第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

2 事件・事故への即応

交番、駐在所等の警察官は、事件、事故等が発生した際、直ちに現場に向かい、被疑者の逮捕等の措置を執っている。警察では、警察官が迅速に現場に駆けつけられるよう、110番通報の受理や警察署等への指令を行うシステムを整備するとともに、パトカー等の活用による機動力の強化に努めている。

(1)110番通報

平成27年中の110番通報受理件数(注)は、約923万件と前年より約12万件減少した。これは約3.4秒に1回、国民約13.8人に1人の割合で通報したことになる。また、携帯電話等の移動電話からの110番通報が69.9%を占め、過去最高を記録した。

警察では、110番通報の適切な利用の促進のため、事件・事故等の緊急の対応を必要とする場合にはためらわずに110番通報を利用する一方、緊急の対応を必要としない相談等の通報については「♯9110」番や各種相談電話を利用するよう呼び掛けている。

注:無応答、いたずら、かけ間違い等は計上していない。
 
図表2-75 110番通報受理件数の推移(平成18~27年)
図表2-75 110番通報受理件数の推移(平成18~27年)
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(2)通信指令

① 通信指令システム

110番通報に迅速かつ的確に対応するため、都道府県警察には通信指令室が設けられている。110番通報を受理した通信指令室では、直ちに通報内容を警察署等に伝え、地域警察官を現場に急行させるとともに、必要に応じて緊急配備(注1)の発令等を行っている。平成27年中の緊急配備の実施件数は、前年と比べ850件(10.9%)減少し、6,936件となった。

また、27年中に警察本部の通信指令室で直接受理した110番通報に対するリスポンス・タイム(注2)の平均は、7分6秒であった。

警察では、増加する携帯電話等からの110番通報に的確に対応するため、携帯電話等で110番通報した際に、音声通話と同時に発信者の位置情報が通知されるシステム(位置情報通知システム)を全都道府県警察において運用するなど通信指令システムの高度化を図っている。

注1:重要事件等が発生した際に、迅速に被疑者を検挙するため、警戒員を配置して行う検問、張り込み等
注2:通信指令室が110番通報を受理し、パトカーに指令してから警察官が現場に到着するまでの所要時間
 
通信指令室
通信指令室
② 携帯型端末を活用した初動警察活動

警察では、音声通信機能及びデータ通信機能を有する携帯型端末を整備し、各都道府県警察において運用している。

同端末の活用により、通信指令室で受理した110番通報の内容、各種事案の現場で撮影した画像、GPSで測位された警察官の位置情報等の情報を、通信指令室、警察署及び現場の警察官が組織的に共有し、的確な初動警察活動に当たっている。

 
図表2-76 携帯型端末の概要(代表例)
図表2-76 携帯型端末の概要(代表例)
③ 外国語による110番通報への対応

警察では、日本語を解さない者からの110番通報への適切な対応が図られるよう、外国語に通じた警察官を通信指令室に配置するほか、通訳センター等の警察職員を含めた三者通話を行うなどして対応している(注)

注:42頁参照

(3)初動警察活動の強化

① 通信指令を担う人材の育成強化

警察では、110番通報の受理、指令及び無線報告の技能を競う全国通信指令・無線通話技能競技会を開催するなど、通信指令技能の向上を目的とした教育訓練を行うとともに、通信指令の知識・技能に関する検定制度を設け、組織的な人材育成に努めている。

また、卓越した通信指令の技能を有する者として選抜された、警察庁指定広域技能指導官や都道府県警察の技能指導官等が、実践的な指導等を通じて後進の育成に当たっている。

 
全国通信指令・無線通話技能競技会
全国通信指令・無線通話技能競技会
② 実践的な訓練の実施

警察では、事案対応能力の更なる強化を図るため、無差別殺傷事件その他の重大事案の発生を想定した実践的かつ効果的な訓練を継続的に実施している。

 
無差別殺傷事件を想定した訓練
無差別殺傷事件を想定した訓練

(4)鉄道警察隊の活動

鉄道警察隊は、平成27年6月に発生した新幹線内における放火等事件を受け、鉄道事業者等との連携をより一層緊密にしつつ、列車内における警乗(注1)、駅等の鉄道施設及びその周辺のパトロールや警戒警備を行っているほか、痴漢(注2)、すり、置き引き等の犯罪の予防及び検挙を行っている。また、痴漢の被害に遭った女性から相談を受理した場合は、女性に同行して身辺の警戒を行うなどしている。

注1:列車内における公安の維持を図るため、警察官が列車に乗務して、列車内における犯罪の予防、被疑者の検挙、事故の防止等に当たること。
注2:いわゆる迷惑防止条例における、卑わいな行為等を禁止する規定に係る検挙件数及び検挙人員は、「痴漢」、「のぞき見」、「下着等の撮影」、「透視によるのぞき見」、「透視による撮影」、「通常衣服を着けない場所における盗撮」及び「(その他)卑わいな言動」の区分により各都道府県警察に報告を求めているが、そのうち「痴漢」として報告を受け、集計した数値を示したもの
 
列車警乗
列車警乗
 
図表2-77 痴漢事犯の検挙状況等の推移(平成23~27年)
図表2-77 痴漢事犯の検挙状況等の推移(平成23~27年)
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事例

平成27年2月、警戒活動中の鉄道警察隊員が、乗客の所持品を物色している不審な男(33)の動向を注視していたところ、同男が電車内で女性の乗客が所持していたリュックサックから財布を抜き取るのを現認したことから、同男を窃盗罪で現行犯逮捕した(大阪)。

(5)パトカー及び警察用船舶の活用

警察では、全国の警察本部や警察署に配備したパトカーを活用して、管内のパトロールを行うとともに、事件・事故等の発生時における初動措置を執っている。また、全国に配備された警察用船舶を活用し、通信指令室やパトカーと連携の上、事件・事故発生時の情報の収集、交通情報の収集等を行っている。

 
パトカー
パトカー
 
警察用船舶
警察用船舶

事例

平成27年8月、福岡県と合同で密漁に対する取締りに従事していた警察署の船舶警ら係員が、北九州市沖合において操業していた漁船の乗員の男(65)に対して職務質問を実施したところ、登録票を備えずに海産物を捕獲していたことなどが判明したため、同年11月、同男を漁船法違反(登録票船内不備付)等により検挙した(福岡)。

(6)警察用航空機の活用

警察では、ヘリコプターテレビシステム(ヘリテレ)やホイスト救助装置(注)等の各種資器材が装備された警察用航空機(ヘリコプター)を全国に配備しており、通信指令室やパトカーと連携し、その機動力をいかしたパトロール、被疑者の追跡、災害や重大事件発生時におけるヘリテレを活用した情報収集、被災者の救助及び被災地への人員物資の緊急輸送等を行っている。

注:航空機の機外に装着した電動装置を用いて、ワイヤーで人や物を昇降させるための装置
 
警察用航空機
警察用航空機

事例

平成27年3月、覚せい剤取締法違反により指名手配され、自動車で逃走する男(51)をヘリコプターで発見し、パトカーとともに追跡を開始した。ヘリコプターがヘリテレを活用して逃走状況を通信指令室に逐次報告するとともに、パトカーを的確に誘導したことにより、男を確保した(三重)。

事例

平成27年9月関東・東北豪雨において、甚大な被害が発生した茨城県及び宮城県に対して、13都県警察からヘリコプターを応援派遣した。ヘリテレを活用してリアルタイムに被災状況の情報収集を行うとともに、ホイスト救助装置を活用して被災者222人を救助した。

 
救助活動
救助活動

コラム 山岳遭難に対する警察活動

平成27年中の山岳遭難の発生件数は2,508件、遭難者数は3,043人(うち死者・行方不明者は335人)であった。

警察では、関係機関・団体等と連携の上、ヘリコプター等を活用して遭難者の捜索救助に当たるとともに、増加傾向にある山岳遭難の防止を図るため、山岳パトロール、広報啓発活動等を実施している。

 
図表2-78 山岳遭難発生件数(平成23~27年)
図表2-78 山岳遭難発生件数(平成23~27年)
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山岳における訓練状況
山岳における訓練状況


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