第4章 公安の維持と災害対策

2 大量破壊兵器関連物資等の不正輸出

(1)大量破壊兵器関連物資等の不拡散についての国際的な取組

平成22年4月、オバマ米国大統領の提唱により、米国・ワシントンにおいて核セキュリティサミットが開催され、参加した47か国は、今後、核物質の不正取引を防止するための国家間の情報共有等の更なる取組を進めていくこととなった。

警察では、大量破壊兵器(核兵器、生物兵器及び化学兵器)及びその運搬手段としてのミサイル並びにその関連物資及び技術(以下「大量破壊兵器関連物資等」という。)の拡散が国際社会における安全保障上の重大な脅威となっていることを踏まえ、各国が主催するPSI(注)阻止訓練に都道府県警察のNBC テロ対応専門部隊を派遣するなど、国際的な取組にも積極的に参加している。

ワシントンで開催された核セキュリティサミット(時事)

ワシントンで開催された核セキュリティサミット(時事)

注:Proliferation Security Initiative(拡散に対する安全保障構想)の略。国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器、ミサイル及びそれらの関連物資の拡散を阻止するために、国際法及び各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとり得る移転及び輸送の阻止のための措置を検討・実践する取組のことで、90か国以上が、PSI の活動の基本原則や目的に対する支持を表明している。

(2)不正輸出の取締り

警察では、我が国からの大量破壊兵器関連物資等の不正輸出に対する取締りを積極的に推進しており、これまでに、不正輸出事件を26件(平成23年6月1日現在)検挙している。

また、これまで検挙した事件において、第三国を経由した迂回輸出の実態が確認されるなど、不正輸出の手口が更に悪質・巧妙化していくことが懸念されるところ、警察では、国内外の諸情勢を的確に把握・分析するとともに、国内関係機関との緊密な連携、外国治安機関との情報交換等を通じて、大量破壊兵器関連物資等の不正輸出に対する取締りを更に徹底することとしている。

事例

貿易会社社長らは、大量破壊兵器の開発等に使用されるおそれがあるものとして、経済産業大臣により外為法に基づき輸出許可を要するとの通知を受けていたパワーショベル1台を、同大臣の許可を受けないで、21年4月、中国経由で北朝鮮向けに不正に輸出したことから、22年6月、外為法違反(無許可輸出)で検挙した(福岡・熊本)。

不正に輸出されたパワーショベル(6月、福岡)

不正に輸出されたパワーショベル(6月、福岡)


第2節 外事情勢と諸対策

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