力の強化に努め、警察の国際化に向けた取組に貢献していきたいと思います。

 
警察活動の最前線 サイバー犯罪対策 写真3
 
埼玉県警察本部刑事部刑事総務課通訳運用係 椎名 美雪(しいな みゆき) 警部

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。



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