第6章 公安の維持と災害対策

5 大衆運動への警察の対応

警察は、公共の安全と秩序の維持に当たるという警察の責務を遂行するため、大衆運動に伴う違法行為や事故を未然に防止するために必要な警備措置を講ずるとともに、違法行為が発生した際には、捜査等の必要な措置を講ずることとしている。

(1)反基地運動

沖縄県の普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、移設工事の中止等を訴え、移設先であるキャンプ・シュワブ周辺において抗議行動が行われ、工事関係車両への立ち塞がり、道路での座込み、寝そべり等の妨害活動が行われた。平成29年中、同県内の反基地運動に伴って発生した違法行為に関連して、道路交通法違反(道路上の禁止行為)、公務執行妨害罪、暴行罪等で35件、延べ36人を検挙した。

(2)原子力政策をめぐる動向

原子力発電所の再稼働等を捉え、毎週金曜日の首相官邸前における抗議行動をはじめ、大規模な反対集会等が行われ、平成29年5月に福井県の高浜発電所4号機が再稼働した際には、同発電所前等で抗議行動が行われた。同月、ロケット型のペットボトルを同発電所敷地内に向けて発射し、同発電所の警備員にペットボトルの捜索等を余儀なくさせ、正常な業務の遂行を困難にさせた無職の男(32)を威力業務妨害罪で逮捕した(福井)。

 
高浜発電所4号機の再稼働に対する抗議行動(5月、福井)(アフロ)
高浜発電所4号機の再稼働に対する抗議行動(5月、福井)(アフロ)

(3)憲法改正等をめぐる動向

憲法改正をめぐり、平成29年5月3日に都内で行われた抗議行動には、約5万5,000人(主催者発表)が参加した。また、テロ等準備罪の新設等を内容とする組織的犯罪処罰法の改正等をめぐり、同年6月10日に国会議事堂周辺で行われた抗議行動には、約1万8,000人(主催者発表)が参加した。警察では、これらの憲法改正等をめぐる大衆運動に対して必要な警備措置を講じており、29年中、違法行為の検挙や事故の発生はなかった。

 
憲法改正に対する抗議行動(5月、東京)(時事)
憲法改正に対する抗議行動(5月、東京)(時事)

(4)国際会議等の開催をめぐる動向

国内の反グローバリズムを掲げる勢力は、第50回アジア開発銀行(ADB)年次総会が平成29年5月に横浜市で開催されたことを捉え、国内外の諸勢力との連携を図り、抗議行動に取り組んだ(注)

また、29年1月、国内の反グローバリズムを掲げる勢力を含む大衆団体等は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催をめぐり、抗議ネットワークを立ち上げた。同月、同大会の開催に反対するデモにおいて、交通整理に従事していた警察官に暴行を加えた男(37)を公務執行妨害罪で現行犯逮捕した(警視庁)。

注:なお、海外の反グローバリズムを掲げる勢力等は、平成29年(2017年)7月にドイツで開催されたG20ハンブルク・サミットにおいて、約5万人がデモ等に取り組んだ。サミット期間中、一時拘束を含め約400人が逮捕された。

(5)我が国の捕鯨をめぐる動向

過激な環境保護団体「シー・シェパード(Sea Shepherd)」は、和歌山県太地町において、同町に活動家を常駐させてイルカ漁に対する抗議活動を行った。

警察では、和歌山県警察において、太地町特別警戒本部を設置し、同町に設置した臨時交番を拠点に警戒活動を推進するとともに、海上保安庁等との合同警備訓練を実施したほか、法務省入国管理局等と連携して水際対策を推進している。

また、平成29年10月、同県内のテーマパークにおいて、イルカショーが行われているプール内に侵入し、横断幕を掲げるなどしたとして、海外の動物権利団体の活動家の男(32)ら3人を威力業務妨害罪で逮捕した(和歌山)。

 
海上保安庁等との合同警備訓練(8月、和歌山)
海上保安庁等との合同警備訓練(8月、和歌山)


前の項目に戻る     次の項目に進む