第6章 公安の維持と災害対策

第3節 公安情勢と諸対策

1 オウム真理教の動向と対策

(1)オウム真理教の動向

オウム真理教(以下「教団」という。)は、麻原彰晃こと松本智津夫への絶対的帰依を強調する「Aleph(アレフ)」をはじめとする主流派と、松本の影響力がないかのように装う「ひかりの輪」を名のる上祐派が活動している。

主流派は、依然として松本を「尊師」と尊称し、同人の「生誕祭」を開催しているほか、肖像写真を拠点施設の祭壇に飾るなど、同人への絶対的帰依を強調する「原点回帰」路線を徹底させている。こうした中、松本の妻が二男の教団復帰を画策し、これに反対する三女が全国の幹部信者に復帰反対を訴えたことに端を発して生じた内紛が継続しており、信者の一部が「Aleph(アレフ)」とは一定の距離を置いて活動している。

一方、上祐派は、同派のウェブサイトに旧教団時代の反省・総括の概要を掲載して、松本からの脱却を強調するなど、松本の影響力がないかのように装って活動しているほか、「開かれた教団」や組織の刷新のアピールに努めている。

なお、平成30年1月、公安審査委員会は、教団に対し、現在も無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があるなどとして、団体規制法(注)に基づき、公安調査庁長官の観察に付する処分の期間を3年間(33年1月末まで)更新する決定を行った。

注:無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律

 
図表6-9 オウム真理教の拠点施設等(平成29年末現在)
図表6-9 オウム真理教の拠点施設等(平成29年末現在)

(2)オウム真理教対策の推進

教団は、依然として松本及び同人の説く教義を基盤とするなど、その本質に変化はないと認められることから、警察では、無差別大量殺人行為を再び起こさせないため、引き続き、関係機関と連携して教団の実態解明に努めるとともに、組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進している。平成29年1月には、公安調査庁の立入検査に際し、団体の活動状況を明らかにするために必要な検査対象物件の確認を受けず、携行品を教団施設外に持ち出し、検査を困難な状況にしたとして、団体規制法違反(検査忌避)で主流派出家信者5人を逮捕した(愛知)。また、同年11月には、主流派信者が、教団名を隠しながら仏教に関する勉強会の勧誘活動を行い、入会契約を被勧誘者と締結した際に、契約書等の必要な書面を交付しなかったとして、特定商取引に関する法律違反(申込書面交付義務違反)で主流派の拠点施設等を捜索した(北海道)。

さらに、地域住民の平穏な生活を守るため、教団施設周辺の地域住民や関係する地方公共団体からの要望を踏まえるなどして、教団施設周辺におけるパトロール等の警戒警備活動を行っているほか、地下鉄サリン事件等教団による一連の凶悪事件に対する記憶の風化を防止するとともに、教団の現状について適切な理解を得るため、各種機会を通じ、教団の現状等について広報活動を行っている。

 
教団施設周辺における警戒警備活動状況
教団施設周辺における警戒警備活動状況


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