トピックス

トピックスV 対日有害活動等の現状と警察の取組

(1)対日有害活動等の現状

北朝鮮は、我が国においても、潜伏する工作員等を通じて活発に各種情報収集活動を行っている。また、朝鮮総聯(れん)(注)は、平成29年中、朝鮮学校への高校授業料無償化制度の適用や補助金支給をめぐる問題等について宣伝活動や要請行動を行うなど、我が国における親朝世論を形成するための活動を活発化させている。

中国は、諸外国において活発に情報収集活動を行っており、我が国においても、先端技術保有企業、防衛関連企業、研究機関等に研究者、技術者、留学生等を派遣するなどして、巧妙かつ多様な手段で各種情報収集活動を行っているほか、政財官学等の関係者に対して積極的に働き掛けを行っているとみられる。特に、最近では、中国政府の関係者が、同国内で深刻化している大気汚染や高齢化等の問題に関して、これらの分野の先端技術を有する我が国の企業を積極的に訪問するとともに、あらゆる機会を通じて、中国への進出を働き掛けるなどの動向がみられる。

ロシアは、その情報機関が世界各地において活発に活動しており、我が国においても活発に情報収集活動を行っている。

注:正式名称を在日本朝鮮人総聯合会という。

(2)警察の取組

① 違法な情報収集活動の取締り

警察では、様々な形で行われる対日有害活動等について、我が国の国益が損なわれることのないよう、平素からその動向を注視し、情報収集・分析等に努めるとともに、違法行為に対して厳正な取締りを行うこととしている。

このような取組の結果、平成28年には北朝鮮関係の諜報事件を新たに検挙しており、同事件の被疑者が、韓国における協力者と連携するなどして、韓国の政界に関する情報を収集するなど、様々な活動を行っていたことが明らかとなった。

② 対北朝鮮措置に関係する違法行為の取締り

我が国は、北朝鮮による拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するため、国際連合安全保障理事会決議に基づく対北朝鮮措置(武器等の輸出入の禁止、人的往来の禁止等)のほか、我が国独自の措置(北朝鮮籍船舶の入港禁止措置、北朝鮮との間の全ての品目の輸出入禁止等)を実施している。警察では、対北朝鮮措置の実効性を確保するため、対北朝鮮措置に関係する違法行為に対し、徹底した取締りを行っており、30年1月までに38件の事件を検挙している。

CASE

貿易会社経営者(41)らは、21年6月18日から北朝鮮を仕向地とした全ての貨物の輸出禁止措置がとられていたにもかかわらず、26年12月から28年1月にかけて、経済産業大臣の承認を受けないで、日用品等を中国・大連を経由して北朝鮮に輸出した。30年1月、同経営者ら2人を外為法(注)違反(無承認輸出)で検挙した(大阪)。

注:外国為替及び外国貿易法

 
貿易会社の無承認輸出事例
③ 大量破壊兵器関連物資等の不正輸出の取締り

我が国は、世界中で利用されている先端技術に関する情報や最先端の高性能製品を数多く有しており、これらの技術情報等の中には、使用方法によっては軍事用途に転用可能なものも含まれる。警察では、官民連携等による技術情報等の流出防止に向けた取組を積極的に行っているほか、29年12月までに、36件の大量破壊兵器関連物資等の不正輸出事件を検挙している。

MEMO 技術情報等の流出防止に向けた官民連携の枠組み

京都府警察では、京都府知事部局、京都市、商工団体、協同組合等との間で、官民連携した技術情報等の流出防止ネットワークである「モノづくり・プリザーブ」、通称「モノ・プリ」を構築しており、京都府警察が運用する電子メールシステムを活用して、民間事業者等からの相談や不審情報の通報等を受け付けているほか、京都府警察から民間事業者等に対して、技術情報等の流出防止に関する情報の提供及び注意喚起を行っている。

また、福島県警察では、福島県知事部局、商工団体等と連携して、「ふくしま技術情報等不正流出防止ネットワーク」、通称「ふくしまPITネット」を構築しており、電子メール等を通じて、技術情報等の流出防止に関する情報を商工団体の傘下企業等に提供しているほか、福島県警察の担当者が個別に企業等を訪問し、技術情報等の流出防止に関する講習を行っている。

 
図表V-1 「モノ・プリ」
図表V-1 「モノ・プリ」
 
図表V-2 「ふくしまPITネット」
図表V-2 「ふくしまPITネット」

CASE

宝飾加工機器製造販売会社の代表取締役(70)らは、武器、大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれの高いものとして、外為法で輸出が規制されている真空誘導炉を、経済産業大臣の許可を受けないで、26年11月、イランに輸出した。29年2月、同代表取締役ら1法人2人を外為法違反(無許可輸出)で検挙した(警視庁)。

CASE

産業廃棄物処理会社の元代表取締役(58)らは、武器、大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれの高いものとして、外為法で輸出が規制されている炭素繊維の製造用装置の部分品である不融化炉等の炉体を、経済産業大臣の許可を受けないで、25年5月から同年8月にかけて、中国に輸出した。29年3月、同元代表取締役ら3人を外為法違反(無許可輸出)で逮捕した(広島、石川、愛知)。

CASE

中国人留学生(22)は、武器、大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれの高いものとして、外為法で輸出が規制されている航空機搭載用赤外線カメラを、経済産業大臣の許可を受けないで、28年5月、中国に輸出した。29年11月、同留学生を外為法違反(無許可輸出)で検挙した(警視庁)。



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