第6章 公安の維持と災害対策

第4節 災害等への対処と警備実施

1 自然災害等への対処

(1)自然災害の発生状況と警察活動

① 自然災害の発生状況(注)

29年中は、地震、大雨、台風、強風等により、死者・行方不明者69人、負傷者600人等の被害が発生した。25年から29年にかけての自然災害による主な被害状況は、図表6-16のとおりである。

 
図表6-16 自然災害による主な被害状況の推移(平成25~29年)
図表6-16 自然災害による主な被害状況の推移(平成25~29年)
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29年中は、27個の台風が発生し、うち4個が日本に上陸した。

注:数値は、いずれも平成30年4月末現在のもの

② 平成29年7月九州北部豪雨における警察活動(注)

29年7月5日から同月6日にかけて、梅雨前線及び台風第3号の影響により、九州北部地方を中心に記録的な大雨となり、土砂災害、河川の氾濫等が発生した。特に、福岡県及び大分県において、河川の氾濫により住家や橋が流失するなどして、死者39人、行方不明者2人等の被害が発生した。

警察では、20府県警察から広域緊急援助隊を中心とする警察災害派遣隊延べ3,110人及び警察用航空機(ヘリコプター)延べ42機を福岡県警察及び大分県警察へ派遣し、被害情報の収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索、交通対策等を実施したほか、自動車警ら隊による被災地のパトロールや避難所での女性警察官による相談対応等、被災地における安全安心を確保するための諸活動に当たった。

注:数値は、いずれも30年1月17日現在のもの

 
河川の氾濫現場における行方不明者の捜索活動(福岡県)
河川の氾濫現場における行方不明者の捜索活動(福岡県)
 
避難所での相談対応(大分県)
避難所での相談対応(大分県)

(2)東日本大震災への対応(注)

東日本大震災による被害は、死者1万5,896人、行方不明者2,537人等に上っている。

これまでに、岩手県警察、宮城県警察及び福島県警察に対し、全国から延べ約139万人の警察職員を派遣するとともに、震災から7年が経過した現在も、仮設住宅での防犯活動、行方不明者の捜索活動、避難指示区域等における警戒警ら等を継続して行っている。

注:数値は、いずれも平成30年5月10日現在のもの

 
行方不明者の捜索状況(宮城県)
行方不明者の捜索状況(宮城県)

(3)大規模災害への備え

① 危機管理体制の構築

警察では、東日本大震災をはじめとした大規模災害における反省、教訓を踏まえ、災害に関する危機管理体制を構築するため、組織横断的な取組を行っている。

各都道府県警察においては、災害対処能力の向上や初動態勢の確立のための取組を計画的に進めているほか、南海トラフ地震、首都直下地震等の被害想定や局地的な豪雨による土砂災害等最近における災害の特徴を踏まえつつ、各都道府県の地理的特性に応じた災害対策を推進している。

また、災害対処能力の向上を図るため、初動対処や救出救助訓練、都道府県警察間での合同訓練等を実施しているほか、各種装備資機材の整備を進めている。

MEMO 警察における災害警備訓練

警察庁では、今後発生し得る大規模災害に備えるため、部隊に応じた救出救助訓練基準及び災害警備活動マニュアルを整備し、体系的な災害警備訓練を推進している。

例えば、毎年、各管区警察局等で実施している広域緊急援助隊合同訓練では、警察庁指定広域技能指導官、特別救助班(注)等の指導の下、家屋の倒壊や土砂災害等を再現した現場からの救出救助のほか、夜間における救出救助、広域警察航空隊と連携したホイスト救助、指揮支援班による各部隊の活動の調整等について、過去の災害における教訓を踏まえた訓練を実施している。

注:極めて高度な救出救助能力を必要とする災害現場において、より迅速かつ的確に被災者の救出救助を行うことを主な任務として、平成17年に12都道府県警察の広域緊急援助隊に設置された。29年4月、今後発生が懸念される南海トラフ地震、首都直下地震並びに日本海側及び沖縄県における大規模災害への迅速な対応を可能とするため、千葉県警察、新潟県警察、京都府警察及び沖縄県警察の広域緊急援助隊に新たに設置され、16都道府県警察で約240人の班員が指定されている。

 
夜間における救出救助訓練(神奈川県)
夜間における救出救助訓練(神奈川県)
 
ホイスト救助訓練(埼玉県)
ホイスト救助訓練(埼玉県)
② 今後の災害対策の見直し

警察では、今後発生が懸念される南海トラフ地震、首都直下地震等の大規模災害における措置について、政府における各種計画の策定・見直し等を踏まえ、引き続き、部隊派遣計画等の具体的な検討を進めている。



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