第5章 安全かつ快適な交通の確保

警察活動の最前線

高齢運転者の交通事故防止のために


千葉県警察本部交通部運転免許本部免許課高齢者講習係

椿 浩明(つばき ひろあき) 警部補

 
シーポック
シーポック

臨時高齢者講習とは、特定の交通違反を犯した高齢者の中で、臨時認知機能検査の結果から、認知機能が低下していると認められた方に受講してもらうものです。この講習では、受講者本人に認知機能の低下を自覚してもらい、認知機能に応じた安全な運転行動ができるよう、安全確認の方法等を指導しているのですが、実際に講習を受講していただくために電話で連絡をすると、「何で行かないといけないんだ!」「試験で落ちたら免許がなくなってしまうの?」などと、怒りや不安の言葉を口にされる方も多くいらっしゃいます。車が生活の一部である方にとっては、運転ができるか否かは死活問題なのです。

受講者の多くは、最初は大変緊張しており、笑顔もありません。しかし、実際に自分の運転した映像を見ながら指導を受けると、「止まったつもりだったのにね」、「確認不足だね」と言いながら自分の運転に足りない部分を確認し、多くの方が講習終了時には「ありがとう、勉強になりました」と言って、笑顔で帰られます。

また、受講者の一人から「歳を取ると体が思い通りに動かないのよ。この気持ち分かる?」と言われた経験から、認知症の方や身体が不自由な方の特性をより深く理解するため、介護職員初任者研修を受講し、少しでも受講者の立場を理解して、効果的なアドバイスを行うことを心掛けています。

今後も高齢運転者による交通事故を一件でも減らせるよう工夫しながら講習に取り組んでいきたいと思います。

 
千葉県警察本部交通部運転免許本部免許課高齢者講習係 椿 浩明(つばき ひろあき) 警部補

絶対に捕まえる


愛知県警察本部交通部交通捜査課交通鑑識係

山縣 薫(やまがた かおる) 巡査長

 
コノハけいぶ
コノハけいぶ

私は、以前警察署で勤務していたとき、青信号で横断歩道を渡っていた小学生が犠牲となる凄惨な交通死亡事故の捜査に従事しました。その時、交通死亡事故の被害者が、心の準備ができないまま、ある日突然人生に終止符を打たれてしまうという理不尽さに怒りを感じるとともに、被害者と遺族のため、交通事故現場で身を粉にして鑑識活動を行う交通捜査員の姿に憧れ、交通捜査部門を希望しました。

私の現在の担当業務は、悪質で卑劣なひき逃げ事件の現場に残された僅かな資料から、逃走車両を割り出し、犯人を捕まえることです。

現所属に着任して間もない頃、県内で死亡ひき逃げ事件が発生し、多くの捜査員が現場に臨場しましたが、唯一の手掛かりは、長さ5センチメートルほどの黒色のプラスチック片一つでした。

これまで当県警が収集・蓄積してきたあらゆる車両の膨大なパーツデータを検索しては、現場に残されたプラスチック片と照合する作業が数日間続き、多数のパーツデータと照合しても一致せず、心が折れそうになることもありました。しかし、被害者の無念を思い、諦めずに照合作業を続けた結果、ようやく現場資料と一致するパーツを確認し、容疑車両の車種を特定することができたのです。そして、その後の速やかな捜査により、犯人を特定し、逮捕することができました。

尊い人命が奪われる悲惨な死亡ひき逃げ事件。被害者の無念と遺族の深い悲しみを思えば、現場に残された証拠がほんの小さなパーツ一つであったとしても、犯人を「絶対に捕まえる」という強い気持ちが私を駆り立て、日々任務に取り組んでいます。

 
愛知県警察本部交通部交通捜査課交通鑑識係 山縣 薫(やまがた かおる) 巡査長

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。



前の項目に戻る     次の項目に進む