2 暴力団犯罪の取締り
(1)検挙状況
暴力団構成員等の主要罪種別検挙人員の推移は、図3-2のとおりである。暴力団構成員等の総検挙人員のうち、覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及びノミ行為等
(注)(以下「伝統的資金獲得犯罪」という。)の検挙人員が占める割合は、3割程度で推移しており、これらが有力な資金源となっていると言えるが、近年、窃盗及び詐欺の検挙人員が増加傾向であることから、暴力団が資金獲得活動を変化させている状況もうかがわれる。
(2)企業を対象とした加害行為事案及び対立抗争事件等
平成23年中、企業を対象とした加害行為事案で暴力団等によるとみられる(暴力団構成員等によるもの又は暴力団の関与がうかがわれるもの。以下同じ。)ものは、表3-3のとおり27件発生しており、これらの犯行には銃器や爆発物等が用いられるなどしている。
また、対立抗争事件及び銃器発砲事件のうち暴力団等によるとみられるものの発生事件数等の推移は、表3-4のとおりである。23年中、新たな対立抗争事件の発生はなかったものの、18年に発生した道仁会と九州誠道会との対立抗争の再燃に伴う不法行為が13回発生し、8人が死傷した。さらに、銃器発砲事件のうち暴力団等によるとみられるものは33件発生し、これにより12人が死傷した。
事例①
太州会幹部(55)らは、23年2月、福岡県内の建設会社の事務所に向けて拳銃を発射し、同事務所のドアや外壁等を損壊するなどした。同年10月、同人らを銃刀法違反及び建造物損壊罪で逮捕した(福岡)。
事例②
道仁会傘下組織幹部(58)は、23年4月、佐賀県内の病院出入口において、九州誠道会の幹部らを銃撃して殺傷した。同年7月、同人を殺人罪、殺人未遂罪等で逮捕した(佐賀)。
(3)資金獲得犯罪
警察では、多様化・不透明化する暴力団の資金獲得活動に関する情報を収集・分析するとともに、社会情勢の変化に応じた暴力団の資金獲得活動の動向にも留意しつつ、各種の事業活動に進出している暴力団や共生者等に対する取締りを推進している。
① 社会経済情勢の変化に応じた資金獲得犯罪
暴力団は、企業や行政機関を対象とした不当要求、振り込め詐欺、強盗、窃盗のほか、最近の経済不況下における各種公的給付制度を悪用した詐欺等、時代の変化に応じて様々な資金獲得犯罪を行っている。
事例①
会津小鉄会傘下組織構成員(60)は、生活保護費をだまし取ろうと企て、暴力団構成員であることを隠し、暴力団構成員としての活動に従事するため就業するつもりがないのに「派遣切りに遭い、失業することとなった。現在は求職活動を行っており、面接に行く予定もある」と嘘を言うなどして、平成21年3月から22年7月にかけて生活保護費約370万円をだまし取った。23年3月、同人を詐欺罪で逮捕した(滋賀)。
② 経済活動を装った資金獲得犯罪
暴力団は、実質的にその経営に関与している暴力団関係企業を通じ、又は共生者と結託するなどして、暴力団の威力を背景としつつ、一般の経済取引を装い、貸金業法違反、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反等様々な資金獲得犯罪を行っている。
事例②
弘道会直系組織幹部(38)は無登録で貸金業を営み、20年10月から21年12月にかけて、法定利息を上回る利息を受け取っていた。23年2月、同人を貸金業法違反及び出資法違反で逮捕した(愛知)。
コラム① 山口組・弘道会対策
1 弘道会の概要
現在の山口組組長が昭和59年に立ち上げた山口組の傘下組織で、主たる事務所は愛知県名古屋市にある。
現在の山口組は、弘道会の初代会長が六代目の組長、二代目の弘道会会長が若頭
(注1)となっており、弘道会が山口組の主要な地位を押さえている状態にある
(注2)。
2 山口組・弘道会集中取締り等対策の推進
暴力団対策上、一極集中状態にある山口組の弱体化が急務であり、そのためには、山口組の強大化を支える弘道会の弱体化を図ることが不可欠である。警察では、組織を挙げて山口組・弘道会及びその傘下組織に対する取締り等を推進している。23年中は、山口組直系組長17人、弘道会直系組長19人、弘道会系直系組織幹部42人を検挙した。
事例③
弘道会直系組長(51)は、18年7月、クレジットカードをだまし取ろうと企て、無職であるにもかかわらず、定職を有し継続的に収入を得ているように装ってクレジットカードをだまし取った。23年5月、同人を詐欺罪で逮捕した(愛知)。
事例④
弘道会直系組長(45)は、21年4月、地区の再開発事業に伴う解体工事に自己の影響下にある企業を参入させるため、開発関係者を「こんなもん潰そうと思ったら簡単やぞ。できんようにしてしまうぞ」などと脅迫し開発関係者に自己の影響下にある企業を参入させるよう強要した。23年6月、同人を強要罪で逮捕した(岐阜)。