第6章 公安委員会制度と警察活動の支え 

2 適正な警察活動と予算執行の確保

(1)適正な予算執行の確保
 最近、北海道警察、愛媛県警察等において、予算執行に関する不適正事案が相次いで判明した。
 警察では事案の解明を図るとともに、厳正な処分を行った。このような不適正事案の再発を防止し、国民の信頼を回復するため、警察では次のような取組みを進めている。

〔1〕 警察が行う監査の強化
 国家公安委員会が定める会計の監査に関する規則に基づき、警察庁長官、警視総監、道府県警察本部長及び方面本部長は、年度ごとに会計監査実施計画を作成するとともに、毎年度少なくとも1回、会計監査の実施状況を、警察庁長官は国家公安委員会に、警視総監及び道府県警察本部長は都道府県警察公安委員会に、方面本部長は方面公安委員会に、それぞれ報告している。
 平成17年度に警察庁が都道府県警察に対し実施した監査では、捜査費及び旅費の執行状況を重点的に監査することとし、その執行に直接携わった捜査員1,310人を含む3,749人に対して聞き取りを実施するなどした。
 その結果を踏まえて、18年4月には、
・ 捜査等に要した経費を私費負担していた捜査員に対し、捜査費を交付すること(長野)。
・ 捜査協力者に対する謝礼等について、県費を執行して支払うべきところ、国費を執行して支払っていたことから、国費を執行して支払った金額を返納すること(警視庁、山口)。
・ 物品の処分に関し、その手続に不備があったことから、適正な事務手続を徹底すること(群馬)。
・ 捜査に伴う捜査員の夜食代について、誤って釣銭額を支出額に含めて精算していたことから、当該釣銭額を返納すること(三重)。
・ 支給すべき旅費を支給していなかったことから、本来支給すべき額を追加支給すること(群馬、埼玉、神奈川、山梨、静岡)。
について、それぞれ改善を指示した。
 さらに、事務手続の遅れから、旅費の支払いに遅延が認められたものなど54件について、必要な改善措置を講ずるよう、関係都道府県警察を指導した。
 なお、18年度については、17年度の会計監査実施結果を踏まえ、監査対象部署の実態に応じて監査手法に一層の改善・工夫を加えながら、より適正な会計経理を推進するための会計監査を行うこととしている。

事例
 愛媛県警察では、17年2月、監査委員の監査において、13年度の捜査費の執行の一部に関して疑義があるとの指摘がなされたことから、18年2月までに、10年度から16年度にかけての捜査費の執行状況を調査した。その結果、捜査費の一部を執行する際、執行実態に反する虚偽の内容を記した文書を作成していたことなどが判明したことから、愛媛県警察の職員及び元職員は、同年3月までに、国に約280万円、愛媛県に約240万円を返納した。
 愛媛県警察は、これらの不適正事案を踏まえて、会計経理に関する指導体制を強化し、職員に予算執行の手続に関して正確な知識を修得させるとともに、監査の手法を工夫して実施することなどにより、再発防止を徹底することとした。

〔2〕 会計に関する職員教育の強化等
 職員に予算執行の手続に関する正確な知識を修得させるとともに、適正経理の重要性を再認識させるため、会計に関する教育を強化することとした。また、それに必要な捜査費等の経理に関する各種の解説資料を作成、配布した。
 また、都道府県の監査委員による監査の際に会計に関する文書を提示するに当たっては、特段の支障がない限り、すべての内容を提示することとし、捜査に支障があるため特に秘匿を要する場合は、対応策を個別に検討するなどして説明責任を十分に果たすこととした。

(2)監察
 警察における監察は、能率的な運営及び規律の保持のために行われるものである。国家公安委員会が定める監察に関する規則に基づき、警察庁長官、警視総監及び道府県警察本部長は、年度ごとに監察を実施するための計画を作成し、国家公安委員会又は都道府県公安委員会に報告するとともに、四半期ごとに少なくとも1回、監察の実施状況を国家公安委員会又は都道府県公安委員会に報告している。
 警察庁長官が作成した平成17年度監察実施計画では、全国統一の監察実施項目として、
 ・ 留置管理業務の適正な実施状況
 ・ 捜査活動における個人情報等の管理状況
 ・ 薬物・銃器事犯の捜査管理状況
 ・ 資質を重視した警察官採用の実施状況
 ・ 採用時教養の実施状況
を、管区警察局独自の監察実施項目として、
 ・ 証拠物件の保管管理状況
 ・ 地域警察における業務管理状況
等を定めた。
 また、都道府県警察でも、それぞれ独自の監察実施項目を定め、業務及び服務の両面において厳正な監察を行った。
 このほか、警察法の規定により、国家公安委員会は警察庁に対して、都道府県公安委員会は都道府県警察に対して、監察について必要があると認めるときは、具体的又は個別的な監察の指示をすることができることとされている。

(3)苦情の適正な処理
 警察は、国民からその活動について苦情が寄せられた場合には、これを適正に処理している。警察法には、苦情申出制度が設けられており、都道府県公安委員会は、都道府県警察の職員の職務執行について文書により苦情の申出があった場合には、都道府県警察に対し、調査や適切な措置を実施するよう指示し、都道府県警察はその結果を報告することとされている。
 また、申出が都道府県警察の事務の適正な遂行を妨げる目的で行われたと認められる場合や申出者の所在が不明であるなどの場合を除き、処理の結果を申出者に文書により通知しなければならないこととされている。
 なお、警察本部長や警察署長あてに申出があったものなど、都道府県警察の職員の職務執行についての苦情でこの制度によらない申出についても、これに準じた取扱いがなされている。

 2 適正な警察活動と予算執行の確保

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む