第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤整備

1 捜査力の強化

(1)捜査手法、取調べの高度化への取組

捜査においては、取調べに過度に頼ることなく、他の捜査手法によって得られる客観的証拠をより重視していく必要があり、これらの捜査手法、取調べ等の課題について、国家公安委員会委員長が主催し、大学教授、弁護士等の部外有識者から成る「捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会」等において、抜本的な調査・研究を行っている。

コラム〔3〕 「捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会」における中間報告

平成23年4月、「捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会」において、発足後おおむね1年間の議論を整理し、以後の検討課題を明らかにするため、中間報告が取りまとめられた。この中間報告においては、取調べの可視化を既に実施している諸外国では、我が国にはない様々な捜査手法を有する一方、我が国における取調べは、諸外国に比べ真相解明上の意義・役割が大きいこと、また、諸外国においては、我が国に比べ人口当たりの犯罪認知件数・逮捕人員が多く、無罪率が高いことなどが明らかにされた。

同研究会においては、中間報告の内容を踏まえつつ、捜査構造全体の中での取調べの機能、取調べの高度化・可視化の在り方及び取調べ以外の捜査手法の高度化について、引き続き検討を行っている。

(2)初動捜査体制の整備、鑑識活動の強化等

事件発生時には、迅速・的確な初動捜査を行い、犯人を現場やその周辺で逮捕し、又は現場の証拠物や目撃者の証言等を確保することが重要である。

警察では、機動力を生かした捜査活動を行うため、警視庁及び道府県警察本部に機動捜査隊を設置し、事件発生時に現場や関係箇所に急行して犯人確保等を行っているほか、機動鑑識隊(班)や現場科学検査班等を編成し、現場鑑識活動を強化するとともに、関連技術の研究開発や資機材の開発・整備を推進している。

図1―25 初動捜査体制の整備、鑑識活動の強化等

(3)法務省との情報の共有

警察庁と法務省は、子ども対象・暴力的性犯罪の出所者、凶悪重大犯罪等の出所者、所在不明の仮釈放者及び保護観察付執行猶予者等による再犯の防止等を図るため、両省庁間で所要の情報を共有し、連携を図る仕組みを構築している。警察では、子ども対象・暴力的性犯罪の出所者について、平成17年6月の運用開始から22年末までに839人分、凶悪重大犯罪等の出所者について、17年9月の運用開始から22年末までに約14万7千人分の出所情報の提供を法務省から受けている。

図1―26 警察庁と法務省における情報の共有と連携

(4)国民からの情報提供の促進

警察では、犯罪捜査に不可欠な国民の理解と協力を得るため、国民に対し、都道府県警察のウェブサイトを活用して情報提供を呼び掛けるほか、様々な媒体を活用して、聞き込み捜査に対する協力、事件に関する情報の提供等を広く呼び掛けている。また、必要に応じ、被疑者の発見・検挙や犯罪の再発防止のため、被疑者の氏名等を広く一般に公表して捜査を行う公開捜査を行っている。

さらに、警察庁では、平成19年度から、国民からの情報提供を促進し、重要犯罪等の検挙の徹底を図ることを目的として、捜査特別報奨金制度(公的懸賞金制度)を導入し、警察庁ウェブサイト(http://www.npa.go.jp)等で対象となる事件等について広報している。

警察庁ウェブサイト

警察庁ウェブサイト

(5)検視体制の強化

平成22年中に警察が取り扱った死体数は約17万体であり、過去10年間で約1.4倍に増加している。

警察においては、死体取扱数の急増に的確に対応し、適正な検視業務を推進するため、検視官(注)及びその補助者の増員、検視業務に携わる警察官に対する教育訓練の充実、資機材の整備による検視体制の強化を推進している。

図1―27 死体取扱数の推移(平成13~22年)

注:原則として、刑事部門における10年以上の捜査経験又は捜査幹部として4年以上の強行犯捜査等の経験を有する警視の階級にある警察官で、警察大学校における法医専門研究科を修了した者から任用される検視の専門家であり、全国で268人(23年4月1日現在)配置されている。

コラム〔4〕 犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する調査・研究

我が国の死因究明制度は、現状では、国際的にみて必ずしも十分なものとは言い難く、近年においても、犯罪死を見逃したケースも見受けられた。このため、警察庁では、法医学者、刑事法学者等の有識者から成る研究会を設置し、在るべき死因究明制度について検討を行うとともに、警察庁職員を海外に派遣するなどして、フィンランド等諸外国の死因究明制度について調査・研究を行い、その結果を23年4月、最終報告として取りまとめて公表した。

第12回研究会の状況

第12回研究会の状況


第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤整備

前の項目に戻る     次の項目に進む