トピックス

トピックスI サイバー犯罪・サイバー攻撃への被害防止対策

サイバー犯罪(注1)・サイバー攻撃(注2)が多発し、その手口が巧妙化・多様化する中、被害防止対策の重要性が高まっている。警察では、積極的にその手口等に関する情報を発信するとともに、民間事業者や外国捜査機関等と連携し、様々な被害防止対策を推進している。

注1:高度情報通信ネットワークを利用した犯罪やコンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪等の情報技術を利用した犯罪
注2:130頁参照

(1)警察からの情報発信

警察では、犯罪捜査の過程で得たサイバー犯罪・サイバー攻撃の手口等に関する情報を積極的に発信することで、これらの被害に遭わないよう呼び掛けている。警察庁では、一般のインターネット利用者に向けたサイバーセキュリティのためのポータルサイト「“サイバーポリスエージェンシー”」(注)において、サイバー犯罪・サイバー攻撃の情勢や手口に関する情報等を公開し、適切な被害防止対策を講ずるよう注意喚起を行っている。このほか、各都道府県警察においても、ウェブサイトやSNS等を通じた情報発信により、被害の防止を図っている。

注:https://www.npa.go.jp/cybersecurity/
 
「“サイバーポリスエージェンシー”」
「“サイバーポリスエージェンシー”」

事例

警察庁サイバーフォースセンター(注)は、平成28年10月、インターネットに接続されたデジタルビデオレコーダー、ウェブカメラを始めとする家電等の機器を標的とする不正プログラム「Mirai」の感染の拡大について、注意喚起を行った。

注:140頁参照

事例

警視庁は、28年10月、不正送金に関するウイルスが添付されたメールを配信する不正プログラムの一つを解析し、同不正プログラムの指令サーバから同不正プログラムに感染したコンピュータに対して、同ウイルスが添付されたメールを配信させる指令が送られた段階で、その内容を把握するシステムを構築した。警察庁及び警視庁では、同年11月から、同ウイルスが添付されたメールの件名等の情報をSNS等を通じて発信している。

 
SNSによる情報発信(イメージ)
SNSによる情報発信(イメージ)

(2)官民の連携による取組

サイバー犯罪・サイバー攻撃による被害を防止するためには民間事業者との連携が重要であり、警察では、一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(JC3)(注)と連携し、被害防止のための情報発信を行っているほか、サイバー攻撃の標的となるおそれのある事業者等と共同対処訓練を行うなど、官民の連携による様々な被害防止対策を講じている。

注:145頁参照

事例

警察庁は、平成28年5月から同年7月にかけて、徳島県警察等によるインターネットバンキングに係る不正送金事犯の捜査の過程において得られた、インターネットバンキングのID・パスワード、クレジットカード情報等を窃取することを目的に作成された不正プログラムに関する情報を基に、JC3と連携して分析等を行い、同不正プログラムの感染経路等を特定した。また、同年6月には、外国捜査機関と連携し、同不正プログラムに感染したコンピュータと接続していた指令サーバの機能を停止させるとともに、JC3では、ウェブサイトに同不正プログラムに関する注意喚起情報を掲載し、インターネット利用者等に対して適切な対策を呼び掛けた。

事例

埼玉県警察では、28年3月、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えたサイバー攻撃対策の一環として、競技会場となる施設と共同対処訓練を実施した。同訓練では、サイバー攻撃によって同施設の職員の業務用コンピュータが不正プログラムに感染したことを想定し、当該事案が発生した際の対応手順等について確認した。また、不正プログラムに感染したコンピュータが遠隔操作される様子を実演するなどして、サイバー攻撃の脅威について説明した。

 
共同対処訓練の状況
共同対処訓練の状況

(3)外国捜査機関等と連携した取組

サイバー空間の脅威への対処には、国際的な取組が求められるところ、警察では、平素から外国捜査機関等と緊密に連携し、国際的な被害防止対策を実施している。

事例

外国のサーバに開設された、実在する企業のウェブサイトを装ったウェブサイト、インターネットショッピングを利用した詐欺や偽ブランド品の販売を目的とするウェブサイト等による犯罪被害を防止するため、警察庁では、犯罪捜査の過程で把握したこうしたウェブサイトに関する情報のウイルス対策ソフト事業者等に対する提供に加え、平成28年7月から、ウェブブラウザ事業者等が加盟するAPWG(注)に対しても、同情報の提供を開始した。これにより、ウイルス対策ソフト等を導入していないインターネット利用者が、こうしたウェブサイトを閲覧しようとする際に、コンピュータ画面に警告表示を行うことが可能となった。

注:Anti-Phishing Working Groupの略。平成15年(2003年)に米国で設立された、国際的なフィッシング対策の非営利団体

事例

インターネットバンキングに係る不正送金事犯に利用されているとみられる不正プログラムが世界的に蔓(まん)延していることから、28年11月、ドイツを中心に関係国の捜査機関等が連携し、同不正プログラムを利用した不正送金事犯の被疑者を検挙するとともに、同不正プログラムの指令サーバを押収するなどの国際的な取組が実施された。警察庁では、ドイツの捜査機関等から提供された情報に基づき、関係機関・団体と連携して、インターネットバンキングの利用者等に対し、同不正プログラムによって窃取されたID・パスワードの変更等を促すとともに、国内の同不正プログラムに感染したコンピュータの利用者に対し、同不正プログラムの除去等に関する情報提供を行っている。

 
図表I-1 インターネットバンキングに係る不正送金事犯の国際的な被害防止対策の概要
図表I-1 インターネットバンキングに係る不正送金事犯の国際的な被害防止対策の概要


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