第6章 公安の維持と災害対策

3 右翼等の動向と対策

(1)右翼の動向

① 抗議活動の展開

右翼は、平成29年中、領土問題、歴史認識問題等を捉え、活発な街頭宣伝活動等に取り組んだ。

 
右翼の街頭宣伝活動(2月、島根)
右翼の街頭宣伝活動(2月、島根)

中国をめぐっては、中国公船が尖閣諸島周辺の領海に繰り返し侵入していることなどを捉えた活動を行った。北朝鮮をめぐっては、核実験、ミサイル発射、拉致問題等を捉えた活動を行った。韓国をめぐっては、韓国・釜山(プサン)の日本国総領事館前に慰安婦像が設置されたことや竹島問題等を捉えた活動を、ロシアをめぐっては、北方領土問題等を捉えた活動をそれぞれ行った。右翼は、これらの活動により、関係国、日本政府等を批判した。

右翼が上記の街頭宣伝活動等に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、図表6-10のとおりである。

 
図表6-10 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(平成29年)
図表6-10 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(平成29年)
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② 右翼関係事件の状況

29年中、「テロ、ゲリラ」事件の発生はみられなかった。

近年の右翼による違法行為の検挙状況の推移は、図表6-11のとおりである。

 
図表6-11 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成25~29年)
図表6-11 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成25~29年)
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このうち、右翼運動に伴う事件(注)の検挙状況、右翼による恐喝事件や詐欺事件等の資金獲得を目的とした事件の検挙状況並びに右翼及びその周辺者からの銃器押収状況は、図表6-12のとおりである。

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件

 
図表6-12 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成29年)
図表6-12 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成29年)
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(2)右翼対策の推進

① テロ等重大事件の未然防止

警察では、銃器犯罪や資金獲得等を目的とした違法行為に対し、様々な法令を適用した取締りを行い、右翼によるテロ等重大事件の未然防止に努めている。

② 街頭宣伝車対策の推進

警察では、右翼が街頭宣伝車を用いて行う活動のうち、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質なものについては、様々な法令を適用して徹底した取締りに努めている。

 
図表6-13 街頭宣伝活動に対する取締り状況(平成29年)
図表6-13 街頭宣伝活動に対する取締り状況(平成29年)
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街頭宣伝活動に対する取締り状況(2月、新潟)
街頭宣伝活動に対する取締り状況(2月、新潟)

CASE

右翼団体代表(65)ら11人は、平成29年2月、労働組合の全国集会等に対する抗議を目的として、街頭宣伝車による集団示威運動を行うに当たり、新潟県公安委員会から、後続車両の通行の妨げとなるような交通秩序を乱す行為はしないことなどの許可条件が付されていたにもかかわらず、交差点内において、街頭宣伝車5台を約7分間停滞させ、同許可条件に違反した。同年6月、行列行進、集団示威運動に関する条例違反(許可条件違反)で同代表らを逮捕した(新潟)。

CASE

右翼団体代表(33)ら3人は、29年2月、外国公館周辺において、高音を発して静穏を害するような方法で拡声機を使用したため、警察官らから、拡声機の使用をやめるよう是正措置命令を受けたにもかかわらず、引き続き同様の方法で拡声機を使用し、同命令に違反したことから、同代表らを静穏保持法違反で現行犯逮捕した(警視庁)。

(3)右派系市民グループをめぐる情勢と警察の対応

平成29年中、在特会(注)をはじめ、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右派系市民グループは、韓国や北朝鮮との問題等を捉えたデモや街頭宣伝活動等に各地で取り組み、全国におけるデモは約50件に及んだ。

また、右派系市民グループの活動に対して抗議する勢力(以下「反対勢力」という。)が、参加者による過激な言動について、「ヘイトスピーチ」であると批判するなどして、抗議行動に取り組んだ。

警察では、28年6月に施行された本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律を踏まえ、引き続き、右派系市民グループと反対勢力とのトラブルに起因する違法行為の未然防止の観点から、厳正公平な立場で必要な警備措置を講じ、違法行為を認知した場合には、法と証拠に基づき厳正に対処するとともに、警察職員に対する必要な教育を推進することとしている。

注:在日特権を許さない市民の会

 
右派系市民グループのデモ(10月、東京)
右派系市民グループのデモ(10月、東京)


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