第6章 公安の維持と災害対策

5 大衆運動の動向

警察は、公共の安全と秩序の維持に当たるという警察の責務を遂行するため、大衆運動に伴う違法行為や事故を未然に防止するために必要な警備措置を講ずるとともに、違法行為が発生した際には、捜査等の必要な措置を講ずることとしている。

(1)平和安全法制をめぐる動向

平和安全法制をめぐり、平成27年5月中旬から国会議事堂周辺等において、断続的に抗議行動が行われた。参議院での採決前の同年8月30日には、国会議事堂周辺等における抗議行動に約12万人(主催者発表)が参加した。

(2)反戦・反基地運動

沖縄県の普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、移設計画の撤回や工事中止等を訴え、キャンプ・シュワブゲート前等で抗議行動が行われた。平成27年5月17日に那覇市内で開催された集会には、約3万5,000人(主催者発表)が参加したほか、都内では国会議事堂周辺等において抗議行動が行われた。

(3)原子力政策をめぐる動向

原子力発電所の再稼動等を捉え、毎週金曜日の首相官邸前における抗議行動を始め、全国各地で反対集会、デモ等が行われた。とりわけ、国内全ての原子力発電所の運転が停止する中、平成27年8月に川内原子力発電所が再稼動した際には、川内原子力発電所の正門前等で集会、デモが行われ、同年8月9日の集会等には、約2,000人(主催者発表)が参加した。

(4)国際会議等を捉えた反グローバリズム等の社会運動

平成27年6月開催のG7エルマウ・サミット(ドイツ)では、エルマウ周辺でG7に反対する活動家ら約3,600人がデモを行い、一部の活動家が警察部隊と衝突した。ミュンヘンでは、約3万4,000人がデモに取り組んだ。サミット期間中、一時拘束を含め70人以上が逮捕された。

 
ドイツ・エルマウでの抗議(6月)(EPA=時事)
ドイツ・エルマウでの抗議(6月)(EPA=時事)

(5)我が国の捕鯨を取り巻く国内外の動向

過激な環境保護団体「シー・シェパード(Sea Shepherd)」は、和歌山県太地町において、イルカ漁に対する抗議活動を行った。警察では、警戒活動を推進し、法務省入国管理局等と連携して水際対策を強化しており、平成27年中、シー・シェパード関係者7人が上陸拒否された。

また、シー・シェパードは、我が国が行う南極海における鯨類科学調査に対し、過激な妨害活動に取り組んできたが、27年2月から3月にかけて行われた科学調査に対しては、我が国が目視による調査のみとし、捕獲を中止していたことから、妨害活動は行われなかった。同年12月に実施された捕獲を伴う新たな科学調査に対しては、抗議船を南極海に派遣したが、調査船団を発見できず、結果として妨害活動は行われなかった。

 
活動家に職務質問する警察官
活動家に職務質問する警察官

(6)雇用問題を捉えた運動

全国労働組合総連合(全労連)は、労働者派遣法や労働基準法等の改正に反対する運動に取り組み、平成27年5月の第86回中央メーデーで「時給1,000円以上、全国一律最賃制の実現」、「安倍「暴走」政治ストップ」等のスローガンを掲げて集会及びデモを行った。



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