第5章 安全かつ快適な交通の確保

4 自転車の安全利用の促進

(1)自転車関係交通事故の状況

自転車関係交通事故件数は減少傾向にあるものの、依然として交通事故発生件数の約2割を占めている。平成29年中の自転車乗用中死者数(注)は480人と、前年より29人(5.7%)減少したが、法令違反別にみると、自転車側の約8割に何らかの法令違反があり、中でも、運転操作不適及び安全不確認が多い。

注:自転車乗用中死者数は、第1・2当事者以外の当事者を含むため、必ずしも自転車乗用中死者(第1・2当事者)数と一致しない。

 
図表5-22 自転車乗用中死者(第1・2当事者)数の推移(平成20~29年)
図表5-22 自転車乗用中死者(第1・2当事者)数の推移(平成20~29年)
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(2)良好な自転車交通秩序の実現のための対策

警察では、平成29年5月に施行された自転車活用推進法等を踏まえつつ、関係機関・団体等と連携して、自転車の安全利用の促進を図っている。

① 自転車通行環境の確立

警察では、歩行者、自転車及び自動車のいずれも安全かつ適切に通行できるよう、道路管理者と連携して、自転車専用の走行空間(自転車専用通行帯(注1)及び自転車道(注2))を整備するとともに、普通自転車(注3)の歩道通行を可能とする交通規制の実施場所の見直し(注4)等を通じて自転車と歩行者の安全確保を図っている。

注1:交通規制により指定された自転車専用の車両通行帯

注2:縁石線や柵等の工作物によって分離された自転車専用の走行空間

注3:車体の大きさと構造が一定の基準に適合する二輪又は三輪の自転車で、他の車両を牽(けん)引していないもの

注4:道路交通法では、普通自転車は車道通行が原則とされているところ、道路標識等により歩道通行を可能とする交通規制を実施することができるが、幅員3メートル未満の歩道においては、歩行者の通行量や保育施設等の存在といった沿道環境等を総合的に勘案し、当該交通規制を原則廃止する方針に基づく見直しを実施している。

 
自転車専用通行帯の設置例(大阪府高槻市)
自転車専用通行帯の設置例(大阪府高槻市)
② 自転車利用者に対するルール等の周知徹底

警察では、地方公共団体、学校、自転車関係事業者等と連携し、「自転車安全利用五則」(注)を活用するなどして、全ての年齢層の自転車利用者に対して、自転車は車道通行が原則であることなどの自転車の通行ルール等の周知を図っている。

また、ルールを守らなかった場合の罰則や交通事故発生の危険性、交通事故の加害者となった場合の責任の重大性、損害賠償責任保険への加入の必要性等の周知を図るとともに、交通事故の被害を軽減するための対策として、ヘルメットの着用や幼児を自転車に乗車させる場合のシートベルトの着用の促進を図っている。

注:「自転車は、車道が原則、歩道は例外」、「車道は左側を通行」、「歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行」、「安全ルールを守る(飲酒運転・二人乗り・並進の禁止、夜間はライトを点灯及び交差点での信号遵守と一時停止・安全確認)」及び「子供はヘルメットを着用」を内容とし、19年7月に中央交通安全対策会議(交通安全対策基本法により、内閣府に置かれ、内閣総理大臣を会長とし、関係する大臣等を委員とする会議)交通対策本部で決定された「自転車の安全利用の促進について」において、自転車の通行ルールの広報啓発に当たって活用することとされたもの

③ 自転車安全教育の推進

警察では、関係機関・団体等と連携して、児童・生徒や高齢者等に対する自転車安全教育を推進しており、教育内容の充実を図っている。29年中、児童・生徒や高齢者等を対象に、自転車シミュレーターを活用するなどした参加・体験・実践型等の自転車教室を全国で約4万6,000回開催し、約500万人が受講した。

④ 自転車利用者に対する指導取締りの推進

警察では、自転車指導啓発重点地区・路線(注)を中心に、自転車利用者の無灯火、二人乗り、信号無視、一時不停止等に対し、指導警告を行うとともに、悪質・危険な交通違反に対しては検挙措置を講ずるなど、厳正に対処している。

また、交通の危険を生じさせるおそれのある一定の違反行為を反復して行った自転車の運転者を対象とする自転車運転者講習を実施しており、29年中は122人が受講した。

注:自転車関係交通事故の発生状況、地域住民の苦情・要望等を踏まえ、全国1,838か所(29年末現在)を指定し、自転車利用者に対する街頭における指導啓発活動等を推進している。

 
図表5-23 自転車利用者に対する指導取締り状況(平成29年)
図表5-23 自転車利用者に対する指導取締り状況(平成29年)
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