第2節 サイバー空間の脅威への対処
1 総合的なサイバーセキュリティ対策の強化
情報通信技術の進展と共に、サイバー空間では次々と新たなサービスや技術が現れており、その利便性が向上している反面、これらを悪用したサイバー犯罪・サイバー攻撃の手口も日々新たなものが現れている。警察では、こうしたサイバー空間の脅威に的確に対処するべく総合的な対処能力の強化を図っている。
(1)サイバーセキュリティ対策の司令塔機能の強化
サイバー空間の脅威への対処は警察のいずれの部門にとっても大きな課題となっており、統一的な戦略の下で警察全体の対処能力を強化する必要があることから、警察庁では、サイバーセキュリティ対策全般の司令塔としての機能を強化するため、サイバーセキュリティの確保に向けた各種取組の総括・調整を行う長官官房審議官及び長官官房参事官を設置している。同審議官及び同参事官は、
・ サイバーセキュリティ戦略の策定
・ サイバー空間の脅威への総合的な対処方針の策定
・ 捜査員等の人材育成に関する指針の立案
・ 民間事業者、外国機関等との連絡の総括
・ サイバー空間の情勢の総合的な分析
・ 部門横断的な捜査支援・技術支援の調整
・ 装備資機材の効果的な整備・活用の調整
といった取組を推進している。

(2)警察におけるサイバーセキュリティ戦略の制定
警察庁では、社会情勢等の変化に的確に対応しつつ、サイバー空間の脅威に先制的かつ能動的に対処するため、平成27年9月、「警察におけるサイバーセキュリティ戦略」を制定した。警察では、同戦略に基づき、サイバー空間の脅威への対処に係る組織基盤を強化するなど、警察組織の総合力を発揮した効果的な対策を推進していくこととしている。

(3)サイバー空間の脅威への対処に係る組織基盤の強化
① サイバー空間の脅威への対処に係る人材育成
警察では、サイバー空間の脅威への対処に係る人的基盤を強化するため、平成27年12月に策定した「サイバー空間の脅威への対処に係る人材育成方針」に基づき、職員の採用・登用、教養・研修、キャリアパスの管理等を部門横断的かつ体系的に実施することで、サイバー空間の脅威への対処に係る人材の裾野の拡大及び能力の向上を図ることとしている。

② サイバーセキュリティ対策研究・研修センターの取組
警察大学校に設置されているサイバーセキュリティ対策研究・研修センターは、解析研究室と捜査研修室の2室で構成され、両室は相互に連携しつつ、以下の取組を実施している。
ア 情報技術の解析の高度化・効率化に資する研究
解析研究室においては、サイバー犯罪等に悪用され得る最先端の情報通信技術に関する研究及び各種電子機器等の解析手法の確立に向けた研究を行うとともに、警察外部の機関との共同研究を行うなど、警察・民間双方の知見を融合・活用した研究活動を行っている。
イ サイバー空間における警察全体の対処能力向上に必要な研修
捜査研修室においては、解析研究室で得られた研究成果を活用しつつ、全国の都道府県警察においてサイバー犯罪対策やサイバー攻撃対策に専従する捜査員を始めとする全部門の捜査員を対象に、実際の事案を想定した高度かつ実践的な訓練等を行っている。
