特集I:東日本大震災と警察活動

3 交通対策

(1)緊急交通路の確保

警察では、地震発生の翌日(平成23年3月12日)には、人命救助や緊急物資輸送に必要な車両等の通行を確保するため、災害対策基本法に基づき、東北自動車道、常磐自動車道、磐越自動車道の一部区間等を緊急交通路に指定した。

その一方で、同年3月16日から同月22日にかけて、高速道路の補修状況等に応じて、交通規制の実施区間を順次縮小し、残る規制区間においても大型車等を規制の対象から除外するなど、交通規制による市民生活への影響を最小限にとどめるよう努めた。その後、同月24日には、主要高速道路の交通規制を全面解除した。

図―6 緊急交通路の指定

東北自動車道矢板IC での流入規制

東北自動車道矢板IC での流入規制

常磐自動車道水戸IC~那珂IC 間での路面の陥没と波打ち

常磐自動車道水戸IC~那珂IC 間での路面の陥没と波打ち

(2)緊急通行車両確認標章の交付

緊急交通路の指定に伴い、警察では、通行に必要な緊急通行車両確認標章(注)の適切な交付を図った。指定当初は公的機関の災害応急対策、政府の緊急物資輸送への協力、食料、医薬品、燃料等の輸送を行う車両への交付を最優先としたが、道路の補修状況や被災地の状況を踏まえ、交付対象を柔軟に拡大した。また、手続きの簡素化による迅速な交付にも努め、特にタンクローリーに対しては、警察署に加えて、高速道路のインターチェンジでも交付を行った。

交通規制が全面解除された平成23年3月24日までに、合計16万3,208枚の標章を交付した。

交付対象の拡大等の経緯(概要)

注:災害対策基本法施行令第33条第2項に規定する標章

(3)自動車保管場所証明手続に関する対応

東日本大震災により自宅や自動車を失った被災者からの自動車保管場所証明申請について、申請書類を簡素化し、保管場所の現地調査を省略するなど、可能な限り簡便な手続で、速やかに自動車保管場所証明書を交付することとした。

(4)運転免許手続に関する対応

<1> 運転免許証の有効期間の延長等

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による災害が、特定非常災害(注1)として指定されたことに伴い、地震発生日以降に運転免許証の有効期間が満了する被災者については、有効期間を延長するなどの措置を講じた。

注1:特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項に規定される特定非常災害をいう。

<2> 運転免許証の再交付の推進

運転免許証が自動車等の運転の際に必要であること、身分証明書として有用であることに鑑み、業務の復旧に努めた結果、平成23年4月3日までには運転免許センター等が被災した全ての県において再交付業務を再開した。また、再交付申請の際に必要となる写真を警察で撮影するほか、住所地を離れて避難生活を送っている被災者に対しては、住民票の写し等に代えて避難施設の責任者等が作成する居住証明書による再交付申請を受け付けるなど、被災者の負担軽減に努めた。

事例

岩手県警察においては、被害の大きかった沿岸部の被災者の利便を図るため、23年3月28日から同年4月14日までの間、釜石警察署管内、宮古警察署管内及び大船渡警察署管内の小中学校等に再交付申請の臨時窓口を設置した。

臨時窓口の設置状況(釜石地区合同庁舎)

臨時窓口の設置状況(釜石地区合同庁舎)

(5)信号機の滅灯への対応

地震や津波によって、原子力発電所や火力発電所が大きな被害を受け、電力需要に対応した十分な電力供給を常時行うことが困難となったことから、東京電力株式会社の管内において、平成23年3月14日から計画停電が実施された。

計画停電の実施時には、多数の信号機が滅灯(注2)したため、警察では、信号機が滅灯した主要な交差点に警察官を配置して手信号等による交通整理を行った。特に、信号機の滅灯が約2万200か所に及んだ同年3月17日には、約3,100か所で約7,300人の警察官が交通整理に従事した。また、自動車等での外出の自粛、交差点での一時停止等の慎重な運転を広報するなどの措置を講じた。

信号機が滅灯した交差点における交通整理

信号機が滅灯した交差点における交通整理

注2:信号が表示されない状態をいう。


第2節 主な警察の活動

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