第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

8 食の安全に係る事犯、保健衛生事犯等

(1)食の安全に係る事犯

平成22年中の食の安全に係る事犯(注1)の検挙状況は表1―6のとおりであり、食品としての販売が禁止されている疾病にかかった牛の肉を販売した事犯や、表示を偽装して輸入元を隠蔽した事犯の検挙が見られた。

表1―6 食の安全に係る事犯の検挙状況の推移(平成18~22年)

注1:食品衛生関係事犯(食品衛生法違反)及び食品の産地等偽装表示事犯(不正競争防止法違反等)

事例〔1〕

牛内臓販売業者(72)は、22年2月、食肉販売業者に対し、肝膿瘍等の疾病にかかり、食品としての販売が禁止されている牛の肝臓2個を販売するなどした。また、同牛内臓販売業者らは、21年11月から22年3月にかけて、知事から食肉販売業の許可を受けないで、食肉である牛の内臓を販売した。22年6月までに、5人を食品衛生法違反(病肉等の販売等の禁止、無許可営業)で検挙した(栃木)。

事例〔2〕

水産物等輸入販売会社元役員(55)らは、21年12月頃から22年5月頃にかけて、台湾産のうなぎかば焼きを「愛知県産蒲焼きうなぎ」等と印刷された段ボール箱に詰め、卸売業者に対し約1トンを販売した。22年12月までに、1法人、6人を不正競争防止法違反(誤認惹起行為)で検挙した(警視庁、大阪)。

偽装表示された段ボール箱

偽装表示された段ボール箱

(2)保健衛生事犯

警察では、承認を受けた医薬品と同一の有効成分を含有するような模造に係る医薬品や、「ガンに効く」などと薬効をうたい健康食品等を広告・販売するなどの薬事法違反、無資格でレーザー脱毛等の医療行為を行う医師法違反等の保健衛生事犯(注2)の取締りを行っている。

表1―7 保健衛生事犯の検挙状況の推移(平成18~22年)

注2:薬事関係事犯(薬事法違反、薬剤師法違反等)、医事関係事犯(医師法違反、歯科医師法違反等)及び公衆衛生関係事犯(食品衛生法違反、狂犬病予防法違反等)

(3)環境事犯

警察では、環境を破壊する犯罪のうち、広域にわたる産業廃棄物の不法投棄事犯等の悪質な事犯であって、組織的・計画的な事犯、暴力団が関与する事犯、行政指導を無視して行われる事犯を特に重点的に取り締まるとともに、関係機関に必要な情報を提供して、環境被害の拡大防止と早期の原状回復を促している。

また、国内に生息する野生鳥獣の違法捕獲等に係る事犯、希少野生動植物種の密輸入や国内での違法取引等に係る事犯等の取締りを行っている。

表1―8 廃棄物事犯の検挙状況の推移(平成18~22年)

(4)知的財産権侵害事犯

警察では、知的財産権を侵害する事犯において、知的財産権侵害品の大半が中国から密輸入されていることなどを踏まえ、中国の捜査機関との協力の場を設け情報交換を行うとともに、個々の事犯について捜査協力を行うなど、連携強化を図っている。また、不正商品対策協議会(注)における活動を始め、権利者等と連携した知的財産権の保護及び不正商品の排除に向けた広報啓発活動を推進している。

表1―9 知的財産権侵害事犯の検挙状況の推移(平成18~22年)

表1―10 押収した偽ブランド品のうち、仕出国・地域が判明したものの国別押収状況の推移(平成18~22年)

注:昭和61年、不正商品の排除及び知的財産権の保護を目的として、知的財産権侵害に悩む各種業界団体により設立された任意団体。警察庁等の関係機関と連携し、シンポジウムの主催や各種催物への参加を通じて、広報啓発活動、海外における不正商品販売の実態調査、海外の捜査機関や税関等に対する働き掛け等を行っている。

(5)諸法令違反

警察では、水産資源の違法採捕等に係る事犯、無線局の不法開設に係る事犯等の取締りを行っている。

表1―11 主な諸法令違反の検挙状況の推移(平成18~22年)


第1節 犯罪情勢とその対策

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