第3章 サイバー空間の安全の確保

6 官民連携の推進

サイバー空間の脅威に対処するためには、民間事業者との連携が重要であり、警察では、人事交流や新種の不正プログラムの情報共有枠組みの構築等の各種取組(注)を行っている。

注:サイバーテロ対策協議会については、42頁参照

(1)サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク

警察では、情報窃取の標的となるおそれの高い先端技術を有する事業者等との間で、情報窃取を企図したとみられるサイバー攻撃に関する情報共有を行うサイバーインテリジェンス情報共有ネットワークを構築しており、このネットワークを通じて事業者等から提供された情報を集約するとともに、これらの事業者等から提供された情報及びその他の情報を総合的に分析し、事業者等に対し、分析結果に基づく注意喚起を行っている。

(2)不正プログラム対策協議会

警察では、ウイルス対策ソフト提供事業者等との間で、不正プログラム対策協議会を設置しており、不正プログラム対策に関する情報共有を行っている。特に、警察からは、市販のウイルス対策ソフトで検知できない新たな不正プログラムに関する情報や未知のぜい弱性に関する情報を提供し、情報セキュリティ対策の向上を図っている。

(3)不正通信防止協議会

警察では、セキュリティ監視サービス又はセキュリティ事案に対処するサービスを提供する事業者との間で、サイバーインテリジェンス対策のための不正通信防止協議会を設置しており、標的型メール攻撃等に利用される不正プログラムの接続先等の情報を共有することにより、我が国の事業者等が不正な接続先へ通信を行うことを防止している。

(4)共同対処協定の締結

サイバー犯罪の潜在化の防止、捜査活動の効率化及び再発防止を図るため、警察では、民間事業者等との共同対処協定の締結を推進している。事業者と信頼関係を構築し、サイバー犯罪の警察への通報の促進等を図るため、平成30年末までに、金融機関や仮想通貨交換業者等、全国で585事業者・団体と本協定を締結している。

(5)高度な研究開発を行う大学に対するサイバー攻撃への対策の推進

近年、高度な研究開発を行う大学に対するサイバー攻撃が発生していることから、警察では、当該サイバー攻撃に関する情報収集・分析を強化するとともに、大学と連携し、サイバー攻撃をめぐる最新の情勢や被害防止対策等に関する情報共有、サイバー攻撃の発生を想定した共同対処訓練を実施することなどにより、高度な研究開発を行う大学に対するサイバー攻撃への対処能力の強化を図っている。

(6)事業者等における自主的な被害防止対策の推進

事業者やインターネット利用者等がサイバー犯罪・サイバー攻撃の被害に遭わないよう、警察では、商工会議所、学術機関、地方公共団体等と連携し、事業者等に対して自主的な被害防止対策を促すための広報啓発活動等を実施している。

(7)日本サイバー犯罪対策センターとの連携

我が国における新たな産学官連携の枠組みとして平成26年から業務が開始された一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(JC3(注))においては、産学官の情報や知見を集約・分析し、その結果等を還元することで、脅威の大本を特定し、これを軽減及び無効化することにより、以後の事案発生の防止を図ることとしている。警察では、捜査関連情報等をJC3において共有し、産学におけるサイバーセキュリティに関する取組に貢献するとともに、JC3において共有された情報を警察活動に迅速・的確に活用することにより、安全で安心なサイバー空間の構築に努めている。

注:Japan Cybercrime Control Centerの略

 
図表3-16 日本サイバー犯罪対策センター(JC3)の概要
図表3-16 日本サイバー犯罪対策センター(JC3)の概要

MEMO 重要インフラ事業者との連携

警察では、重要インフラに対するサイバー攻撃に備え、事業者等とも連携した各種取組を実施している。

例えば、福岡県警察では、平成30年10月、G20財務大臣・中央銀行総裁会議等の開催を見据えたサイバー攻撃対策の一環として、九州管区警察局と連携し、空港会社との共同対処訓練を実施した。同訓練の実施に当たっては、同社の基幹システムがサイバーテロを受けたとの想定で、ブラインド方式(注)を採用したほか、同社と共同で作成した想定シナリオを使用し、実際にサイバーテロが発生した場合と同様の対処を行うなど、実践的な内容とすることで、事案対処能力の向上を図った。

注:訓練参加者に対し、事前に想定シナリオの内容を知らせずに実施する訓練

 
サイバーテロの発生を想定した共同対処訓練
サイバーテロの発生を想定した共同対処訓練


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