特集 近年における犯罪情勢の推移と今後の展望

4 今後の展望

刑法犯認知件数は平成14年をピークに一貫して減少しており、犯罪情勢には一定の改善がみられる。これは、政府、警察、地方公共団体、民間事業者等が一体となって様々な犯罪対策を推進してきたことなどによるものと考えられる。一方、人身安全関連事案が増加傾向にあることに加え、特殊詐欺の被害が深刻な状況にあり、サイバー空間における脅威も増大しているなど、犯罪情勢は依然として予断を許さない状況にある。これらの治安上の課題は、少子高齢化が進展し、コミュニケーションやビジネスにおける情報通信技術の活用が不可欠となる中で、これまで以上に深刻な問題となることが予想され、警察は、従来とは異なる対策を的確に講じていかなければならない。

人身安全関連事案等の主として個人の私的な関係性や私的領域の中で生じる犯罪については、可能な限り早期の段階で被害を関係機関が認知することが重要であり、そのためには、警察における被疑者の検挙や被害者の保護等とともに、教育、医療、福祉、更生保護分野等における取組の強化が求められていることから、関係機関・団体の取組を促していく必要がある。

特殊詐欺については、最新の犯行手口や被害実態を十分に把握し、新たな捜査手法の活用等による警察の対応力の強化を図るとともに、官民一体となった予防活動を一層推進しなければならない。

サイバー犯罪については、サイバー空間をめぐる情勢の急速な変化を把握し、取締活動を推進して、解析能力の向上等を図るとともに、国境を越えて行われるサイバー犯罪に対処するため、国際連携を一層推進する必要がある。また、官民一体となってサイバー犯罪の実態を把握し、安全で安心なサイバー空間の構築を民間事業者等に働き掛けていくほか、サイバー犯罪の実態を周知することにより、インターネット利用者等の自主的な被害防止活動を促進し、情報セキュリティに関するリテラシーを向上させていくことも重要である。

こうした新たな課題を含め、今後の様々な治安上の課題に的確に対処するためには、これまでの対策を不断に見直すことに加えて、社会情勢の変化に迅速かつ柔軟に対応し、民間事業者等と連携しながら、犯罪情勢分析の高度化、人工知能等の技術の活用、更なる情報発信等、これまでにない手法や知見を積極的に取り入れながら、より効果的かつ効率的な対策を講じていくべきである。



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