第5章 安全かつ快適な交通の確保

2 交通事故の分析

交通事故防止対策を一層効果的かつ効率的に推進していく上で前提となるのが交通事故分析であり、警察では、いわゆるPDCAサイクルにより、高度かつ精緻な分析に基づいた交通安全教育、交通規制、交通指導取締り等の対策を推進している。

(1)高齢運転者による死亡事故

平成29年中の75歳以上の自動車等(注1)の運転者による死亡事故件数は前年より減少し、死亡事故件数全体に占める割合は前年より低下した。しかし、過去10年間では、前者は横ばいで推移しており、後者は上昇傾向にある。

また、第1当事者(注2)の年齢層別運転免許人口10万人当たり死亡事故件数をみると、75歳以上の運転者によるものは減少傾向にあるものの、75歳未満の運転者によるものと比べて2倍以上の水準で推移しており、依然として75歳以上の運転者が死亡事故を起こしやすい状況にある。

注1:自動車、自動二輪車及び原動機付自転車

注2:交通事故の当事者のうち最も過失が重い者

 
図表5-9 75歳以上の自動車等の運転者による死亡事故件数等の推移(平成20~29年)
図表5-9 75歳以上の自動車等の運転者による死亡事故件数等の推移(平成20~29年)
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図表5-10 自動車等の運転者(第1当事者)の年齢層別運転免許人口10万人当たり死亡事故件数の推移(平成20~29年)
図表5-10 自動車等の運転者(第1当事者)の年齢層別運転免許人口10万人当たり死亡事故件数の推移(平成20~29年)
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29年中の75歳以上の自動車等の運転者による死亡事故は、人的要因別では、操作不適が最も多く、中でも、ブレーキとアクセルの踏み違いの占める割合が6.2%と、75歳未満の運転者によるものに比べて高いことなどが明らかとなっている。

 
図表5-11 自動車等の運転者(第1当事者)の人的要因別死亡事故件数の内訳(平成29年)
図表5-11 自動車等の運転者(第1当事者)の人的要因別死亡事故件数の内訳(平成29年)
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CASE

大阪府警察では、従来からGIS(地理情報システム)を活用し(注)、高齢者が関係する交通事故が多発する地域を中心に交通安全教育等の対策を実施しているところ、その効果を検証した結果、効果が不十分なケースがみられたことから、詳細に分析を行い、交通事故当事者の進行方向にある商業施設や居住地域において交通安全教育等の対策を実施するなど、PDCAサイクルによる対策を推進している。

注:道路形状に交通規制、交通指導取締り等の対策や交通事故発生状況等を重ね合わせて表示させることで、これまで明らかでなかったこれらの相関を解明し、より効果的な交通安全対策の企画・立案等を行っている。

 
GISを活用した交通事故分析(大阪府警察作成)
GISを活用した交通事故分析(大阪府警察作成)

(2)自転車が関係する交通事故

自転車が関係する交通事故(以下「自転車関係交通事故」という。)件数は減少傾向にあるものの、交通事故発生件数全体に占める割合は横ばいで推移しており、平成29年中は19.1%と、前年より0.9ポイント上昇した。

また、自転車関係交通事故の相手当事者別件数はいずれも減少傾向にあるが、対歩行者事故件数については減少幅が小さく、29年中は、前年より増加した。

 
図表5-12 自転車関係交通事故件数の推移(平成20~29年)
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図表5-13 自転車関係交通事故件数の相手当事者別指数の推移(平成20~29年)
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29年中の自転車関係交通事故において自転車乗用中であった者のうち、ヘルメットを着用していなかった者の致死率(注1)は、ヘルメットを着用していた者に比べて3倍以上高いなど、頭部の損傷が重大事故につながりやすくなっている。

また、29年中の自転車の運転者による対歩行者死亡重傷事故(注2)については、約半数が24歳以下の運転者によるものであり、損害賠償責任保険等の加入が確認された運転者は、60.5%であった。

注1:死傷者数に占める死者数の割合

注2:自転車が第1当事者であって、相手当事者が歩行者である交通事故のうち、当該歩行者が死亡又は重傷の被害が生じた交通事故

 
図表5-14 自転車乗用中のヘルメット着用・非着用別致死率(平成29年)
図表5-14 自転車乗用中のヘルメット着用・非着用別致死率(平成29年)
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