3 国際組織犯罪に対処するための取組
(1)国内関係機関との連携
警察では、事前旅客情報システム(APIS)(注)等を活用して関係機関と連携した水際対策を行っている。法務省入国管理局との間では、被疑者が国外に逃亡するおそれのある場合の手配や、偽装滞在者等に対する合同摘発を行うなど連携を図っている。また、税関との間では、不正輸出入を防止するための合同摘発を行うなど連携を図っている。
(2)外国捜査機関等との連携
複数の国・地域において犯罪を敢行する国際犯罪組織に対処するためには、関係国の捜査機関等との情報交換、捜査協力等が不可欠であり、警察では次のような取組を進めている。
① ICPOを通じた国際協力
ICPOは、各国の警察機関を構成員とし、犯罪の捜査における国際的な協力を目的とした機関であり、平成29年3月末現在で190の国・地域が加盟している。ICPOでは、国際犯罪に関する情報の収集と交換、犯罪対策のための国際会議の開催や国際手配書の発行等が行われている。警察庁は、捜査協力の実施のほか、ICPOが開催する国際組織犯罪対策に関連する様々な会合への参加、事務総局等への職員の派遣、分担金の拠出等により、ICPOの活動に貢献している。

第85回ICPO総会(©INTERPOL)
また、フランスに本部を置く事務総局の機能を補完する組織として平成27年(2015年)4月に設置されたシンガポール総局(IGCI)(注)は、ますます巧妙かつ複雑になるサイバー犯罪に対抗するための研究や訓練を行うことを目的として設立された組織であり、初代総局長に警察庁から派遣された職員が就任している。
IGCIでは、サイバー犯罪対策、サイバーセキュリティ対策、加盟国の警察官やICPO職員の訓練等を行うこととされている。
② 外国捜査機関との捜査協力
警察庁では、ICPOルートのほか、外交ルート、刑事共助条約(協定)(注)を活用して、外国捜査機関に対して捜査協力を要請するなどしている。
また、外国捜査機関との間で開催される二国間協議等に積極的に参加し、連携の強化を図っている。
事例
ナイジェリア人の男(47)らは、26年5月から27年10月にかけて、米国等において敢行した詐欺事件における詐取金を日本国内の金融機関に開設した日本人名義の口座に送金させた上、正当な取引による送金であるかのように装って当該詐取金を引き出し、現金合計約5億6,000万円をだまし取った。米国との間で刑事共助条約を活用するなどし、29年2月までに、ナイジェリア人6人及び日本人9人を組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)及び詐欺罪で逮捕した(大阪、新潟、滋賀、兵庫)。
(3)国外逃亡被疑者等(注1)の追跡
国外逃亡被疑者等の数の推移は、図表4-19のとおりである。
警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、法務省入国管理局に手配するなどして、出国前の検挙に努めている。また、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関との捜査協力を通じ、被疑者の所在確認等を行っており、所在が確認された場合には、犯罪人引渡条約(注2)等に基づき被疑者の引渡しを受けるなどして、確実な検挙に努めている。
このような取組の結果、平成28年中は、出国直前の外国人被疑者17人のほか、国外逃亡被疑者90人(うち外国人34人)を検挙した。
このほか、事案に応じ、国外逃亡被疑者等が日本国内で行った犯罪に関する資料等を逃亡先国の捜査機関に提供するなどして、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促し、犯罪者の「逃げ得」を許さないための取組を進めている。
注2:214頁参照
事例
26年12月、我が国において中国(台湾)人の女性からクレジットカード等を強取し、同女性を死亡させた中国(台湾)人の女(41)が犯行後に出国した。ICPOを通じて台湾警政署と情報交換を行った結果、同女は台湾において逮捕・起訴され、27年12月、本件について懲役14年8か月の刑が確定した(茨城)。
