第6章 公安の維持と災害対策

2 極左暴力集団の動向と対策

(1)極左暴力集団の動向

暴力革命による共産主義社会の実現を目指している極左暴力集団は、平成29年中も、組織の維持・拡大をもくろみ、暴力性・党派性を隠して大衆運動や労働運動に取り組んだ。

革マル派(注1)は、警察が同年1月に同派議長の本名を公表したことに対し、機関紙において、「笑止千万の妄言」、「デッチあげ」等の主張を行い、組織に影響がないことを訴えた。また、革マル派が相当浸透しているとみられる全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)及び東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)は、JR東労組の組合員らによる組合脱退及び退職強要事件(注2)について、引き続き、同事件を「えん罪」と主張した。

中核派(党中央)(注3)は、昭和46年に発生した警察官殺害事件(渋谷暴動事件)に関し、平成29年6月に殺人罪等で逮捕・起訴された中核派(党中央)非公然活動家である大坂正明及び刑事施設に服役している共犯者の無実等を訴えた。また、労働運動を通じて組織拡大を図る「階級的労働運動路線」を堅持し、中核派(党中央)が主導する国鉄動力車労働組合総連合(動労総連合)の傘下に新たに3団体を結成した。さらに、19年に党中央と分裂した関西地方委員会(関西反中央派)は、反戦・反基地、反原発等を訴える集会やデモ等に参加し、同調者の獲得を図った。

革労協主流派(注4)は、成田闘争を重点に取り組んだ。一方、革労協反主流派(注5)は、反戦・反基地闘争を重点として、反原発闘争にも取り組んだ。

注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。

注2:13年1月21日から同年6月30日頃にかけて、JR東労組の組合員である被疑者7人が、東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。)大宮支社浦和電車区事務所等において、他の労働組合の組合員と行動を共にするなどしたJR東労組の組合員を集団で脅迫し、同組合から脱退させ、JR東日本から退職させた強要事件。なお、本件については、24年に、最高裁が上告棄却を決定し、被告人7人の有罪が確定した。

注3:正式名称を革命的共産主義者同盟全国委員会という。

注4:正式名称を革命的労働者協会(社会党社青同解放派)という。

注5:正式名称を革命的労働者協会(解放派)という。

 
「5・14労働者・学生緊急闘争」(5月、東京)
「5・14労働者・学生緊急闘争」(5月、東京)

(2)極左暴力集団対策の推進

警察では、極左暴力集団に対する事件捜査及び非公然アジト発見に向けたマンション、アパート等に対するローラーを推進するとともに、これらの活動に対する国民の理解と協力を得るため、ポスター等の各種広報媒体を活用した広報活動を推進している。その結果、平成29年中は、3か所の非公然アジトを摘発するとともに、警察庁指定重要指名手配被疑者であった大坂正明をはじめ、極左暴力集団の活動家ら30人を検挙した。

 
捜査への協力を呼び掛ける広報ポスター
捜査への協力を呼び掛ける広報ポスター

CASE

革労協反主流派非公然活動家の男(65)は、25年11月、飛翔弾の発射装置を作動させる時限装置を製造し、飛翔弾を横田飛行場に向けて発射して、同飛行場周辺に着弾・爆発させた。29年7月、同男を爆発物取締罰則違反(製造及び使用)で逮捕した(警視庁)。また、捜査の結果、同男が26年10月頃にも埼玉県内の会社事務所に向けて飛翔弾を発射したことなどが判明したため、29年11月、同男を銃刀法違反(発射)等で再逮捕した(警視庁、埼玉、神奈川)。



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