第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

7 悪質商法、ヤミ金融事犯等

(1)悪質商法

<1> 利殖勧誘(資産形成)事犯

平成22年中の利殖勧誘(資産形成)事犯(注1)の検挙状況は表1―3のとおりであり、国内外の事業への投資を装って金銭の出資を募る預り金事犯及び金融商品取引事犯の検挙が大半を占めた。その中でも、未公開株、ファンド等の取引に関連した事犯が目立っている。

表1―3 利殖勧誘(資産形成)事犯の検挙状況の推移(平成18~22年)

注1:出資法、金融商品取引法、無限連鎖講の防止に関する法律等の違反に係る事犯

事例〔1〕

無登録ファンド業者役員(55)らは、12年5月頃から21年11月頃にかけて、「当社が行う避妊具用自動販売機設置事業に1口当たり100万円を投資すれば、毎月1万円の配当を一生受け取ることができる」などと告げて、970人から約10億8,600万円をだまし取るなどした。22年5月までに、1法人、3人を金融商品取引法違反(無登録金融商品取引業)及び組織的犯罪処罰法違反(組織的な詐欺)で検挙した(岐阜)。

事例〔2〕

石油製品輸入販売等業者役員(64)らは、5年11月から20年10月にかけて、「当社の行う原油採掘及び石油取引事業に1口100万円投資すれば毎月80万円の配当がもらえる。その権利は、事業が継続する限り永久である。中途解約した場合でも、元本を全額返還する」などと告げて、約1,800人から約66億1,800万円をだまし取るなどした。22年4月、7人を詐欺罪及び出資法違反(預り金)で逮捕した(広島、熊本)。

<2> 特定商取引等事犯

22年中の特定商取引等事犯(注2)の検挙状況は表1―4のとおりであり、検挙事件数及び検挙人員が前年に比べ増加しており、高齢者を狙った、住宅リフォーム工事等を高額で行う点検商法や、顧客の家に上がり込み長時間居座るなどして高額な布団等を売り付ける押し付け商法の検挙が目立った。

表1―4 特定商取引等事犯の検挙状況の推移(平成18~22年)

広報啓発用リーフレット(企画・編集:(社)全国消費生活相談員協会)

広報啓発用リーフレット(企画・編集:(社)全国消費生活相談員協会)

注2:訪問販売等の特定商取引を規制する特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)違反及び特定商取引に関連する詐欺、恐喝等の刑法犯

事例〔3〕

住宅リフォーム業者役員(28)らは、20年5月から22年2月にかけて、家屋点検を装って高齢者宅を狙って訪問し、「大雨が来たら瓦が滑り落ちる。瓦の重みで屋根が潰れる。」などと告げ、屋根瓦修理名目で1,440人から、総額約7億6,000万円をだまし取るなどした。22年12月までに14人を特定商取引法違反(不実の告知)、組織的犯罪処罰法違反(組織的な詐欺)等で検挙した(大阪)。

コラム〔2〕 犯罪利用預金口座等の凍結のための金融機関への情報提供に関する関係省庁申合せ

高齢者を狙った悪質商法、生活の困窮につけ込むヤミ金融事犯等による被害は後を絶たず、国民の不安感が払拭されるまでには至っていない。

このような現状を踏まえ、22年6月、被害の拡大防止・回復支援対策に重点を置いた取組を政府一丸となって推進するため、消費生活侵害事犯対策ワーキングチーム(注1)において、犯罪利用預金口座等である疑いがある預金口座等を認知した場合には当該口座及びその不正利用に関する情報を金融機関に対して情報提供することを申し合せた。

注1:「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」中の「消費者の目線に立った生活経済事犯への対策の強化」に掲げられた施策を推進するため、平成20年12月、犯罪対策閣僚会議の下に設置された関係機関によって構成されるワーキングチーム

(2)ヤミ金融事犯

平成22年中のヤミ金融事犯(注2)の検挙状況は表1―5のとおりであり、このうち暴力団が関与する事件は約23.2%であった。

22年6月の貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律の完全施行により、ヤミ金融被害の拡大が懸念されたことから、各都道府県警察に設置しているヤミ金融事犯集中取締本部による継続した取締りのほか、口座凍結のための金融機関への情報提供、ヤミ金融に利用され凍結された口座の名義人情報の全国銀行協会及び株式会社ゆうちょ銀行への提供等の総合的な対策を行っている。

表1―5 ヤミ金融事犯の検挙状況の推移(平成18~22年)

広報啓発用リーフレット(企画・編集:(社)全国消費生活相談員協会)

広報啓発用リーフレット(企画・編集:(社)全国消費生活相談員協会)

注2:出資法違反(高金利)事件及び貸金業法違反事件並びに貸金業に関連した詐欺、恐喝、暴行等に係る事犯

事例

無登録貸金業者(31)らは、17年頃から22年5月頃にかけて、約2万人に対し、法定利息の約22倍から約800倍で金銭を貸し付け、約6億円の元利金を他人名義の口座に振込送金させて受領した。22年10月までに13人を出資法違反(超高金利)、貸金業法違反(無登録営業)等で検挙した。また、押収した現金や犯罪収益で購入した高級乗用車等について組織的犯罪処罰法に基づく起訴前の没収保全を行い、違法収益の剝奪を図った(山形)。

(3)その他の経済事犯

平成22年中の不動産取引をめぐる事犯の検挙事件数は20事件、検挙人員は27人で、検挙した事件の主な適用法令は、宅地建物取引業法、建設業法であった。


第1節 犯罪情勢とその対策

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