トピックス

トピックスII ストーカー規制法の改正を踏まえたストーカー事案への対応について

(1)ストーカー規制法(注1)の改正

近年、多様なストーカー事案が発生し、ストーカー事案の相談等件数は増加傾向にある(注2)

平成25年6月に成立したストーカー規制法の一部を改正する法律附則第5条により、政府は、ストーカー行為等の規制等の在り方を検討するための協議会の設置等の措置を講ずることとされた。これを踏まえ、警察庁では、同年11月から、有識者や被害関係者等から構成される有識者検討会を開催し、26年8月に「ストーカー行為等の規制等の在り方に関する報告書」が取りまとめられた。28年12月、第192回国会において、同報告書の提言を踏まえたストーカー規制法の一部を改正する法律が成立し、29年6月14日までに全面施行された。

注1:ストーカー行為等の規制等に関する法律
注2:102頁参照
 
図表II-1 ストーカー規制法の改正の概要
図表II-1 ストーカー規制法の改正の概要

当該改正後のストーカー規制法(以下「改正ストーカー規制法」という。)は、加害者の行為が激化し、事態が急展開して重大事件に発展するおそれが大きいなどのストーカー事案の特徴を踏まえ、加害者に対し、警察がより迅速に行政措置又は検挙措置を講ずることを可能とするものであり、被害者の身体、自由及び名誉に対する危害の防止が更に図られることとなっている。

 
図表II-2 改正ストーカー規制法に基づく措置の流れ
図表II-2 改正ストーカー規制法に基づく措置の流れ

事例

中学校講師の男(23)は、29年1月、元交際相手の女性に対し、拒まれたにもかかわらず、SNSのメッセージ機能を利用してメッセージを連続して送信するなどのストーカー行為をした。同月、同男を改正ストーカー規制法違反で逮捕した(秋田)。

事例

会社員の男(43)は、29年1月、元交際相手の女性に対し、同女性の勤務先周辺を自動車を運転してみだりにうろつくなどのストーカー行為をした。同月、同男を改正ストーカー規制法違反で逮捕した(宮城)。

(2)ストーカー対策の推進

改正ストーカー規制法では、国及び地方公共団体の責務として、ストーカー行為等の被害者に対する措置及びストーカー行為等の防止等に資するための措置が明記された。警察では、関係機関・団体と連携しつつ、以下の取組を推進している。

① 被害者等の一時避難等の支援

警察では、平成27年度から、危険性・切迫性が高い事案の被害者等の安全を確保するため、緊急・一時的に被害者等を避難させる必要がある場合に、ホテル等の宿泊施設を利用するための費用について、公費で負担することとしている(注)

注:202頁参照
② ストーカー加害者への対策

警察では、26年度から、ストーカー加害者に対する精神医学的・心理学的アプローチに係る調査研究を実施してきたところ、その結果を踏まえ、28年度から、警察が加害者への対応方法やカウンセリング・治療の必要性について地域精神科医等の助言を受け、加害者に受診を勧めるなど、地域精神科医療機関等との連携を推進している。

事例

茨城県警察では、28年5月、地域精神科医療機関等との間で、相互に連携してストーカー加害者に対するカウンセリング、治療等の適切な措置を講ずることを内容とした「ストーカー加害者に対する精神医学的治療に関する覚書」を締結し、ストーカー加害者への対策に関する連携を推進している。

 
覚書の調印式の様子
覚書の調印式の様子
③ ストーカー行為に関する広報啓発の推進

警察では、若年層のストーカー被害を防止するため、高校生、大学生等を対象に、イラスト等を用いてストーカー被害の態様を説明した教材(パンフレット、DVD等)を作成し、当該教材を活用した防犯教室等を開催しているほか、警察庁においてポータルサイト(注)を作成し、ストーカー事案に関する情報を発信している。

注:https://www.npa.go.jp/cafe-mizen
 
被害者向けリーフレット
被害者向けリーフレット


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