第6章 公安の維持と災害対策

第3節 災害等への対処と警備実施

1 自然災害等への対処

(1)自然災害の発生状況と警察活動

平成27年中は、地震、大雨、台風及び強風により、死者・行方不明者14人、負傷者467人等の被害が発生した。23年から27年にかけての自然災害による主な被害状況は、図表6-7のとおりである。

 
図表6-7 自然災害による主な被害状況の推移(平成23~27年)
図表6-7 自然災害による主な被害状況の推移(平成23~27年)
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27年中は、27個の台風が発生し、うち4個が日本に上陸した。同年9月9日から11日にかけて、台風及び前線の影響により、関東地方と東北地方で記録的な大雨となった(「平成27年9月関東・東北豪雨」)。また、同年5月には口永良部島が噴火し、全島民に避難指示が出された。

① 平成27年9月関東・東北豪雨

27年9月9日から11日にかけて、台風及び前線の影響により、関東地方と東北地方で記録的な大雨となった。特に、10日から11日にかけて、栃木県、茨城県及び宮城県に大雨特別警報が発表され、茨城県において鬼怒川の堤防が決壊するなどして、死者8人、負傷者77人等の被害が発生した。

警察では、13都県警察から広域緊急援助隊を中心とする警察災害派遣隊延べ約3,000人を茨城県警察へ派遣したほか、警察用航空機(ヘリコプター)延べ36機を茨城県警察及び宮城県警察へ派遣し、被害情報の収集、被災者の救出救助等を実施した。

これらの活動により、警察では、茨城県、宮城県及び栃木県において、600人以上を救助した。

 
ボートによる救出救助活動(茨城県)
ボートによる救出救助活動(茨城県)
 
家屋2階からの救出救助活動(宮城県)
家屋2階からの救出救助活動(宮城県)
② 口永良部島の噴火

27年5月29日午前9時59分、鹿児島県の口永良部島が噴火し、噴火警戒レベル(注)がレベル3(入山規制)からレベル5(避難)に引き上げられ、全島民に島外への避難指示が出され、負傷者1人の被害が発生した。

鹿児島県警察では、警察用航空機等の活用による被害情報の収集、住民の避難誘導、避難区域の残留者確認、避難所における相談対応等の活動を実施した。

注:火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と防災機関や住民等がとるべき対応を5段階に区分して発表する指標
 
避難所での相談対応(鹿児島県)
避難所での相談対応(鹿児島県)

コラム 東日本大震災への対応(注)

東日本大震災による被害は、死者1万5,894人、行方不明者2,558人等に上っている。

これまでに、岩手県警察、宮城県警察及び福島県警察に対し、全国から延べ約134万人の警察職員を派遣するとともに、震災から5年が経過した現在も、仮設住宅での防犯活動、行方不明者の捜索活動、避難指示区域等における警戒警ら等を継続して行っている。

注:数値はいずれも平成28年5月10日現在のもの
 
行方不明者の捜索状況(福島県)
行方不明者の捜索状況(福島県)

(2)大規模災害への備え

① 危機管理体制の再構築

警察では、東日本大震災における反省・教訓を踏まえ、災害に係る危機管理体制を再構築するため、組織横断的な取組を行っている。

各都道府県警察においては、災害対処能力の向上や初動態勢の確立のための取組を計画的に進めているほか、南海トラフ地震、首都直下地震等の被害想定や局地的な豪雨による土砂災害等最近における災害の特徴を踏まえつつ、各都道府県の地理的特性に応じた災害対策を推進している。

また、災害対処能力の向上を図るため、初動対処や救出救助訓練、都道府県警察間での合同訓練等を実施しているほか、各種装備資機材の整備を進めている。

 
広域緊急援助隊合同訓練(香川県)
広域緊急援助隊合同訓練(香川県)
② 災害警備訓練施設の運用

警察庁では、大規模な地震や大雨等による土砂災害等、我が国における災害の特性を踏まえ、より災害現場に即した環境で体系的・段階的な救出救助訓練を実施するための災害警備訓練施設を整備し、平成28年度から運用を開始した。

 
災害警備訓練施設における訓練
災害警備訓練施設における訓練
③ 今後の災害対策の見直し

警察では、今後発生が懸念される南海トラフ地震、首都直下地震等の大規模災害における措置について、政府における各種計画の策定・見直し等を踏まえ、引き続き、部隊派遣計画等の具体的な検討を進めている。



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