第2章 生活安全の確保 

2 事件・事故への即応

交番、駐在所等の警察官は、事件、事故等が発生した際、直ちに現場に向かい、被疑者の逮捕等の措置を執っている。警察では、警察官が迅速に現場に駆けつけられるよう、110番通報の受理や警察署等への指令を行うシステムを整備するとともに、パトカー等の活用による機動力の強化に努めている。

(1)110番通報

平成25年中の110番通報受理件数(注)は、約941万件と前年より約6万件増加し、依然として高い水準にある。これは約3.3秒に1回、国民約14人に1人の割合で通報したことになる。また、携帯電話等の移動電話からの110番通報が67.7%を占め、過去最高を記録した。

これらの110番通報のうち、緊急の対応を必要としない各種照会、要望・苦情・相談等の通報が23.9%を占めていることから、警察では、そのような緊急の対応を必要としない通報には「#9110」番を利用するよう呼び掛け、適切な110番通報の利用を促している。

注:無応答、いたずら、誤接等は計上していない。

 
図表2-38 110番通報受理件数の推移(平成16年~25年)
図表2-38 110番通報受理件数の推移(平成16年~25年)
Excel形式のファイルはこちら

(2)通信指令

① 通信指令システム

110番通報に迅速かつ的確に対応するため、都道府県警察には通信指令室が設けられている。110番通報を受理した通信指令室では、直ちに通報内容を警察署等に伝え、地域警察官を現場に急行させるとともに、必要に応じて緊急配備(注1)の発令等を行っている。平成25年中の緊急配備の実施件数は8,312件(前年比1,209件減少)であった。

また、25年中に警察本部の通信指令室で直接受理した110番通報に対するリスポンス・タイム(注2)の平均は、6分57秒であった。

警察では、増加する携帯電話等からの110番通報に的確に対応するため、携帯電話等で110番通報した際に、音声通話と同時に発信者の位置情報が通知されるシステム(位置情報通知システム)を全都道府県において運用するなど通信指令システムの高度化を図っている。

注1:重要事件等が発生した際に、迅速に被疑者を検挙するため、警戒員を配置して行う検問、張り込み等

注2:通信指令室が110番通報を受理し、パトカー等に指令してから警察官が現場に到着するまでの所要時間

 
通信指令室

通信指令室


事例

25年6月、東京都練馬区内で発生した男子小学生3人に対する刃物使用殺人未遂事件において、110番通報を受理した警視庁が直ちに緊急配備を行うとともに、警視庁から広域緊急配備の依頼を受けた埼玉県警察が緊急配備を行った結果、約30分後に被疑者(47)を発見し、銃刀法違反及び殺人未遂罪で逮捕した(警視庁)。

② 地域警察デジタル無線システム

警察では、音声通信のみであった従来の無線システムに代えて、高度化した音声通信機能及びデータ通信機能を有する地域警察デジタル無線システムを整備し、23年3月から各道府県警察(注)において順次運用を開始した。

同システムの整備により、通信指令室で受理した110番通報の内容、各種事案の現場で撮影した画像、GPSで測位された警察官の位置情報等の情報を、通信指令室、警察署及び現場の警察官が組織的に共有することが可能となった。

注:警視庁及び岡山県警察においては、独自のデータ端末を整備・使用している。

 
図表2-39 地域警察デジタル無線システムの概要
図表2-39 地域警察デジタル無線システムの概要
③ 通信指令を担う人材の育成強化

警察では、110番通報の受理や指令の技能を競う通信指令競技会を開催するなど、通信指令技能の向上を目的とした教育訓練を行うともに、通信指令の知識・技能に関する検定制度を設けて、組織的な人材育成に努めている。

また、卓越した通信指令の技能を有する者として選抜された、警察庁指定広域技能指導官や都道府県警察の技能指導官等が実践的な指導等を通じて後進の育成に当たっている。

 
全国通信指令・無線通話技能競技会

全国通信指令・無線通話技能競技会


(3)初動警察活動の強化

① 通信指令機能の強化等

警察庁では、平成20年から初動警察刷新強化の取組を進めてきており、現在はその定着化に努めている。また、国家公安委員会では、21年9月、「警察通信指令に関する規則」を制定し、通信指令室が初動警察における司令塔としての役割を果たすことができるよう、その位置付けや権限を明確化するとともに、通信指令を行う際の組織的活動、人材の育成、関係都道府県警察の連携等の原則を定めた。これらを受けて、都道府県警察では、通信指令機能の強化や、事案対応能力の強化等に重点的に取り組んでいる。

② 実践的な訓練の実施

警察では、事案対応能力の向上を図るため、無差別殺傷事件その他の重大事案の発生に際して行われることとなる一連の警察活動に関する実践的な訓練を継続的に実施している。

 
無差別殺傷事件を想定した訓練

無差別殺傷事件を想定した訓練


(4)鉄道警察隊の活動

鉄道警察隊は、列車内における警乗(注1)、駅等の鉄道施設及びその周辺のパトロールや警戒警備を行い、痴漢、すり、置き引き等の犯罪の予防及び検挙を行っている。また、痴漢の被害に遭った女性から相談を受理した場合は、女性に同行して身辺の警戒を行うなどしている。

注1:列車内における公安の維持を図るため、警察官が列車に乗務して、犯罪の予防、被疑者の検挙、事故の防止等に当たること

 
図表2-40 痴漢事犯の検挙状況の推移(平成21年~25年)
図表2-40 痴漢事犯の検挙状況の推移(平成21年~25年)
Excel形式のファイルはこちら

注2:各都道府県警察のいわゆる迷惑防止条例のうち、卑わいな行為等を禁止する規定に係る検挙件数及び検挙人員は、「痴漢」、「のぞき見」、「下着等の撮影」、「透視によるのぞき見」、「透視による撮影」、「通常衣服を着けない場所における盗撮」及び「(その他)卑わいな言動」の区分により報告を求めているが、そのうち「痴漢」として都道府県警察から報告を受け、集計した数値を示したもの

(5)パトカー及び警察用船舶の活用

警察では、全国の警察本部や警察署に配備したパトカーを活用して、管内のパトロールを行うとともに、事件・事故等の発生時における初動措置を執っている。また、全国に警察用船舶を約160隻配備し、通信指令室やパトカーと連携させ、水上パトロール、事件・事故発生時の情報の収集、交通情報の収集、事故や災害発生時の捜索救難活動等を行っている。

 
パトカー

パトカー

 
警察用船舶

警察用船舶


事例

平成25年5月、東京都江東区内の運河において「人が落水し溺れている」との通報を受け、警視庁は、警察用船舶を出動させた。強風波浪注意報が発令されている中、捜索に当たったところ、水面に仰向けになりながら救助を求めている男性(30)を発見したことから、直ちに当該男性を引き上げるとともに、毛布で同人の体を覆い保温措置に努めながら救急隊に引き継いだ(警視庁)。

(6)警察用航空機の活用

エンジンの複数搭載による飛行能力等の向上及びヘリコプターテレビシステム(ヘリテレ)の高性能化に伴い、警察用航空機(ヘリコプター)の有効性はますます高まっている。警察では、全国にヘリコプターを約80機配備し、通信指令室やパトカーと連携させてその機動力をいかしたパトロールを始め、災害や重大事件発生時におけるヘリテレを活用した情報収集、被災地への人員物資の緊急輸送、被疑者の追跡等を行っている。

 
警察用航空機

警察用航空機


事例①

平成25年7月、山口県北部における豪雨による土砂災害において、山口県警察航空隊はヘリコプターを出動させ、ヘリテレを活用してリアルタイムで詳細な被災状況について情報収集を行った(山口)。

事例②

25年5月、岐阜県内において、ガソリン代を払わず立ち去った男(37)に対して警察官が職務質問をしようとしたところ、男がこれを振り切り、パトカーに車両を衝突させて隣接する愛知県まで逃走する事案が発生した。岐阜県警察航空隊は、ヘリコプターを出動させて上空から追跡を行い、愛知県警察との緊密な連携の下、男を公務執行妨害罪で逮捕した(岐阜、愛知)。

コラム⑨ 山岳遭難に対する警察活動

増加傾向にある山岳遭難に対処するため、警察では、関係機関・団体等と連携の上、ヘリコプター等を活用して、遭難者の捜索救助に当たるとともに、広報啓発活動、山岳関連情報の提供、パトロール等を実施している。

 
図表2-41 山岳遭難発生件数(平成21年~25年)
図表2-41 山岳遭難発生件数(平成21年~25年)
Excel形式のファイルはこちら

事例③

25年12月、富士山において、山岳遭難事案が発生したことから、静岡県警察航空隊はヘリコプターを出動させ、厳しい気象状況の中、山岳遭難救助隊と連携しつつ、捜索救助活動を行い、生存していた遭難者(61)ら3人をつり上げ救助した(静岡)。

 
警察用航空機による救助活動※写真は事例のものとは異なる

警察用航空機による救助活動※写真は事例のものとは異なる


 第3節 地域住民の安全・安心確保のための取組

前の項目に戻る     次の項目に進む