特集I:東日本大震災と警察活動

2 原子力災害への対応

(1)概要

平成23年3月11日及び12日、地震や津波により、東京電力株式会社の福島第一及び第二原子力発電所において、原子力災害対策特別措置法第15条第1項第2号の規定に該当する非常用炉心冷却装置注水不能等の事象が発生したことから、政府は、原子力緊急事態宣言を発した。

これに伴い、図―5のとおり、避難等の指示や警戒区域等の設定が発令され、警察では、検問のほか、これらの区域内における避難誘導、警戒・警ら活動、捜索活動等に当たった。

図―4 警戒区域等(平成23年6月20日現在)

図―5 避難指示等の推移(平成23年6月20日現在)

(2)避難誘導、避難困難者の搬送

警察では、避難指示等が発せられた直後から、福島第一及び第二原子力発電所周辺において、住民の避難誘導や交通整理を実施した。

また、福島第一原子力発電所から半径20キロメートル圏内に避難指示が発令された後には、放射線測定の専門部隊と連携し、住民の避難誘導を行うとともに、避難指示区域内の自力避難が困難な入院患者等を車両で区域外の避難所や病院へ搬送した。

避難指示区域内における活動

避難指示区域内における活動

コラム〔2〕 原子力発電所周辺における警察官の安全確保

福島第一原子力発電所周辺で各種活動に従事する警察官は、放射性粉じん用簡易防護衣、放射性粉じん用防護マスクを着装するとともに、個人被ばく線量計を携帯し、被ばく量を管理している。

また、警察の活動予定区域や進入経路においては、放射線量のモニタリングを事前に行い、安全の確保に努めている。

警察官の安全確保

コラム〔3〕 高圧放水車による放水

地震と津波の影響により、福島第一原子力発電所3号機の使用済み核燃料貯蔵プール内に保管された核燃料から、大量の放射性物質が大気中に漏れ出すおそれがあったことから、経済産業省は、警察にプールへの注水を要請した。これを受けて、警視庁の機動隊員等13人は、平成23年3月17日、高圧放水車により、プールに向けて約44トンの水を放射した。隊員らは、刻一刻と変化する放射線にさらされながら、元来の目的である暴動鎮圧とは別の用途で放水を行わなければならないという困難な状況の中、放水を成し遂げ、その後の自衛隊や東京消防庁等による放水活動の先駆けとなった。

高圧放水車及び放水に臨む警視庁機動隊員

高圧放水車及び放水に臨む警視庁機動隊員

(3)半径20キロメートル圏内における警戒・警ら活動、捜索活動等

警察では、福島第一原子力発電所の半径20キロメートル圏周辺の主要道路上で検問を行うとともに、半径10キロメートルから20キロメートルの圏内で警戒・警ら活動を実施した。

また、福島県警察と警視庁の特別派遣部隊は、平成23年4月7日から、福島第一原子力発電所の半径10キロメートルから20キロメートル圏内において合同捜索を、福島県警察は、同月14日から、半径10キロメートル圏内において捜索をそれぞれ実施し、6月20日現在で合計355体の遺体を収容した。特に半径10キロメートル圏内では、当初道路上のがれきの撤去が進んでおらず、手作業でがれきをかき分けて捜索を実施するなど過酷な環境の下での活動となった。その後、地元の民間事業者と連携して重機でがれきを撤去しながら捜索を実施した。

半径20キロメートル圏内における捜索(写真1)

半径20キロメートル圏内における捜索(写真1)

半径20キロメートル圏内における捜索(写真2)

半径20キロメートル圏内における捜索(写真2)

(4)警戒区域等設定に伴う活動

警戒区域や計画的避難区域が設定されて以降も、警察では引き続き検問や警戒・警ら活動、捜索活動等を行うとともに、警戒区域内への一時立入りに際して、住民を乗せたバスの先導等の支援活動を実施した。

6月2日からは、約300人体制の特別警備隊を編成し、計画的避難区域等の警戒・警ら活動を強化した。


第2節 主な警察の活動

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