第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

警察活動の最前線

声と声で繋がる


広島県警察本部地域部通信指令課指令第三係

新田 真悟(にった しんご) 巡査部長

 
メイプル君

ある日、女性が泣きながら110番をかけてきました。

性犯罪被害に遭われたこの女性は、勇気を振り絞り警察に助けを求めてきたのでしょう。顔は見えなくても、声の震えなどから耐え難い恐怖を感じたことが伝わってきます。

私は、犯人を捕まえるために必要な情報や今女性がいる場所を聴取しつつ、女性が少しでも安心し、落ち着くことができるような声かけを心掛けました。

警察官が通報者の元へ到着したことが確認できたので、私が「電話を切ります」と伝えると、女性は「ありがとうございました」と言い、電話を切りました。

声と声だけで繋がる110番通報受理業務は、顔が見えない難しさがあり、通報者の声から事態の切迫性を判断しなければなりません。しかし、顔が見えないことを言い訳にし、対応を疎かにして判断を見誤れば、被害が拡大する事態に発展したり、不要な心の傷を負わせてしまうことにもなりかねません。

私は、通報者に自然と「ありがとうございました」と思ってもらえるような、安心感と落ち着きを与えられる心のこもった110番通報受理を心掛けています。

今後も、助けを求める第一声を聞き取るという重責を担う通信指令業務に誇りを持ち続け、日々の研鑽を継続して業務に当たっていきます。

 
広島県警察本部地域部通信指令課指令第三係 新田 真悟(にった しんご) 巡査部長

人生の最期に携わる捜査員として


京都府警察本部刑事部捜査第一課検視官室検視第一係

坂田 祐子(さかた ゆうこ) 巡査部長

 
ポリスまろん・ポリスみやこ

私が勤務する捜査第一課検視官室は、発見された変死体等が犯罪によるものかどうかを明らかにするため、日々現場臨場し、検視や様々な調査活動を行っています。

現在の所属での勤務を始めて一年目の夏、ある自殺事案を取り扱いました。

猛暑の中、現場での活動は長時間に及びましたが、そこにいたのは日々の慣れから、ただ淡々と業務に当たる自分でした。

その後、検視等が終わり御遺体を母親ら御遺族に引き渡す時のことです。その母親は、御遺体と対面するなり、「一人にしてごめんね。辛かったやろうね。」と御遺体にしがみつきながら、悲痛な表情で語り掛けたのです。

その姿を目の当たりにし、私は、「仕事をただこなすことに、必死になっていた自分の愚かさ」に気付かされました。

私達が犯罪死を見逃せば、被害者の無念は永遠に晴らせられなくなります。ですから私たちは、絶対に犯罪死を見逃すことがないように、検視や調査活動を徹底して行わなければなりません。しかし、それだけではないのです。御遺族の不安を少しでも和らげることができるよう、御遺族の気持ちに寄り添って、できるだけ丁寧な説明や対応を行うことも同じくらい大切だと思います。

私は、あの母親の姿を見て以降、常にこのことを心に留めて検視業務に従事していますし、これからもそうあり続けたいと思っています。

 
京都府警察本部刑事部捜査第一課検視官室検視第一係 坂田 祐子(さかた ゆうこ) 巡査部長

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。



前の項目に戻る     次の項目に進む