第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

2 街頭犯罪・侵入犯罪

(1)街頭犯罪・侵入犯罪の情勢

平成22年中の主な街頭犯罪の認知件数は72万9,407件、主な侵入犯罪の認知件数は16万259件と、それぞれ前年より7万1,785件(9.0%)、1万3,984件(8.0%)減少した。中でも、ひったくり、車上狙い及び自動販売機狙いの認知件数は、いずれも大幅に減少している。

しかし、罪種によっては増加に転じたものもあるなど、街頭犯罪・侵入犯罪を取り巻く情勢は決して予断を許さない状況にある。

図1―11 主な街頭犯罪の認知件数の推移(平成13~22年)

図1―12 主な侵入犯罪の認知件数の推移(平成13~22年)

(2)主な街頭犯罪の認知・検挙状況

<1> 路上強盗

路上強盗の認知件数は、平成8年以降増加を続け、15年には7年の4.8倍となったが、16年からは減少に転じ、22年中は1,221件と、前年より145件(10.6%)減少した。また、20年から増加に転じた検挙件数及び検挙人員も、22年中の検挙件数は501件、検挙人員は593人と、それぞれ前年より164件(24.7%)、293人(33.1%)減少した。検挙人員の45.5%は少年である。

図1―13 路上強盗の認知・検挙状況の推移(平成13~22年)

<2> ひったくり

ひったくりの認知件数は、3年から14年にかけて増加を続けていたが、15年から減少に転じ、22年中は1万4,559件で前年より4,477件(23.5%)減少した。22年中の検挙件数は6,323件、検挙人員は1,191人と、それぞれ前年より2,728件(30.1%)、247人(17.2%)減少した。検挙人員の47.7%は少年である。

図1―14 ひったくりの認知・検挙状況の推移(平成13~22年)

<3> 自動車盗

自動車盗の認知件数は、11年から13年にかけて急増した後、16年から減少に転じ、22年中は2万3,775件と、前年より2,040件(7.9%)減少した。22年中の検挙件数は8,433件、検挙人員は1,837人と、それぞれ前年より1,124件(11.8%)、208人(10.2%)減少した。

図1―15 自動車盗の認知・検挙状況の推移(平成13~22年)

(3)主な侵入犯罪の認知・検挙状況

<1> 侵入強盗

侵入強盗の認知件数は、平成10年から15年にかけて急増した後、16年から減少傾向にあり、22年中は1,680件と、前年より212件(11.2%)減少した。検挙件数及び検挙人員は、17年から減少傾向にあり、22年中は検挙件数1,094件、検挙人員957人と、それぞれ前年より126件(10.3%)、115人(10.7%)減少した。

このうち、住宅に侵入して行われた強盗の22年中の認知件数は359件と、前年より17件(4.5%)減少した。

図1―16 侵入強盗の認知・検挙状況の推移(平成13~22年)

<2> 侵入窃盗

侵入窃盗の認知件数は、10年から14年にかけて増加を続けていたが、15年から減少に転じ、22年中は13万6,552件と、前年より1万1,936件(8.0%)減少した。検挙件数及び検挙人員は、16年以降減少しており、22年中の検挙件数は7万307件、検挙人員は1万766人と、それぞれ前年より1万1,238件(13.8%)、86人(0.8%)減少した。

図1―17 侵入窃盗の認知・検挙状況の推移(平成13~22年)

(4)街頭犯罪・侵入犯罪抑止総合対策

刑法犯の認知件数は、平成8年以降急増したが、中でも街頭での強盗やひったくり、住宅等に侵入して行われる窃盗や強盗等の増加が顕著であった。こうした街頭犯罪・侵入犯罪は、平穏であるべき日常生活の場において行われるものであるため、その急増が国民に大きな不安を与えてきた。

このため、警察では、15年1月から、街頭犯罪・侵入犯罪抑止総合対策を推進しており、各都道府県警察において、地域の犯罪発生実態に応じ、重点を置くべき地域や犯罪類型を絞った計画を策定し、これに基づく総合対策を実施するとともに、その効果の検証を行っている。

<1> 犯罪情報分析の実施と活用

警察では、迅速・的確な捜査活動を行うとともに、効果的に犯罪の発生を抑止するため、都道府県警察が独自に構築した犯罪情報分析システムを活用するとともに、警察庁が構築した情報分析支援システム(1章2節2項(6)参照)との複合的な運用を図るなどして、犯罪発生実態を多角的に分析している。

分析結果については、街頭活動に活用しているほか、防犯情報としてウェブサイト等各種媒体を利用して地域住民に提供している。

防犯情報を提供するウェブサイト

防犯情報を提供するウェブサイト

<2> 街頭活動の強化

警察では、街頭犯罪・侵入犯罪の抑止対策を効果的に推進するため、犯罪の多発する地域や時間帯に重点を置くなど、犯罪発生実態に即した警戒活動・取締活動を推進している。

図1―18 街頭活動の強化

<3> 秩序違反行為の指導取締りの強化

警察では、街頭犯罪・侵入犯罪を含めた犯罪の発生を抑止する観点から、刃物や侵入器具の携帯、いわゆるピンクビラの貼り付けや街頭で公然と行われる客引き行為等の秩序違反行為について、事案の内容に応じた指導、警告及び検挙を行っている。特に、繁華街、歓楽街、駅、空港ターミナル等においては、警察官によるパトロール等を強化し、刃物や侵入器具の携帯の取締り等、街頭犯罪・侵入犯罪の抑止に資するための先制的な活動を強化している。

表1―2 秩序違反行為の検挙件数・検挙人員の推移(平成18~22年)

<4> 乗物盗対策

警察庁、財務省、経済産業省、国土交通省及び民間17団体から成る自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチームでは、「自動車盗難等防止行動計画」(14年1月策定、22年1月改定)に基づき、イモビライザ等を備えた盗難防止性能の高い自動車の普及、使用者に対する防犯指導及び広報啓発、盗難自動車の不正輸出防止対策等を推進している。さらに、オートバイ盗の防犯対策として、製造業者に車両の盗難の実態や手口に関する情報を提供し、メインスイッチ部(キー部分)の破壊防止装置やイモビライザ等の盗難防止装置を備えたオートバイの普及を促進している。

自動車盗難防止の広報ポスター

自動車盗難防止の広報ポスター

<5> ひったくり対策

ひったくり事件の多発を受け、警察では、その発生状況や手口を分析して、ひったくりの被害防止に効果のあるかばんの携行方法や通行方法等について指導啓発を行うほか、防犯協会等と協力して、自転車の前かごに取り付けるひったくり防止カバー等の普及を促進している。

<6> 侵入犯罪対策

侵入犯罪を抑止するため、15年9月に施行された特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律に基づき、正当な理由によらない特殊開錠用具等の所持等の取締りを強化している(表1―2参照)。また、警察庁、経済産業省、国土交通省及び建物部品関連の民間団体から成る「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」では、16年4月から、侵入までに5分以上の時間を要するなど一定の防犯性能があると評価した建物部品(CP 部品)を掲載した「防犯性能の高い建物部品目録」をウェブサイトで公表するなどして、CP 部品の普及に努めている。23年4月末現在で17種類3,162品目が目録に掲載されている。さらに、警察庁のウェブサイトに「住まいる防犯110番」(http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/index.html)を開設し、総合的な侵入犯罪対策の広報を推進している。

CP マーク

CP マーク

CP 部品だけが表示できる共通標章でCrime Prevention(防犯)の頭文字を図案化したもの

住まいる防犯110番

住まいる防犯110番

<7> 店舗対象の強盗対策

コンビニエンスストアや金融機関等を対象とした強盗事件の発生は依然高い水準にある。警察では、防犯体制、店舗等の構造、防犯設備等に関して基準を定め、各店舗・団体等に対し指導を行うとともに、警察官の巡回や機会を捉えた防犯訓練を実施している。

コンビニエンスストアにおける模擬強盗訓練

コンビニエンスストアにおける模擬強盗訓練


第1節 犯罪情勢とその対策

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