第4章 公安の維持と災害対策

第3節 公安情勢と諸対策

1 オウム真理教の動向と対策

(1)オウム真理教の動向

オウム真理教は、平成19年5月、主流派(「Aleph(アレフ)」)と上祐派(「ひかりの輪」)とに内部分裂した。

主流派は、依然として麻原彰晃こと松本智津夫を「尊師」と尊称し、同人の「生誕祭」を開催したり、肖像写真を拠点施設の祭壇に飾ったりするなど、同人への絶対的帰依を強調する「原点回帰」路線をより一層強めている。

一方、上祐派は、ウェブサイトに旧教団時代の反省・総括の概要を掲載したり、これまでの公安調査庁による立入検査において同派施設から松本の教義に関する教材が発見されていない状況を公表したりして、松本の影響力がないかのように装って活動するとともに、拠点施設周辺の住民に対し同派への理解を得るための説明会の開催を呼び掛けるなど、「開かれた教団」のアピールに努めている。同派は、今後も無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づく観察処分の適用回避に全力を挙げるものとみられる。

図4―9 オウム真理教の拠点施設等(平成23年6月1日現在)

(2)オウム真理教対策の推進

警察庁指定特別手配被疑者の平田信、高橋克也及び菊地直子の3人は依然として逃走中である。平成22年4月に施行された刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律により、地下鉄サリン事件(殺人、同未遂)の時効が廃止されるとともに、公証役場事務長逮捕監禁致死事件の時効が延長された。また、これらの事件が捜査特別報奨金制度の対象事件として新たに指定されたことにより、22年11月から、3人の検挙等に結び付く有力な捜査情報の提供者に、被疑者1人につき、従来の懸賞金200万円と合わせた500万円(上限額)が支払われることになった。警察は、3人の発見検挙を全国警察を挙げて取り組むべき最優先課題の一つとし、広く国民からの協力を得ながら、継続して捜査を推進している。

また、警察では、無差別大量殺人行為を再び起こさせないため、関係機関と連携して教団の実態解明に努めるとともに、教団施設周辺の地域住民や関係する地方公共団体からの要望を踏まえ、地域住民の平穏な生活を守るため、教団施設周辺におけるパトロール等の警戒警備活動を実施している。

警察庁指定特別手配被疑者

警察庁指定特別手配被疑者


第3節 公安情勢と諸対策

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